祝!! 日本記者クラブ賞受賞 [マスコミ報道]
以下は旧「斎藤吉久のブログ」(平成19年4月20日金曜日)からの転載です
知人の中国ウオッチャー・清水美和さん(東京新聞論説委員)が日本記者クラブ賞を受賞することが決まりました。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007041901000613.html
日本記者クラブ賞は、取材、報道、評論活動などを通じ、ジャーナリストとして顕著な業績をあげ、ジャーナリズムの信用と権威を高めた個人を顕彰するもの、とされ、1972年に創設された由緒ある賞です。
東京新聞の記事によると、
「経済成長の裏側で拡大する中国国内の問題点を取り上げ、格差問題や歴史認識などに関して、先見性のある論評、提言が評価された」
というのが受賞の理由のようです。
私がはじめて清水さんにお会いしたのは数年前、小泉首相の靖国神社参拝が中国からきびしく批判されていたときでした。なぜ中国が批判するのか、深い理由を知りたいと思って、片っ端から本を読みあさったのですが、私の疑問に答えてくれるものが見当たりません。やっと見つけたのが清水さんの書いたものでした(『中国はなぜ「反日」になったか』など)。

お会いして話をうかがい、目からウロコが落ちました。マスコミの一般報道では中国が国をあげて靖国神社、靖国参拝に反対しているかのような論調でしたが、逆に胡錦涛政権は歴史問題を後景化させようとしているというのですから。
たとえば、ロシアで実現した小泉・胡錦涛会談では、まったく異例なことに、胡錦涛は初対面の小泉首相にいきなり
「日本のSARS支援に感謝する」
と謝意を示し、さらに
「歴史を鑑とし、未来に目を向ける」
という江沢民以来の決まり文句に続いて、
「長期的視野に立ち、大局を踏まえる」
という「新八文字方針」を付け加え、小泉参拝に触れることもありませんでした。
「それまで首脳会談の主役であった歴史問題がその座を降りた瞬間」でした。
結局、何が起きていたのか。中国が「反日」をいいだしたのは、清水さんによると、90年代以降のことです。当時、順当に権力を掌握できなかった江沢民主席が「抗日戦争」の記憶を呼び覚ますことで支配の正統性を強調し、対外的に強硬姿勢を示すことによって権力を誇示した、というのが清水さんの分析でした。江沢民にとって「過去」は権力維持の道具だったのです。
しかし歴史問題を後景化させたはずの胡錦涛政権自身がやがて小泉参拝を批判しはじめます。中国の靖国問題は、小泉参拝の是非を論じているのではなく、胡錦涛ら対日重視派と江沢民ら強硬派との壮絶な権力闘争の道具にされていたのでした。つまり中国の内政問題です。中国の内情を直視せずに、首相の靖国参拝やA級戦犯合祀を論じることがいかに愚かしいことか、が分かります。
清水さんの手法は丹念に事実を追うというジャーナリストとしてきわめてオーソドックスなもので、今回の受賞はその地道な姿勢が評価されたのだと思います。受賞を心から喜びたいと思います。
知人の中国ウオッチャー・清水美和さん(東京新聞論説委員)が日本記者クラブ賞を受賞することが決まりました。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007041901000613.html
日本記者クラブ賞は、取材、報道、評論活動などを通じ、ジャーナリストとして顕著な業績をあげ、ジャーナリズムの信用と権威を高めた個人を顕彰するもの、とされ、1972年に創設された由緒ある賞です。
東京新聞の記事によると、
「経済成長の裏側で拡大する中国国内の問題点を取り上げ、格差問題や歴史認識などに関して、先見性のある論評、提言が評価された」
というのが受賞の理由のようです。
私がはじめて清水さんにお会いしたのは数年前、小泉首相の靖国神社参拝が中国からきびしく批判されていたときでした。なぜ中国が批判するのか、深い理由を知りたいと思って、片っ端から本を読みあさったのですが、私の疑問に答えてくれるものが見当たりません。やっと見つけたのが清水さんの書いたものでした(『中国はなぜ「反日」になったか』など)。

お会いして話をうかがい、目からウロコが落ちました。マスコミの一般報道では中国が国をあげて靖国神社、靖国参拝に反対しているかのような論調でしたが、逆に胡錦涛政権は歴史問題を後景化させようとしているというのですから。
たとえば、ロシアで実現した小泉・胡錦涛会談では、まったく異例なことに、胡錦涛は初対面の小泉首相にいきなり
「日本のSARS支援に感謝する」
と謝意を示し、さらに
「歴史を鑑とし、未来に目を向ける」
という江沢民以来の決まり文句に続いて、
「長期的視野に立ち、大局を踏まえる」
という「新八文字方針」を付け加え、小泉参拝に触れることもありませんでした。
「それまで首脳会談の主役であった歴史問題がその座を降りた瞬間」でした。
結局、何が起きていたのか。中国が「反日」をいいだしたのは、清水さんによると、90年代以降のことです。当時、順当に権力を掌握できなかった江沢民主席が「抗日戦争」の記憶を呼び覚ますことで支配の正統性を強調し、対外的に強硬姿勢を示すことによって権力を誇示した、というのが清水さんの分析でした。江沢民にとって「過去」は権力維持の道具だったのです。
しかし歴史問題を後景化させたはずの胡錦涛政権自身がやがて小泉参拝を批判しはじめます。中国の靖国問題は、小泉参拝の是非を論じているのではなく、胡錦涛ら対日重視派と江沢民ら強硬派との壮絶な権力闘争の道具にされていたのでした。つまり中国の内政問題です。中国の内情を直視せずに、首相の靖国参拝やA級戦犯合祀を論じることがいかに愚かしいことか、が分かります。
清水さんの手法は丹念に事実を追うというジャーナリストとしてきわめてオーソドックスなもので、今回の受賞はその地道な姿勢が評価されたのだと思います。受賞を心から喜びたいと思います。
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