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神への祈りを訴えるブッシュ大統領 [政教分離]

以下は旧「斎藤吉久のブログ」(平成19年4月21日土曜日)からの転載です

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神への祈りを訴えるブッシュ大統領
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 アメリカのバージニア州立バージニア工科大学で16日に発生した銃撃事件は全米に衝撃を与えています。教授・学生ら32人が死亡するという史上最悪の事件に、さぐさまブッシュ大統領は声明を発表し、下院議長は黙祷を呼びかけ、国中に半旗が翻りました。バージニア州のケイン知事は非常事態を宣言しました。

 悲惨な事件は銃社会の恐ろしさを見せつけただけでなく、一方で、同じく政教分離原則を憲法に掲げながらも、日本とは際立った違いのあるアメリカの政治と宗教の関係を浮かび上がらせています。

 事件翌日の17日に大学で行われた、一万人が参加する追悼集会で、ブッシュ大統領は犠牲者を悼むスピーチを読み上げ、

「力の源は信仰にある。一度も会ったことのない人が諸君のために、亡くなった友人のために祈っている。この祈りにこそ本当の力がある。神の導きのなかに安らぎがある」

 と訴えました。

 同じ日、ワシントンの地域教会協議会などが主催する、キリスト教徒ら800人が参列する追悼ミサで、李泰植・駐米韓国大使は、犠牲者を追悼し、悲しみを共有するための、在米韓国人による32日間のリレー断食を提案しました。

「事件を契機に韓国人社会が自省、懺悔し、アメリカ社会とふたたび融和する機会を作るべきである」

 という訴えを出席者たちは快く受け入れたと伝えられます。

 バージニア州のケイン知事は20日の金曜日を追悼の日とし、32人の犠牲者のために正午に黙祷を捧げることを呼びかけました。全米の教会が特別の礼拝を予定し、コネティカット州のレル知事(バージニア州生まれ)は犠牲者を偲んで、自由の鐘を32回、ならすことを決めました。金曜日を公式に追悼の日と定め、黙祷を呼びかけた州は、40近くにのぼりました。

 明日の日曜の夕刻には、「全国民のための教会」ワシントン・ナショナル・カテドラルで犠牲者に対する特別のミサが捧げられます。
http://www.cathedral.org/cathedral/worship/sunday.shtml#vatech

 日本の政教分離主義の本家本元で、厳格な政教分離政策が採用されていると一般には考えられているアメリカでは、明らかに政治と宗教との間に密接な関係があり、宗教的伝統が尊重されています。

 日本でもかつてはこのような公的慰霊が行われていました。関東大震災の翌年、東京府市および民間団体による震災記念事業では、震災発生時刻に神社や寺院、教会などが太鼓や鐘を、工場や船舶が汽笛を鳴らし、電車は停車、乗客は黙祷することが決められました。

 戦後も同様で、みずから被爆しながらも被災者の救護に当たった永井隆博士の公葬は昭和26年春、長崎市葬というかたちで浦上天主堂で行われ、当日は、教会やお寺の鐘のみならず、市内のサイレンや船の汽笛が鳴りひびき、市をあげて博士を見送ったのでした。

 日本国憲法が発布されて間もない、いまだ占領中に、このような公葬が行われていることは、立法者たちが想定する政教分離は絶対分離主義ではなく、アメリカ型の緩やかな分離主義であることの何よりの証明ですが、最近ではとみに、驚くべきことに宗教者までが、国家の無色中立性を要求しています。国立の追悼施設は無宗教でなければならない、というようにです。

 人間が宗教的、倫理的存在である限り、絶対分離などあり得ません。憲法を口実にした国家に対する非宗教性の要求は、じつは憲法とは別次元の理由に由来していると理解されます。

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