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またやってしまった共同通信 [靖国問題]

以下は旧「斎藤吉久のブログ」(平成19年8月10日金曜日)からの転載です

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またやってしまった共同通信
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 共同通信がどうやらまたやってしまったようです。きびしくいえば、靖国神社のいわゆる「A級戦犯」合祀に関するでっち上げスクープというべきものです。

 靖国神社の「A級戦犯」合祀に、昭和天皇は「懸念」を示されていた。その「具体的な理由」を、徳川義寛・元侍従長が陛下の作歌の相談役だった歌人に伝えていたことが判明した──。そのように伝える記事が新聞各紙にいっせいに掲載されたのは、先週末のことでした。

 昭和天皇が「A級戦犯」の合祀に「不快感」をもっていたというニュースは、これまでも富田朝彦・元宮内庁長官のメモなどを根拠に報道されてきました。「天皇の心」に基づいて、戦犯を合祀した靖国神社の立場を批判し、ひるがえって反ヤスクニ陣営を元気づける内容であるだけに、韓国の代表紙・朝鮮日報などはさっそく反応し、

「東京新聞が報じた」と伝えました。

 しかしほんとうの発信源は、昭和54年春に「A級戦犯合祀」を「スクープ」した共同通信社会部のようです。

「A級戦犯」14柱が靖国神社に合祀されたのは53年秋で、共同通信は翌春、これを「スクープ」しました。

『共同通信社50年史』は、4月17日、板垣正・日本遺族会事務局長と会い、話のなかで「A級戦犯」合祀の手応えを感じた三ヶ野編集委員が、翌日、藤田権宮司にずばり質問すると、意外にあっさりと前年の秋季例大祭を機に合祀していたことを明らかにした。翌日の加盟社の朝刊に「東条英機元首相らA級戦犯14人、靖国神社へ合祀」の記事が掲載された。長期にわたる取材が実を結んだ、と説明しています。

 共同通信は平成9年2月には、愛媛玉串料訴訟の最高裁判決の事前報道という前代未聞の「スクープ」を飛ばしました。記事は判事の合議内容にまで踏み込んでいたため、秘密漏洩疑惑にまで発展しました。

 配信はメインの記事のほかに、判例傾向をまとめたサイド記事、写真入りの原告の「喜びの声」、用語解説、政教関係裁判をまとめた表など、手厚いものでした。共同の原告・被告双方に対する取材は、締切時間ぎりぎりの前日の午後9時以降に行われたようです。記事が掲載された2月9日は日曜日で夕刊はなく、次の月曜日は新聞休刊日で朝刊はなし。配信後に大手全国紙が追いかけたとしても、掲載は早くて月曜日の夕刊になります。共同は「完全単独スクープ」を用意周到に狙ったのでしょう。

 これに対して、朝日新聞は途中から猛追したようですが、手厚い記事を書くには与えられた時間は短すぎました。結局、朝日はメインの記事のみで、原告の表情は載りませんでした。しかも都市部に配達される遅番には間に合いましたが、夕刊のない早版地帯では、2日遅れの11日の朝刊に掲載されるという「完敗」でした。しかし判決の事前報道が果たして「スクープ」の名に値するものなのかどうか。

 昨年6月には、今度は「A級戦犯分祀あり得ない 靖国神社回答」との記事を配信しました。靖国神社が「分祀」を「拒否」した。その「理由」として

「東京裁判に根強い異論が残っている」

 などと指摘し、

「A級戦犯を擁護する神社の歴史認識を示した」
「首相が参拝を続ける問題性を改めて浮き彫りにした」

 と解説し、神社を批判しました。

 共同通信の質問書に対して靖国神社が回答した文書に基づいて書かれた記事本文、回答要旨のほか、「戦争正当化と反撥、軍国主義支へた靖国」と題する靖国問題Q&Aなどの関連記事も配信されました。全体的に見て、「軍国主義」的な神社がかたくなに「分祀」を拒んでいるという印象を受けずにはいられませんが、逆に靖国神社あるいは神道に対する理解の不十分さをさらけ出すものでした。

 たとえば、そもそも「分祀」とは何か、を記事は理解していません。共同通信社会部は

「分祀とは合祀をやめる」

 ことと説明するのですが、いったん一座の神座に合祀された神霊を神ならぬ人間がどうやって具体的に「やめる」というのでしょうか。いはゆる「分祀」論者は「分祀」すれば神霊が取り除かれる簡単に信じていますが、そんなことは神道的に考えて、「あり得ない」ということが記者には理解されていないのでした。

 神道的な意味での「分祀」は本社の分霊を本社外で祀ることです。大きなロウソクから火を分けても元の火が残るやうに、「分祀」したからといって本社の神霊が消えてなくなりはしません。神霊には形も大きさもなく、だからこそ同じ祭神を祀る同じ社名の神社が全国に数多くあります。この伝統的神観に立って、靖国神社は

「分祀はあり得ない」

 と回答したのでした。

 共同通信は、日本国内のほとんどの地方紙や放送メディアに記事や写真を提供しており、記事は一般全国紙や外国メディアからも注目されました。「A級戦犯合祀」「首相靖国参拝」を強硬に批判する中国の国営通信・新華社は、共同通信の配信を受けて、

「靖国神社はA級戦犯の墓銘碑(memorial tablets)を一般戦没者から分離することを拒否した」

 と伝えました。しかし靖国神社に墓銘碑などはありません。「ない」墓銘碑をどうやって分離するというのでしょうか。

 ジャーナリズムの使命である真実を報道するどころか、誤解を振りまいています。作られたスクープの罪はまことに大きいといわねばなりません。

 今回の共同の記事は、

「天皇の懸念を徳川侍従長が歌人に伝えていたことが三日、分かった」

 と、いかにも新たな発見のような報道ぶりです。ところが、追跡取材したらしい朝日新聞の記事では、

「(歌人が)昨年末に出版した著書で明らかにしていた」

 と、趣が異なります。半年以上も前に出た本の内容が今ごろ「分かった」というのは、まったくもって不自然で、スクープとはいえません。

 問題の本は昭和天皇のお歌をくだんの歌人が解説した『昭和天皇御製 四季の歌』(同朋舎メディアプラン)です。共同通信の記者は「一般の目に触れるような本ではなく、最近になって内容が判明した」とスクープ性を強調しますが、版元によれば、大手の流通には乗らないものの、最初から市販された、といいます。ということは、内容的に新味のない情報がニュースに仕立て上げられたことになりますが、それは毎年恒例の「靖国の夏」だからなのか、とも疑われます。

 共同通信の前身は同盟通信です。5500人の人員を擁する当時、世界最大の国策通信社で、「大本営発表」は同盟を通じて新聞・ラジオに流されました。敗戦後、古野社長の英断で自発的に解散しましたが、その実態は共同通信、時事通信への分離・分割で、通信網も人員も温存されたのでした。

 前掲の『共同通信社50年史』は、「第四部 前史」で、同盟通信について32ページにわたって記述していますが、「戦争責任」についての記述はありません。「第一部 概観」に、役員が自発的に退陣したため、同盟の戦争責任を徹底的に反省し、総括留守機会を逸した、とたった数行、触れているだけです。これが靖国問題のスクープに熱心な共同通信の現実です。

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