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ハンセン病国家賠償請求訴訟の気がかり [ハンセン病]

以下は旧「斎藤吉久のブログ」(平成19年1月17日水曜日)からの転載です

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ハンセン病国家賠償請求訴訟の気がかり
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 ハンセン病に対する差別ほど気の重くなる話題はありません。けれども、歴史の事実を見極めようとすると、どうしても見過ごせないことがあります。

 北朝鮮系のメディアに、在日の元患者なのでしょうか、日本でなぜ「らい予防法」の廃止が遅れたのか、在日の発症率が高かったのはなぜか、そして日本のファシズムについて追及していくことをつよく表明している、という内容の記事が載っています。

 どうやら差別の不当を法廷で突きつける国家賠償請求訴訟が全国的な拡大を見せようとしているようです。

 元患者の人々はハンセン病と在日という二重の差別に苦しんできたといわれます。理不尽な差別は絶対にあってはならないことですが、日本の差別批判が日本の歴史批判を目的に行われるとなると、疑念を感じずにはいられません。そして、そのような政治批判は元患者を三重に苦しめる結果になるのではないかと恐れます。日本が朝鮮人患者に手厚く対応していたことを示す公的な資料があるからです。

 それは法務研修所がまとめた『在日朝鮮人処遇の推移と現状』(昭和30年)という報告書です。在日朝鮮人問題に関して政府関係資料をもとに多面的に考察した随一のもので、いゆわる朝鮮人の「強制連行」が事実からいかにかけ離れているかを浮き彫りにしていますが、同様に、朝鮮人患者への処遇についても追及されるべき事実は見当たらないことが分かります。

 報告書によれば、元来、患者の多い地域だったようです。昭和元年の患者数は5321名、13年は14000余名。在朝鮮朝鮮人の数は昭和5年が2000万人、17年が2500万人ですから、人口増加以上に患者数が増えています。

 5000人を収容する官立の小鹿島更生園(全羅南道)は充実した施設で、「金剛山、水豊ダムとともに世界一と称せられた」と報告書は書いています。

 けれども戦後になって、日本統治を離れたあと、韓国ではさらに患者が増え、24年には約45000人に推定されていました。韓国政府は療養園の増設など対策をとってはいるものの、国家予算が不十分でした。

 その結果、患者は施設の整った日本に流れました。30年当時、在日朝鮮人に占める療養所収容者の割合は0.11パーセントで、日本人患者の総人口に占める割合の0.011パーセントの十倍を示しました。それでも、韓国の総人口に対する推定患者数2.1パーセントよりははるかに少なかったのです。

 密入国してくる朝鮮人患者はあとを絶たず、しかも日本での潜伏生活は衛生上、劣悪で、その結果、幼児や家族への感染が起きたといわれます。

 一方で、GHQは戦後の朝鮮人引き揚げ時に、患者については引き揚げを禁止したのでした。また、収容されていた朝鮮人の児童については引取先がほとんどなく、当事者の悩みとされている、と報告書は書いています。

 この報告書を見るかぎり、不当な差別追及はまだしも、日本のファシズム批判がまったく当たらないどころか、むしろ日本が戦前も戦後も朝鮮人患者に対して手厚い対応をとってきたことが分かります。これでも日本は国家賠償を請求されなければならないのでしょうか。

 そもそも、なぜ患者の密入国があとを絶たなかったのか。

 韓国文化にくわしい友人は儒教文化の影響を指摘します。あらまほしき姿を正統とし、異端を極端に毛嫌いする思想が、差別を生んでいるというのです。患者の仕草をあざ笑う「病気踊り」は伝統芸能として継承されてさえいます。韓国ではいまなお患者は迫害されているといいます。

 これに対して日本では、病に苦しむ人々にもっとも深い仁慈を示してこられたのが皇室です。天平の時代、光明皇后が患者の患部から膿を親しく吸い取られた、という伝説さえ語りつがれてきました。

 貞明皇后が施設の収容者に慈しみを示されたことは記憶に新しいし、つい最近も、熊本でおきた患者に対するホテル宿泊拒否事件と相前後して、奄美の療養所を35年ぶりに再訪された両陛下は、園内の納骨堂に花を手向けたあと、患者の手を取り、「またお会いしましたね」「お元気ですか」とお声をかけられたのでした。

 差別は絶対にあってはなりません。しかし在日の患者の訴えが正当かどうかはまた別です。十分に歴史を検証しないまま、被差別を政治的な日本批判のいわば道具とすることは、みずからをさらに苦しめることになりませんか。

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