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大陸棚自然延長論か日中中間線か [日中関係]

以下は旧「斎藤吉久のブログ」(平成19年9月17日月曜日)からの転載です

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大陸棚自然延長論か日中中間線か
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 共同通信によると、中国政府が近く発表する2007年版の外交青書で、東シナ海の権益が大陸棚全域に及ぶこと、つまり日本が主張している日中中間線を否定する立場に変わりがないことを強調する、と新華社が伝えているようです。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2007091502049080.html

 記事は、中国外交青書が、大陸棚は大陸国の陸地の自然な延長と考える大陸棚自然延長説の立場に立っていること、この自然延長説に従えば、中国の権益が沖縄トラフ(海溝)まで及ぶ、と伝えています。

 現代中国の軍事問題にくわしい杏林大学の平松茂雄教授に、このことに関連して数年前、お話をうかがったことがあります。

 平松教授によれば、中国が東シナ海に進出するようになったのは、国連海洋会議が始まった翌年、1974年といいます。西沙諸島を抑えたのが最初です。南沙諸島に軍事力を行使したのは88年です。

 東シナ海に進出するのは意外にも早く、海洋法会議の開催中に石油探査をしているそうです。80年代にボーリングが始まり、90年代には採掘が具体化します。最初に日中中間線近くの平湖石油ガス油田が開発され、98年には採掘施設が完成し、石油と天然ガスが上海に送られるようになります。

 問題は日中中間線に関する日中の隔たりです。

 中国側は日本とは異なり、そして今回の共同の記事が伝えているように、大陸棚自然延長説に立っています。中国大陸から伸びてくる大陸棚が東シナ海に続いているという考えですが、たいへん重要なことは、沖縄の南西諸島のすぐ西北に沖縄トラフがあって、大陸棚はそこで終わっていると主張していることです。

 国連の海洋法条約では、海岸から200カイリ(1カイリ=1852メートル)まで大陸棚の権利があり、大陸棚がさらに自然延長している場合は、350カイリまで権利を主張できることになっています。この条約に基づいて、南西諸島の西北にある沖縄トラフまで支配権が及んでいる、と中国は主張しているわけです。

 共同の記事が「沖縄トラフ」について、括弧して(海溝)と但し書きを加えているのはその意味で、この考えに従えば、日本の主張こそ国際法に反しているかのように聞こえます。

 これに対して、日本は、向かい合う2国間にある大陸棚あるいは経済水域で、両国間の距離が400カイリに満たない場合は真ん中で分けるという中間線の考えを採っています。やっかいなことに、この日本の主張も海洋法条約に基づいています。条約には2つの考えが併存しているのです。

 どちらも正しいというのでは問題は解決しません。日中どちらの主張が正しいと見るべきか、決め手になるのは「沖縄トラフ」です。

 中国は大陸棚が沖縄トラフという海溝まで続いていると考えていますが、日本は沖縄トラフは海溝ではなく、大陸棚は沖縄トラフから、さらに南西諸島を越えて、太平洋まで続いていると考えています。

 共同通信の記事は「沖縄トラフ(海溝)」と書き、いかにも中国の言い分が自明であるかのような表現ですが、平松教授は違います。

 平松教授から聞いたところでは、琉球大学の木村政昭教授(海洋地質学)によると、潜水調査の結果では、沖縄トラフは海溝ではなく、大きな水たまりだというのです。

 中国の大陸棚延長説が正しいのか、日本の中間線が正しいのか、机上で議論し、権益を主張し合うのは、じつに不毛です。平松教授がいうように、沖縄トラフが海溝なのか、水たまりなのか、ボーリング調査で科学的に解明することが不毛な政治的対立を避ける知恵となり得ます。

 しかし平松教授からその話を聞いて以後、具体的な日本政府の動きは聞きません。

 くわしくは平松教授の『中国の戦略的海洋進出』などをご覧ください。

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