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[話題]中学生にカトリックの知識を教えるイタリアの宗教教育 [教育]


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[話題]中学生にカトリックの知識を教えるイタリアの宗教教育
(「神社新報」平成17年10月10日)
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米・CNNなどの報道によると、イタリア北部の小都市ファノの公立校で、14年間、宗教の授業を担当していた女性教師が、カトリック教会から解雇されたことが話題になっている。

「自分が魅力的で、セクシーな格好をしていたため、解雇された」とは女性の言い分だが、教会側は「女性の離婚歴が、宗教教師として相応しくないため」と反論している。女性は5年前に離婚したが、離婚そのものを教義的に認めていない教会は、「離婚した教師が宗教を教えるべきではない」として解雇したと伝えられる。

両者の対立が今後、どう展開するかは不明だが、事件は日本と同様に第2次大戦の敗戦国で、「国家の世俗性」が憲法の基本原則のひとつと考えられているイタリアで、日本とは異なり、公立学校で宗教教育が行われている実態を浮かび上がらせた。

カトリックの総本山バチカンのお膝元で、6000万人の国民の97%がカトリック教徒、かつてはカトリックが国教と位置づけられていたイタリアの公教育で行われている宗教教育とはどのようなものなのか。


▽教会が教員を派遣

イタリアの宗教教育事情に詳しい、カトリックの聖ザベリオ会司祭アウディシオ・マリオ氏によると、イタリアでは、宗教心は人生にとって大切で、学校での宗教教育は当たり前だと考えられ、中学校のカリキュラムに公立・私立を問わず、週1回、1時間の「宗教の時間」が設けられている。

一年生は世界の宗教について、二年生はカトリック教会について、三年生は宗教道徳について学ぶ。ただ授業は布教が目的ではなく、あくまで一般的な宗教知識教育の範囲にとどまる。

国民の数パーセントとはいえ、プロテスタントやユダヤ教、イスラムの生徒もいるので、これらの生徒に対してはあらかじめ保護者の要望を受けて、カトリック以外の授業が用意される。10年前までは生徒全員を対象としてカトリックの授業が行われていたが、最近は他宗教への配慮がなされるようになったという。

宗教の時間を担当する教員は国が与える教員資格のほかに、カトリック教会の免許を必要とする。教員の人事はカトリック教会の教区が握っており、学校が所在する担当教区から派遣される。

今回の事件では、教員個人の宗教的資質が人事に影響することが明らかになった。


▽世俗国家を謳う憲法

第2次大戦で日本と同じ枢軸国だったイタリアは、敗戦後、国民投票で王政が廃止され、共和制が発足した。

1948年に施行されたイタリア共和国憲法は「自由主義とマルクス主義とカトリシズムとの不安定な混合」と評され、国家とカトリックとの関係について「その固有の秩序において独立であり、かつ最高である」(7条1項)と定め、同時に8条ではカトリック以外の宗派の信仰の自由が保障されている。

1984年にはローマ教皇との政教条約改正で、カトリックの国教化が否定された。1989年の憲法裁判所の判決では、「国家の世俗性という最高原理は憲法の定める国家形態の諸側面のひとつである」と表明している。

それでもイタリアの公教育機関では、宗教に関する知識教育が実施されている。

一方、日本国憲法は20条3項で「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と定め、教育基本法は9条1項では「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない」としながらも、2項では「国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない」と公教育での宗教教育禁止を定めている。

法制度上はイタリアで行われているような宗教知識教育や宗教情操教育までもが禁止されているわけではないと指摘されるが、実際の教育の現場では戦後一貫して、事実上、宗教教育全般が禁止された状況にある。


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