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エジプト世論調査の読み方 [マスコミ報道]

以下は旧「斎藤吉久のブログ」(2006年11月4日)からの転載です

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エジプト世論調査の読み方
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 先日の日経新聞に興味深い記事が載っていました。

 エジプトの政府系調査機関のIDSCが「友好国」ランキングの世論調査を実施したところ、サウジアラビア、レバノンなどアラブ諸国が上位を占め、日本は15位で、中国の13位を下回った。一方、「敵対国」は、ムハンマドの風刺画問題が起きたデンマークがイスラエルに次いで2位となった、というのです。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20061102AT2M0102Z02112006.html

 もっと詳しい情報が知りたいと思って、あちこち探しました。

 イギリスのBBCニュースによると、エジプトの成人1000人を対象にした電話による世論調査であることが分かります。日経の記事と大筋は変わりませんが、「エジプトの敵」はイスラエル、デンマークのあと、イギリス、アメリカが続いています。日本や中国については言及されていません。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/6107160.stm

 オリジナルの調査結果を見つけました。
http://www.pollcenter.idsc.gov.eg/showingpolldetails.aspx?ws_poll_id=1022

 これによると、名前があがっているのはアラブ諸国を中心に34カ国。サウジアラビアが「きわめて友好的61%、友好的23%」とダントツの友好度を示し、そのほか、レバノン「きわめて友好的37%、友好的51%」、パレスチナ「きわめて友好的51%、友好的36%」、スーダン「きわめて友好的33%、友好的52%」、シリア「きわめて友好的42%、友好的42%」などと続いています。

 これらに対して、日本は「きわめて友好的14%、友好的58%、中くらい23%、敵対的1%、きわめて敵対的1%、何ともいえない3%」で、中国は「きわめて友好的18%、友好的55%、中くらい21%、敵対的1%、きわめて敵対的1%、何ともいえない4%」となっています。

 IDSCの分析には順位はついていませんが、日経の記事はおそらくこれらを単純に計算して順位を導きだし、「中国13位、日本15位」という好感度の優劣を引き出し、エジプト人は日本より中国に友好意識をいだいている、と結論づけたものと思われます。

 しかし統計学的に見て、1000人の世論調査から、日本と中国の好感度の差異を見出すことははたして可能なのかどうか、いわゆる有意差があるとみるべきなのか、疑問が残ります。差異がある、という見方には無理がありませんか。「首脳の訪問や投資・貿易拡大などで中国の存在感が増したためとみられる」という分析もどこまで妥当性があるのでしょう。

 一方、デンマークは、といえば、「きわめて親密1%、親密13%、中くらい18%、敵対的23%、きわめて敵対的38%、何ともいえない7%」で、イスラエルの「きわめて友好的0%、友好的2%、中くらい4%、敵対的11%、きわめて敵対的81%、何ともいえない2%」よりは好感度で勝るのは明らかであるにしても、イギリスの「きわめて友好的1%、友好的24%、中くらい23%、敵対的28%、きわめて敵対的18%、何ともいえない6%」やアメリカの「きわめて友好的2%、友好的24%、中くらい15%、敵対的21%、きわめて敵対的35%、何ともいえない3%」とそれほど差異が認められるとも思えません。

 全体的にみると、むしろ中東アラブ諸国に対しては好感度が高く、ユダヤ・キリスト教文化圏には低い。ただ欧米諸国のなかでも、フランスなどイスラム系移民が多い国に対しては高い好感度が示され、その一方で激しい文化衝突が生じている国に対しては敵対度が上がっている。東アジアの日本や中国には欧米諸国以上に友好的と考えられている、ぐらいに結論づけるのが穏当でしょう。

 日経の記事はエジプトの世論調査結果を記者の頭の中にある日中対比の構図によって恣意的に歪めている、と感じるのは筆者だけでしょうか。

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