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[書評]『日本帝国の申し子』カッター・J・エッカート著 日本による朝鮮統治の実像 [韓国]


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[書評]『日本帝国の申し子』カッター・J・エッカート著
日本による朝鮮統治の実像
(「神社新報」平成16年2月16日)
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話題の書である。大手インターネット書店には1月末の発売前から予約注文が殺到し、たちまち売り上げ上位にランク入りしたという。
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著者は米ハーバード大学教授で、朝鮮史研究の第一人者。韓国・朝鮮人でも、日本人でもない第三者の目で、戦前の日本による朝鮮統治の歴史を、「暗」ばかりではなく「明」の部分をも明らかにし、公正に評価している。

折しも大学入試センター試験問題をめぐって、日韓・日朝の近代史が国民的な関心事として大きく浮かび上がっているいま、歴史の実像を見極めたい多くの国民の強い要求にかなった出版となった。


▽産業発展に寄与した日本の統治

日本の朝鮮統治は、朝鮮の近代工業化にどのような影響を及ぼしたのか。そして「漢江の奇跡」といわれる戦後の朴正熙大統領時代の驚異的な経済発展にどのようにつながっているのか。

著者は朝鮮資本による最初の大規模企業である「京城紡績株式会社」の発展、そして経営者である高敞(全羅北道)の金一族の成功を、事実に即して丹念に追いつつ、顕彰している。

韓国の中学校用国定歴史教科書が「日帝は侵略戦争を遂行するために漢民族とその文化を抹殺しようとし……韓民族は日帝の植民地政策によって歴史的類例のない大きな犠牲を強要された」と記述するように、「従軍慰安婦」「強制連行」「創氏改名」「神社強制参拝」という事実関係さえあやふやな一方的宣伝文句で語られる「日帝」時代はいかにも重苦しい。

だが、本書は、そうした「抑圧と抵抗」を基軸とする偏った歴史理解を実証的に批判する。

何しろ当時の朝鮮民族企業の代表である京城紡績は、みずからの利害動機から積極的に朝鮮総督府幹部に接近し、支援を受け、ストライキが起これば総督府の権力に依存して解決を図っている。

著者は「この時期の工業化が今日の韓国経済の形成に果たした役割はきわめて重要である。善し悪しは別として、植民地支配が朝鮮の産業を発展させた『触媒』であり『揺り籠』であったことは間違いない」と断言する。

また、戦後の韓国資本主義が植民地時代に形成された重要な特徴を継承し発展したことを力説し、「歴史はやはり圧倒的勝利を収めた。過去は現在の中に能動的に作用して生きている」と結論づけている。


▽事実を明らかにする努力の不足

それにしても、原著がワシントン大学出版局から発刊されたのは1991(平成3)年である。日本語訳されるまで、なぜ十数年の年月を要しなければならなかったのか。

すでに翻訳のある韓国でも、部分的、不正確なもので、この本は「日本植民地支配の弁明」だとの誤解を生んだという。

歴史の事実を明らかにする研究者相互の努力が絶対的に不足している。教科書といい、入試といい、史実を客観的に追究するはずの研究者が、逆にいびつな観念的歴史理解の種をまき散らしているといえば、言い過ぎか。

欧米の研究者たちから高く評価され、「幻の名著」といわれる本書は明らかに、ステロタイプの日韓近現代史の書き換えを迫っている。日本人も韓国・朝鮮人も、歴史の真実の前にあって、いまほど謙虚さが求められている時代はないだろう。

〈2400円+税、草思社刊〉

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