『教科書のミス』に教師は気づかないのか [教科書問題]
以下は旧「斎藤吉久のブログ」(2006年5月12日)からの転載です。
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『教科書のミス』に教師は気づかないのか◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この春から中学校で使用されている9科目134種類の教科書のうち65種類に計208カ所の記述ミスがあることが文科省の調査で判明した、と伝えられています。

2冊に1冊、平均して1冊に1つはかならずミスがある、ということになります。単純な誤植ならまだしも、「xの欠落した方程式」や「誰でも知っていそうな都市の位置が間違っている地図」が検定済の教科書に載っているというのは笑えません。
今回の調査が行われるようになったのは、1月の大学センター試験が発端でした。センター試験は教科書の記述を元にしています。ところが肝心の高校の教科書に間違いがあり、教科書通りに解答すればセンター試験では不正解になる、という事態が発生し、文科省が緊急な点検を教科書会社に依頼していたのです。そしてミスが発見されたのです。
なぜ単純なミスが発生するのか。教科書会社は、最終チェックの期間が限られているために、万全な体制がとれない現実がある、と弁明に努めているようです。
文科省の検定はかなり細かいところまで指摘がされますから、どうして検定段階で単純なミスが判明しなかったのか、不思議ですが、もっと納得できないのは、学校の教師たちはこのようなミスに気づかないのだろうか、ということです。
というのも、2年前、ある大手出版社が発行するの英語教科書の記述が「誤解を招く」として「訂正」されたことがありました。
平成13年検定済で、使用中だったこの教科書には、「朝鮮は35年間、日本の植民地だった。日本政府は朝鮮人に日本語のみを使うように強制した。彼らにとって母語の使用をやめることはじつにつらいことだった」と書かれてありました。
しかし「朝鮮人に日本語のみを強制した」なんていう歴史の事実はありません。
常識的に考えて、あり得ないし、実際、日本統治時代の朝鮮では、総督府自身が漢字ハングル混じりの機関紙を終戦まで発行していました。ラジオの第2放送は朝鮮語が用いられていました。皇居遥拝をよびかける国民精神総動員朝鮮聯盟のポスターは日本語とハングルとで書かれていました。昭和17年当時、日本語を理解できる朝鮮人は2割程度だったというのですから当然でしょう。
それなら、なぜこの教科書は、「日本語のみ強制」などと記述したのでしょうか。
この教科書は意欲的な編集で知られ、「考えさせる教材」を目指していました。広島・長崎の原爆投下を取り上げ、キング牧師の公民権運動がテーマにされています。「朝鮮語」を取り上げた章では「母国語の大切さ」を教えたかったとも説明されています。
もっといえば、特定の歴史観を英語教育を利用して子供たちに教えようとする、政治的な意図も見え隠れしています。教師用のマニュアルには、「日本の植民地支配下、日本は朝鮮人に対して、徹底した同化政策を実施した。朝鮮人の尊厳を奪った」というような記述が見られます。
それはともかく、「考えさせる教育」という高邁な理想を実現するための前提が十分とはいえませんでした。この教科書の約30人の著作者に、朝鮮近代史の専門家は見当たりません。
結局、この教科書は2年前の暮れ、文科省の承認を得て、「朝鮮の児童生徒は学校で日本語を『国語』として学ばなければならなかった」と書き換えた「訂正テキスト」を配布し、その後、改訂された現在使用中の教科書には「朝鮮語」の話題は消えました。
「訂正」のきっかけは、「外部からの指摘」だといいます。この教科書は「昭和55年検定済」から「日本語強制政策」を取り上げていますから、恐ろしいことに、文部省は30年以上も検定段階で誤りを指摘できず、学校の教師も何の疑問も感じずにこの教科書を使ってきたことになります。
そして、同じ誤りを繰り返している、ということが今回の記述ミスで判明しました。「考えさせる」べきはけっして子供たちではありません。
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『教科書のミス』に教師は気づかないのか◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この春から中学校で使用されている9科目134種類の教科書のうち65種類に計208カ所の記述ミスがあることが文科省の調査で判明した、と伝えられています。

(文科省)
2冊に1冊、平均して1冊に1つはかならずミスがある、ということになります。単純な誤植ならまだしも、「xの欠落した方程式」や「誰でも知っていそうな都市の位置が間違っている地図」が検定済の教科書に載っているというのは笑えません。
今回の調査が行われるようになったのは、1月の大学センター試験が発端でした。センター試験は教科書の記述を元にしています。ところが肝心の高校の教科書に間違いがあり、教科書通りに解答すればセンター試験では不正解になる、という事態が発生し、文科省が緊急な点検を教科書会社に依頼していたのです。そしてミスが発見されたのです。
なぜ単純なミスが発生するのか。教科書会社は、最終チェックの期間が限られているために、万全な体制がとれない現実がある、と弁明に努めているようです。
文科省の検定はかなり細かいところまで指摘がされますから、どうして検定段階で単純なミスが判明しなかったのか、不思議ですが、もっと納得できないのは、学校の教師たちはこのようなミスに気づかないのだろうか、ということです。
というのも、2年前、ある大手出版社が発行するの英語教科書の記述が「誤解を招く」として「訂正」されたことがありました。
平成13年検定済で、使用中だったこの教科書には、「朝鮮は35年間、日本の植民地だった。日本政府は朝鮮人に日本語のみを使うように強制した。彼らにとって母語の使用をやめることはじつにつらいことだった」と書かれてありました。
しかし「朝鮮人に日本語のみを強制した」なんていう歴史の事実はありません。
常識的に考えて、あり得ないし、実際、日本統治時代の朝鮮では、総督府自身が漢字ハングル混じりの機関紙を終戦まで発行していました。ラジオの第2放送は朝鮮語が用いられていました。皇居遥拝をよびかける国民精神総動員朝鮮聯盟のポスターは日本語とハングルとで書かれていました。昭和17年当時、日本語を理解できる朝鮮人は2割程度だったというのですから当然でしょう。
それなら、なぜこの教科書は、「日本語のみ強制」などと記述したのでしょうか。
この教科書は意欲的な編集で知られ、「考えさせる教材」を目指していました。広島・長崎の原爆投下を取り上げ、キング牧師の公民権運動がテーマにされています。「朝鮮語」を取り上げた章では「母国語の大切さ」を教えたかったとも説明されています。
もっといえば、特定の歴史観を英語教育を利用して子供たちに教えようとする、政治的な意図も見え隠れしています。教師用のマニュアルには、「日本の植民地支配下、日本は朝鮮人に対して、徹底した同化政策を実施した。朝鮮人の尊厳を奪った」というような記述が見られます。
それはともかく、「考えさせる教育」という高邁な理想を実現するための前提が十分とはいえませんでした。この教科書の約30人の著作者に、朝鮮近代史の専門家は見当たりません。
結局、この教科書は2年前の暮れ、文科省の承認を得て、「朝鮮の児童生徒は学校で日本語を『国語』として学ばなければならなかった」と書き換えた「訂正テキスト」を配布し、その後、改訂された現在使用中の教科書には「朝鮮語」の話題は消えました。
「訂正」のきっかけは、「外部からの指摘」だといいます。この教科書は「昭和55年検定済」から「日本語強制政策」を取り上げていますから、恐ろしいことに、文部省は30年以上も検定段階で誤りを指摘できず、学校の教師も何の疑問も感じずにこの教科書を使ってきたことになります。
そして、同じ誤りを繰り返している、ということが今回の記述ミスで判明しました。「考えさせる」べきはけっして子供たちではありません。
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