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宗教家が反対し、国民が支持するブッシュの戦争 [アメリカ]

以下は「神社新報」平成15年4月7日号からの転載です

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宗教情報
宗教家が反対し、
国民が支持するブッシュの戦争◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


▽教会よりメディアに従ふ米国人

「アメリカとアメリカを守るすべての兵士たちに神の御加護がありますやうに」──。

 ブッシュの対イラク戦争は、清教徒たちによって建国されたこの国に相応しく、宗教性を伴ふ開戦宣言で火蓋を切った。

 アメリカ国民の大半は大統領の決断を支持してゐる。

 ギャロップ社の世論調査によると、三月十七日(現地時間)のブッシュ大統領の最後通告直後、アメリカ国民の六六%が、フセイン大統領が二十四時間以内に国外退去しない場合の開戦を支持してゐたし、開戦後の二十一日段階では、六〇%が開戦を「強く支持」、一六%が「支持」した。国民の四人のうち三人までが対イラク攻撃に賛成したのに対して、「強く反対」「反対」はそれぞれ一五%、五%にとどまった。

▽75%が開戦支持

 アメリカ国民の高い支持は、大統領の演説から想像されるやうに、キリスト教会との深い関はりの結果なのかといへば、さうではない。逆にキリスト教会は早くから戦争反対を表明してきた。

 ローマ法王ヨハネ・パウロ二世は平和的解決が中断したことに「遺憾」の意を表明し、アメリカ・カトリック司教団は「戦争が避けられなかったのはきはめて残念」との声明文を発表した。

 9・11同時テロ後、歴代大統領が参列して追悼式がおこなはれたワシントン・ナショナル・カテドラルはイギリス国教会(聖公会)の大聖堂だが、アメリカ聖公会総裁のグリスウォルド主教は開戦の前日、「戦争と戦争の脅威とは、愛する者や親しき者たちすべての幸福を脅かす」との書簡を公にしてゐる。

 また、世界百二十カ国以上のプロテスタント教会で組織される世界キリスト教協議会は「戦争に勝利はない」と開戦後、声明してゐる。

 宗教指導者が軒並み反対するブッシュの戦争を、多くのアメリカ国民が支持するのは何故か。

 じつはアメリカ国民の多くは、今回の開戦に関して、宗教指導者たちの説教や声明にほとんど影響を受けてゐないといふことが、世論調査で明らかになってゐる。

 開戦の数日前に成人千三十二人を対象に実施されたPEWリサーチ・センターの調査によると、開戦支持か不支持かについて、「宗教的信念に最も影響を受けた」のはわづか一〇%。定期的に教会に通ってゐる信徒でさへ一七%にすぎない。代はって、国民の判断に大きな影響を与へてゐるのはメディアで、四一%にのぼる。

▽戦争是認が77%

 同性愛や中絶など倫理的問題の是非については宗教的信念を重視するアメリカ人が、イラク開戦に関しては異なる対応を見せる。回答者の一五%は、宗教指導者は戦争について「しゃべりすぎ」と考へてゐるほどだ。

 アメリカ国民は宗教的にではなくて、現実的、政治的に判断してゐるといふことだらうか。

 カトリックやプロテスタント主流派、黒人のプロテスタント教会ではたいてい戦争反対の説教を聞かされる。例外はプロテスタント福音派で、それかあらぬかブッシュ大統領は福音派の著名なテレビ伝道師ビリー・グラハムから再洗礼を受けてゐるのだが、イラク攻撃に対する支持は、福音派(白人)の信徒では七七%、カトリックとプロテスタント主流派がともに六二%、黒人プロテスタントが三六%、無宗教では四四%を占める。

「殺してはならない」「敵を愛せ」が聖書の教へだが、国民の七七%は、一般論として、戦争は倫理的に正しいと信じてゐる。

 他方、戦争に反対する国民の場合も、四二%が宗教指導者は「言葉が足りない」とみる。国家存亡の時にあって現実に命を捧げなければならない国民にとって、宗教指導者たちの説教が「浮世離れ」と感じられても不思議はないかもしれない。

 アメリカ国民にとっての戦争は、賛否の如何を問はず、宗教指導者とは別の次元で戦はれてゐる。
 
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