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75年前、朝日新聞に載った上智大学の謹告 [天皇・皇室]

以下は旧「斎藤吉久のブログ」(平成19年10月21日日曜日)からの転載です


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第1回のテーマは「天皇陛下のお稲刈り」でした。
http://www.melma.com/backnumber_170937/



〈〈 「宗教学校にはあらず」。75年前の今日、朝日新聞に載った上智大学の「謹告」 〉〉


 75年前の今日、つまり昭和7年10月21日の「東京朝日新聞」朝刊の7面記事下広告に混じって、人目をひく上智大学の「謹告」が載っています。

「本大学は大学令により、国家に須要なる学術の蘊奥を考究する学府にして、宗教学校には御座なく、過般来、本大学に対し、新聞紙上において云々せられたる報道には幾多の事実に相反し候点これあり候。仍て本大学に対し、つねにご好意を辱うせる諸彦に右ご挨拶申し上げ候 敬白」

 上智大学といえば、いまはだれでもカトリックの大学だと考えていますが、なぜわざわざ「宗教学校ではない」と断る「謹告」をこの当時、新聞に載せなければならなかったのでしょうか。

 じつはこのとき上智大学は、のちに「上智大学生靖国神社参拝拒否事件」と呼ばれるようになる大騒動のさなかにありました。この年の春、軍事教練の配属将校が学生を靖国神社まで引率し、行軍したとき、カトリック信者の学生が参拝しなかったのに対して、将校が激怒し、陸軍と大学との対立に発展したといわれます。

 渦中の人である丹羽孝三幹事(学長補佐)の回想によれば、丹羽氏と小磯陸相(本当は陸軍次官?)の会談で一時は収まったかに見えましたが、10月になって事件はぶり返します。

 10月1日、報知新聞が「靖国神社礼拝を学生が拒否」と題する記事を載せたのをはじめ、新聞が大々的に取り上げ、キリスト教そのものが国体と相容れない邪教であるというような攻撃が浴びせられたというのです(上智大学60年誌)。

 戦前の日本といえば、「国家神道」「神権天皇制」の時代だったという主張がありますが、どうもそうではないようで、日本政府は世界の大勢にならって「国家は宗教に干渉せず」を基本姿勢とし、今日以上に厳格な分離政策を布き、公立学校などでは宗教教育と宗教儀式が禁じられていました。

 そのため昭和3年に専門学校令に基づく「大学」から、全国に十数校しかなかった大学令による「大学」に昇格した上智大学は、カトリックのイエズス会による設立・運営とはいえ、宗教教育は行われず、学内には祭壇さえなかったのでした。全学生300人のうち、カトリック信者は35人と伝えられています(上智大学史資料集)。

 誤報・虚報による社会的指弾を浴びていた上智大学が10月21日に「謹告」を朝日新聞に載せ、「宗教学校にあらず」と表明したのはその意味でした。今日、教会指導者がこの上智大学生事件を「カトリック学校」に対する「宗教弾圧」であり、「国家による宗教統制」であるかのようにとらえ、批判しているのは間違いということになります。

 先述した丹羽幹事などは、事件は「軍部の政党打倒運動に利用されたのであって、大学はいい迷惑であった」とふり返っているほどです。弾圧どころか、文部省は良き理解者で、また、信者でもある麹町警察署長は不穏な情報があれば、知らせてくれ、護衛までつけてくれた、軍部内にも同情者が現れ、部外秘情報を流してくれた、そして最後は、宮様師団長の鶴のひとことで事件は解決した、というのです。

 上智大学生事件についてはこちらをどうぞ。
http://homepage.mac.com/saito_sy/yasukuni/H1905SRarchbishop.html


〈〈 本日の気になるニュース 〉〉


1、「クリスチャン・トゥデイ」10月19日、「中国、08年北京五輪で礼拝など宗教儀式の容認を約束」
http://www.christiantoday.co.jp/international-news-1206.html

 ロイターの引用です。党大会で国家宗教事務局の局長が語ったというのです。

 オリジナルの記事はこちらです。
http://www.reuters.com/article/lifestyleMolt/idUSPEK35045820071017

 実際はどうなるのでしょうか。


2、「朝日新聞」10月20日、「赤福会長、会頭職退任へ。伊勢商工会議所が方針」
http://www.asahi.com/national/update/1020/NGY200710200003.html

 赤福騒動の影響が2013年に控えた伊勢神宮の遷宮にも少なからぬ影響を及ぼし始めました。記事は赤福が建設したという内宮前の「おかげ横丁」にも言及していますが、各方面への影響はどうしても避けられないのでしょう。


3、「西日本新聞」10月19日、「沖縄戦集団自決。教科書『軍強制』求める決議採択。九州地方知事会」
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/politics/20071019/20071019_002.shtml

 知りたいと思っていた知事会議の決議の全文が、山口県のホームページに報道資料として載っています。
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/press/200710/008331.html

「文部科学省は、平成20年度から使用される高等学校教科用図書の検定結果を公表したが、沖縄戦における『集団自決』の記述について、『沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である』との検定意見を付し、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正した。
 このため、沖縄県では、県議会をはじめ、県内全市町村議会において、今回の検定意見の撤回と同記述の回復を求める意見書が相次いで議決され、沖縄県、県議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議会議長会の代表が関係機関に要請を行った。
 また、去る9月29日には、沖縄県内の各界、各層を網羅した超党派による「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が開催され、11万人余の県民が結集し、文部科学省に検定意見撤回を求める決議が県民の総意として採択されたところである。
 去る大戦で史上まれにみる激烈な地上戦を体験し、一般県民を含む多くの尊い生命を失い、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた沖縄県民の心情を重く受け止め、国におかれては、沖縄県の教科書検定意見に関する要望に対して真摯に対応されることを九州地方知事会として強く要望する」

 というのがその内容ですが、検定意見に納得できないとする根拠に客観性が欠けています。人間の情は重要ですが、史実を情によって左右すべきなのかどうか、県民の代表である知事に理解できないはずはないでしょう。

 そのうえ信憑性が疑われている「11万人余の県民が結集」とする数字を持ち出したことは、決議それ自体の公平性を疑わせています。

 そのことは、この決議を「『軍強制』求める」と報道した西日本新聞にも当てはまります。


 以上、本日の気になるニュースでした。

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