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教育改革反対の論拠「上智大学生事件」の真相 [教育基本法改正]

以下は旧「斎藤吉久のブログ」(平成18年11月13日月曜日)からの転載です


 教育基本法改正が国会でいよいよ最後のヤマ場を迎えるのを前にして、先週8日、浄土真宗本願寺派(西本願寺)は見直し案を「拙速」とする「見解」を総長名で発表しました。

 仏教界では全日本仏教会が3年前、「宗教教育重視」を法律に盛り込むよう要請していますが、仏教界内部からは反発もあります。たとえば浄土真宗大谷派(東本願寺)は一昨年、改正反対の宗議会決議を行っています。

 大谷派の決議は、「断固反対」の根拠として、「アジア太平洋戦争」の参加への深い反省から現行憲法を獲得した、現行教育基本法は憲法の理想の具体化を図るため制定された、という歴史理解を示しています。

 本願寺派の「見解」にも「過去の一時期における不幸な歴史」という表現があり、歴史を踏まえたうえで、「慎重な審議」を要望していることが分かります。

 凡人は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ、という言葉があるように、歴史を学ぶことは重要ですが、学びには謙虚さと正確さが必要です。

 管見によれば、現行の教育基本法の制定は昭和22年3月です。GHQは占領目的に即した教育改革を断行していました。帝国議会では憲法改正が審議され、それと併行して構想されたのが教育基本法の制定でした。真宗大谷派の反対決議の論拠とされる歴史理解には疑念があります。

 キリスト教界は、カトリック、プロテスタントとも政府の改定案に強く反対しています。カトリック教会は、今年5月には正義と平和協議会(正平協)が、今月2日には司教協議会、社会司教委員会が、「反対」「懸念」をそれぞれ表明しています。

 正平協の「反対」文書は、「改定案」にある「伝統」の文言は思想・良心・信教の自由まで侵害される危険もある、と指摘し、その根拠として、戦前、神社参拝が強要された歴史をあげています。司教協議会の「懸念」は、昭和7年の上智大学生靖国神社参拝拒否事件を契機に国家による教育への不当介入があった、とし、歴史を論拠のひとつとしています。

 上智大学生事件は、カトリック教会の忌まわしい戦前の記憶であり、教会が、首相の靖国神社参拝、国旗・国歌法制定などに対する反対表明の根拠として、つねに例示されてきました。

 しかしこの事件が、信教の自由の侵害でも、国家による教育への不当介入でもないことは、当時の教会関係者が証言しています。

 事件の渦中にあった丹羽孝三幹事(学長補佐)は『上智大学創立六十周年──未来に向かって』(昭和48年、非売品)に、当時の回想を寄せ、事件がおよそ「迫害」などとはほど遠いものであったことを記録しています。軍部による政党打倒運動に事件が利用されたのが真相だというのです。

 正平協や司教協議会の歴史理解はこれとは真っ向から異なりますが、関係者の証言をくつがえすに足る確たる証拠がおありなのでしょうか。もしそうではないのなら、いやしくも真実に忠実であるべき宗教指導者が、都合のいい歴史解釈を振り回していることになりませんか。
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