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撤去された信州大「構内神社」 ──反ヤスクニ運動の標的にされ [政教分離]


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撤去された信州大「構内神社」
──反ヤスクニ運動の標的にされ
(「国民新聞」平成19年5月25日号)
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 長野県松本市に信州大学の旭キャンパスがあります。テニアン島で玉砕した松本歩兵第五十連隊のかつての駐屯地で、歴史の面影をとどめる赤煉瓦兵舎は保存運動の対象にもなっています。けれども連隊の守り神とされた構内の稲荷神社は先月(平成十九年四月)、完全に撤去されました。反ヤスクニ運動の標的にされた結果です。

 この神社はもともと江戸時代に地主が創祀した屋敷神でしたが、敗戦で連隊が解散した翌年、跡地に松本医学専門学校(信州大医学部の前身)が移ってきたとき、占領軍の指示で構外に移転させられました。

 占領軍が被占領国の宗教に干渉することは国際法違反ですが、国家神道こそ「軍国主義・超国家主義」の源泉だと誤解する占領軍は神道の弱体化を図る神道指令を昭和二十年暮れに発し、神道への差別的圧迫を加え、駅の門松や注連縄をも撤去したのです。

 戦後の国家管理廃止で、多くの神社は国有境内地の無償譲与などを受けましたが、神職も氏子もいないこの神社はこの扱いにもれたのでしょう。やがて独立回復後の三十一年ごろ、大学側の依頼を受けて、医学部の出入り業者などで組織される任意団体の杏陰会によって旧地に復します。以後、五十年近く同会が例祭を催し、受験生には学問の神様として、患者には病気平癒の神として信仰を集めてきたといわれます。


▽ 東京高裁の違憲判断


 宗教的平安を破る騒動が降って湧いたのは四年前。近くに住む経済理論専攻の私大教授(当時)が「国立大学に神社があるのは政教分離違反。信教の自由を害された」などと主張し、国などに対して慰謝料の支払いと神社の移転を求める裁判を起こしたのでした。

 東京地裁は請求を棄却、東京高裁も平成十六年夏、「信教の自由が直ちに侵害されたとはいえない」と控訴を棄却しましたが、いわゆる傍論で「神社を存置させたままの国や大学の姿勢は憲法の精神に明らかに反する」と批判したため、マスコミは「憲法違反」と伝え、「実質勝訴」の私大教授は上告を取り下げます。傍論に法的拘束力はありませんが、大学は「司法の指摘を尊重すべきだ」と協議を始めたといわれます。

 秋になると教授は「神社に課税されていないのは違法」と国と県を訴え、昨年暮れには「市は課税を怠っている」と執拗に監査請求し、松本市は神社を準宗教法人に該当すると判断しました。今年になって神社の御霊代は杏陰会によって構外に遷され、三月には社殿が解体され、三百五十年の歴史を持つ五十坪の聖地は更地となりました。

 同様のことは北海道でも起きました。砂川市では住民が「市有地に神社があるのは違法」と市を訴え、札幌地裁は昨春、政教分離違反の判決を下しました。

 大学教授らは「国有地の神社が合憲なら、靖国神社の境内を国有化できる。国家神道の復活が避けられない」と訴えます。政教分離を大義名分に国家の宗教的無色中立性を主張する神社撤去の要求は反ヤスクニ運動の一環として各地に拡大しつつあります。


▽ 日本の宗教伝統の否定


 しかし人間が宗教的存在である限り、絶対的分離などあり得ません。占領軍の宗教政策に直接関わったウッダードは、ある論攷で、占領後期のGHQが神道指令の解釈変更を行い、神道の徹底排除から国家と宗教団体の分離に改めたことを明らかにしています。アメリカの世論は非宗教主義に終わる可能性のある絶対分離主義の政策を支持しないだろう。アメリカでは明らかに宗教と国家との間に密接な関係がある──とも述べています。

 緩やかな政教分離主義に政策を変更したからこそ、占領中の昭和二十四年、松平恒雄参議院議長の参議院葬は神式で行われ、二十六年の貞明皇后の御大葬はおおむね皇室の伝統に従って行われました。吉田首相の靖国参拝も行われました。

 他方で現在、東京都慰霊堂で都の外郭団体が主催する慰霊法要は完全な仏式ですし、岩手県奥州市にあるキリシタン領主・後藤寿庵の館跡(市有地)で地元教会が主催する大祈願祭はキリスト教式です。

 公有地に祠一つあってはならないという絶対的分離主義に立てば、これらは完全な違憲ですが、くだんの教授らが提訴したという話は聞きません。GHQの政策変更の歴史には目をつぶり、仏教やキリスト教の事例は等閑視され、GHQさえ捨て去った神道撲滅運動が展開されています。

 反ヤスクニ訴訟マニアの主張が大手を振るい、いびつな司法判断が続けば、全国の公有地から、古来、継承されてきた日本の精神的伝統が姿を消していくことになります。信教の自由をうたい上げる憲法を盾にして逆に民族の宗教伝統が否定され、護憲運動を装った民族の精神的解体が進められているといえます。


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