保険料横領、後水尾天皇、濡れ衣。 [天皇・皇室]
以下は旧「斎藤吉久のブログ」（平成19年10月4日木曜日）からの転載です
〈〈 本日の気になるニュース 〉〉
１、「朝日新聞」10月４日、「鳥取県町村会、桝添厚労相らに抗議の決議文送る」
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200710030146.html
桝添厚労相は、年金保険料の横領問題に関連して、先月末、テレビ番組出演後、記者団に「市町村の窓口は信用ならない」と発言、反発した自治体の首長から抗議が相次いでいます。横領は明らかな犯罪ですが、「小人のざれ言につきあう暇はない」と抗議の声を切り捨てる厚労相の発言は火に油を注いでいます。
自治体からの抗議文には「職員の士気を損なう」という文言もあると伝えられます。まさか士気高揚のために横領を大目に見るよう要求しているのではないでしょうが、近代国家の要件である官僚制がうまく機能するにはどのような条件が必要なのか、を考える機会を与えてくれているようです。
畏敬する市村真一・京都大学名誉教授は、「君主制の擁護」と題する文章で、君主制のもつ６つの長所をあげ、「義務をよくわきまえた官僚と彼らによる能率のよい行政こそが、君主制の基盤である」「官僚と軍人にとっての心情倫理は、奉仕と忠誠であり、それが君主制の下で培われやすかったことは否定することができない」と書いています（『教育の正常化を願って』創文社）。
そこで思い出されるのは、もう何度も書いてきたことですが、戦前と戦後、昭和天皇に侍従として仕えた木下道雄が『新編宮中見聞録』で紹介している、次のような昭和天皇の逸話です。
昭和の初め、汚職事件の渦中にある高官の起訴について天皇の裁可を求める上奏書をもって内閣書記官が慌ただしく駆けつけてきました。一刻を争う上奏書でしたが、昭和天皇は司法大臣の起訴理由書を繰り返し御覧になるばかりで、なかなか裁可されませんでした。しばらくしてようやく天皇は裁可の印を捺されました。書類を受け取り、部屋を辞する木下に天皇は語られました。「私が悪いのだよ」
のちに天皇はよく晴れた夕暮れ、天を仰ぎつつ、木下にたずねられたといいます。「どうすれば政治家の堕落を防げるであろうか。結局、私の徳が足りないから、こんなことになるのだ」。昭和天皇は罪を犯した臣下を憎むのではなく、汚職がはびこる世の中を憂い、ご自身を責められたのでした。
昭和天皇の気高い精神は心を打ちますが、現代の官僚に「天皇の官僚」という意識を期待するのは困難です。そうした時代に、官僚の士気を高め、その能力を遺憾なく発揮させるにはどうすればいいのでしょうか。
２、「京都新聞」10月４日、「後水尾帝ゆかりの仏教美術を紹介。泉涌寺で企画展」
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007100400023&genre=J1&area=K1E
京都東山区にある泉涌寺(せんにゅうじ)は真言宗泉涌寺派の総本山で、歴代天皇の陵墓がある皇室の菩提寺です。
http://www.mitera.org/
今回の企画展のテーマとなっている後水尾天皇は、戦国乱世を経て、近世へと移り変わる大変革期、朝廷と徳川幕府が対決する時代に即位され、家康以下、徳川三代との激しいつばぜり合いを演じられました。
http://homepage.mac.com/saito_sy/tennou/H140311JSgomizunoo.html
昭和天皇に次ぐ長命の天皇でしたが、在位期間は昭和天皇とは対照的に20年もありません。幕府との確執の中で、にわかに落飾されましたが、敬神を大切にされ、後年、第４皇子の後光明天皇に宛てて書かれた手紙には、「敬神を第一に遊ばすこと、ゆめゆめ疎かにしてはならない」とあります。
３、「日刊スポーツ」９月６日、「痴漢で逮捕の男性を嫌疑不十分で不起訴」
http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20070906-252426.html
電車内で痴漢行為をしたとして現行犯逮捕される、というニュースは最近、珍しくなくなりましたが、今回は捕まってしまったのが友人で、これにはさすがに驚きました。
友人によると、多くの場合は、たとえ濡れ衣でも、あっさり「罪」を認め、罰金刑で解放されるのだそうですが、身に覚えのない友人は頑として否認し続け、結局、不起訴となり、釈放されたのでした。しかしこの間、十日あまり、身柄を勾留され、警察権力によって無体な扱いを受け、さらに実名で報道され、職を失い、家族もつらい思いを強いられたのでした。
事件の一部始終は本人のリポートをお読みください。
http://www.japancm.com/sekitei/note/2007/note36.html
以上、本日の気になるニュースでした。
〈〈 本日の気になるニュース 〉〉
１、「朝日新聞」10月４日、「鳥取県町村会、桝添厚労相らに抗議の決議文送る」
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200710030146.html
桝添厚労相は、年金保険料の横領問題に関連して、先月末、テレビ番組出演後、記者団に「市町村の窓口は信用ならない」と発言、反発した自治体の首長から抗議が相次いでいます。横領は明らかな犯罪ですが、「小人のざれ言につきあう暇はない」と抗議の声を切り捨てる厚労相の発言は火に油を注いでいます。
自治体からの抗議文には「職員の士気を損なう」という文言もあると伝えられます。まさか士気高揚のために横領を大目に見るよう要求しているのではないでしょうが、近代国家の要件である官僚制がうまく機能するにはどのような条件が必要なのか、を考える機会を与えてくれているようです。
畏敬する市村真一・京都大学名誉教授は、「君主制の擁護」と題する文章で、君主制のもつ６つの長所をあげ、「義務をよくわきまえた官僚と彼らによる能率のよい行政こそが、君主制の基盤である」「官僚と軍人にとっての心情倫理は、奉仕と忠誠であり、それが君主制の下で培われやすかったことは否定することができない」と書いています（『教育の正常化を願って』創文社）。
そこで思い出されるのは、もう何度も書いてきたことですが、戦前と戦後、昭和天皇に侍従として仕えた木下道雄が『新編宮中見聞録』で紹介している、次のような昭和天皇の逸話です。
昭和の初め、汚職事件の渦中にある高官の起訴について天皇の裁可を求める上奏書をもって内閣書記官が慌ただしく駆けつけてきました。一刻を争う上奏書でしたが、昭和天皇は司法大臣の起訴理由書を繰り返し御覧になるばかりで、なかなか裁可されませんでした。しばらくしてようやく天皇は裁可の印を捺されました。書類を受け取り、部屋を辞する木下に天皇は語られました。「私が悪いのだよ」
のちに天皇はよく晴れた夕暮れ、天を仰ぎつつ、木下にたずねられたといいます。「どうすれば政治家の堕落を防げるであろうか。結局、私の徳が足りないから、こんなことになるのだ」。昭和天皇は罪を犯した臣下を憎むのではなく、汚職がはびこる世の中を憂い、ご自身を責められたのでした。
昭和天皇の気高い精神は心を打ちますが、現代の官僚に「天皇の官僚」という意識を期待するのは困難です。そうした時代に、官僚の士気を高め、その能力を遺憾なく発揮させるにはどうすればいいのでしょうか。
２、「京都新聞」10月４日、「後水尾帝ゆかりの仏教美術を紹介。泉涌寺で企画展」
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007100400023&genre=J1&area=K1E
京都東山区にある泉涌寺(せんにゅうじ)は真言宗泉涌寺派の総本山で、歴代天皇の陵墓がある皇室の菩提寺です。
http://www.mitera.org/
今回の企画展のテーマとなっている後水尾天皇は、戦国乱世を経て、近世へと移り変わる大変革期、朝廷と徳川幕府が対決する時代に即位され、家康以下、徳川三代との激しいつばぜり合いを演じられました。
http://homepage.mac.com/saito_sy/tennou/H140311JSgomizunoo.html
昭和天皇に次ぐ長命の天皇でしたが、在位期間は昭和天皇とは対照的に20年もありません。幕府との確執の中で、にわかに落飾されましたが、敬神を大切にされ、後年、第４皇子の後光明天皇に宛てて書かれた手紙には、「敬神を第一に遊ばすこと、ゆめゆめ疎かにしてはならない」とあります。
３、「日刊スポーツ」９月６日、「痴漢で逮捕の男性を嫌疑不十分で不起訴」
http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20070906-252426.html
電車内で痴漢行為をしたとして現行犯逮捕される、というニュースは最近、珍しくなくなりましたが、今回は捕まってしまったのが友人で、これにはさすがに驚きました。
友人によると、多くの場合は、たとえ濡れ衣でも、あっさり「罪」を認め、罰金刑で解放されるのだそうですが、身に覚えのない友人は頑として否認し続け、結局、不起訴となり、釈放されたのでした。しかしこの間、十日あまり、身柄を勾留され、警察権力によって無体な扱いを受け、さらに実名で報道され、職を失い、家族もつらい思いを強いられたのでした。
事件の一部始終は本人のリポートをお読みください。
http://www.japancm.com/sekitei/note/2007/note36.html
以上、本日の気になるニュースでした。
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