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韓国「戸主制」廃止へ──伝統か現実か、儒教社会の正念場 [韓国]

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話 題
韓国「戸主制」廃止へ
──伝統か現実か、儒教社会の正念場
(「神社新報」平成15年10月13日)
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 韓国国内の報道によれば、韓国政府は現在、「戸主制」の廃止を骨子とする民法の改正作業を進めてゐる。
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 韓国の戸主制は男性の戸主(家長)が家族を率ゐるといふ儒教に基づいた韓国伝統の男系家族制度。婚姻後、女性は男性の家に戸籍が移されるが姓は変はらない。子供は父親の姓を名乗る。男系の血統が重視され、戸主の継承は夫、息子、孫の順で、その後に未婚の娘、妻、母、嫁と続く。離婚した場合、たとひ父親が親権などを放棄したとしても、子供は父親の戸籍に残らなければならず、男女同権の立場などから批判を受けてきた。

 韓国政府が進める改正では、戸主といふ概念そのものがなくなる。離婚や再婚家庭の子供が家庭裁判所の決定により、実父の姓の代はりに養父または母親の姓を使へるやうになり、また夫婦の合意を前提に、子供が母親の姓を使へるやうにする法案も含まれてゐるといふ。民法から「戸主」といふ用語が消え、「親族」「世帯主」などに修正されることになる。


離婚・再婚が急増
して存続が困難に

 この背景には、核家族が社会全体の7割を超えるとともに、女性の社会進出が急速に進んでゐること、その一方、離婚率が急上昇し、25%を超えてしまったことが挙げられる。昨年1年間では「性格の不一致」などを理由に14万5300組が離婚し、過去最高を記録した。20年以上同居した末の「黄昏離婚」(熟年離婚)も激増してゐるといふ。

 半面、この10年で「初婚男性と再婚女性」「再婚男性と再婚女性」の婚姻が倍増してゐるが、現行制度では、再婚女性の連れ子は新しい父親の戸籍に入籍できず、再婚家庭の子供は兄弟同士で姓が異なるため、友人や隣人の目を気にせざるを得ないといふ苦痛を強ひられてゐるとされる。

 また、1人の女性が生涯に産む子供の数(合計特殊出生率)が2000年に1.47人にまで下がり、一人っ子が増えてゐる現実は男子が戸主を継承するといふ戸主制の存続を困難なものにしてゐるといふ。

 血統が重んじられる韓国儒教社会では、家系の正当性を証明する族譜(家系図)が誇りとされてきたが、族譜に女性の名前を載せることはなかった。名前を持たない女性もゐたほどだが、女性蔑視の風潮を改めて、この20年、「時代の流れ」から女性の名前を系図に掲載する傾向があるといふ。ごく最近では全州李氏の最大系派、孝寧大君派が伝統を重視する人たちと「婿の名前も載るのに」と改革を主張する人たちとの間で激論の末、女性の名前の掲載を決めてゐる。


九月の国会に上程
早ければ三年後に

 韓国KBS1やMBCなどの各テレビ局がこの夏、戸主制をテーマに、未婚の母の子供に対する養育権をめぐる実母と実父の家同士の葛藤を描いた連続ドラマを放映し、30%を超える高視聴率を得たことは、国民の関心の高さを窺はせる。

 8月下旬には法律家や婦人団体、市民団体などが参加する家族法改正特別委員会で法案が合意され、9月上旬に最終改正案が確定、通常国会に上程された。早ければ2006年には戸主制が廃止される見通しで、将来的には国民個人個人が個別に身分を登録する「個人別身分登録制」が導入されるとも伝へられる。

 しかし韓国は名にし負ふ儒教社会で、「儒林」と呼ばれる儒学者らの反撥は根強いといふ。男女平等を前提とする夫婦中心の家族制度への移行を目指す戸主制廃止は、ただでさへ深刻な家族の解体を加速させる危険性も指摘される。

 韓国問題に詳しい研究者は「韓国の民法はガチガチともいへる儒教原理に基づいてゐるので、現実社会と乖離してしまふのは仕方がない。いまでは韓国儒教社会そのものが崩壊の危機に瀕してゐる。かといって新たな精神的規範が見つかったわけでもない。戸主制廃止論議はそんな韓国社会の実情を象徴してゐる」と分析した上で、「日本にとって他山の石となるかもしれない」と指摘する。

 伝統か現実か、儒教社会の正念場ともいへる民法改正だが、「年内成立は微妙」ともいはれる。

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