SSブログ

朝日新聞自身は『過去』を知ってますか [朝日新聞]

以下は旧「斎藤吉久のブログ」(2006年5月2日)からの転載です。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「朝日新聞自身は『過去』を知ってますか」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 東京裁判の開廷から、明日でちょうど60年だそうです。

 ところが、今朝の朝日新聞によると、驚いたことに、裁判の内容を「知らない」人が7割もいるようです。20代ではじつに9割にのぼるそうです。

 朝日の記事は、これらのアンケート調査の数字を「戦後、日本が国際社会に復帰するに当たった前提となった東京裁判の内容が、国民に継承されていないという事実」ととらえ、「60年を過ぎてなお戦争責任の空白が問われている現状を映し出しているともいえそうだ」と指摘しています。

 朝日新聞は、きょうの社説でも東京裁判を取り上げています。「あの裁判は、戦後の日本にとって、2つの意味で線を引く政治決着だった」と述べています。

「2つの意味」のうちの1つは国内的意味です。「平和条約で日本は東京裁判を受諾し、国際社会に復帰した。平和条約は締結国の対日賠償放棄をもうたい、両者のセットで日本は戦後処理を受け入れた」とあります。

 もう1つは、「国内的な意味」で、「A級戦犯に戦争責任を負わせることで、他の人を免責にした。その中には昭和天皇も含まれる」と述べています。

 東京裁判が不当だという立場をとったとしても、戦後処理をやり直すことはできないし、「日本の過去」が免責されるはずもないのであって、まずその「過去」と向き合うべきだ、と訴えています。

 論理としては理解できないこともないのですが、それなら「過去」とは何でしょうか。社説にある「日本の侵略戦争」「日本軍による虐殺」「関東軍の謀略」が向き合うべき「過去」なのでしょうか。

 昭和9年から18年末まで朝日新聞主筆として筆政を担当した緒方竹虎は戦後、戦犯に指定された1人でした。朝日新聞は連合国が追及した「過去」とけっして無関係ではありません。

 緒方は、昭和11年2月、2・26事件のあと、東京・大阪両本社の主筆を一本化し、全朝日の主筆となりました。戦後を見据え、「朝日新聞の看板を次代にまで通用させるため」に一切の「戦争責任」を独りでかぶろう、と覚悟したようです。

 戦時中、朝日新聞は、「戦争美術展覧会」「聖戦美術展」「大東亜戦争美術展」「陸軍美術展」など、国民の戦意を高揚させるイベントをいくつも手がけています(『朝日新聞社史』)。昭和14年1月には靖国神社を主な会場とする「戦車大展覧会」を主催し、戦車150台を連ねた「大行進」が東京市中をパレードしたこともあります。

 10年前の朝日新聞の連載「戦後50年 メディアの検証」は、言論統制下の新聞の実態をみずから検証し、新聞が統制の次代に迎合した姿を、「言論報道の自由は窒息状態に追い込まれた」「新聞は『政府・軍部の伝声管』となり、紙面を『戦意高揚』で塗り込めた」と描きました。
 
 画期的な連載でしたが、「自由」を奪われて、時代に「迎合」したのではなく、むしろ大新聞は積極的に「戦争の時代」を演出していったことが知られています。

 大新聞はジャーナリズムよりもビジネスを優先させたのではありませんか。緒方は「新聞社の収入が大きくなればなるほど資本主義の弱体を暴露する」と書いています。皮肉にも、情報統制が進むことで、新聞社の販売経費は節減され、発行部数は戦後の高度成長期を上回る勢いで拡大、倍増し、社の収入も増大したのです。『朝日新聞七十年小史』は「経理面の黄金時代」とまで表現しています。

 戦後、朝日新聞は社説に「みずから罪するの弁」などを載せ、「新聞の戦争責任」をみずから追及しましたが、その中身は具体性の乏しい観念的なものでした。重役が総退陣したものの、その実態は資本と経営の分離であり、敗戦を機会に新聞経営を近代化させたのです。しかも社主に退いたはずの元社長、会長は日本の独立回復と同時に取締役に復帰しました。

 このような朝日新聞の「歴史」を振り返るとき、「歴史を知らずして、過去は判断できない。まずは歴史と向き合うこと。東京裁判60年を機会に、あらためてその重要性を考えたい」というきょうの社説の言葉は、まさに「天に唾する」ことではないかと私は考えます。

「歴史」が知られず、継承もされていないのは、大新聞とて例外ではないのでしょう。まさか、東京裁判を受け入れることで、「新聞の戦争責任」を免責しようという深謀遠慮ではないでしょうけど……。

 ついでながら、朝日新聞のアンケート調査は靖国神社問題にも触れていますが、緒方竹虎は、靖国神社に国家が援助することは当然、と考えていたようです。

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。