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斎庭の稲穂の神勅──建国記念の日を前に考える [天皇・皇室]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンからの転載です


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斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」vol.17
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第17回「斎庭の稲穂の神勅──建国記念の日を前に考える」


▼稲作発祥の地は山ばかり
H090708高千穂二上山.jpg
 2月11日は建国記念の日です。戦前は紀元節で、初代神武天皇の即位にちなむ祝日でした。『日本書紀』では即位日は1月1日とありますが、明治6年に太陽暦に換算して定められたようです。即位は橿原宮で行われたのですが、天皇の伝説が伝わるもうひとつの聖地は南九州です。

 『古事記』には、皇室の祖神・天照大神と高木神(たかぎのかみ)の命令で、大神の孫・邇邇藝命(ににぎのみこと)が「筑紫(つくし)の日向(ひむか)の高千穂の久士布流多気(くしふるたけ)」に天降られた、と書いてあります。神話によれば、高千穂は天孫降臨の聖地であり、皇祖発祥の皇室ゆかりの土地とされます。そして稲作発祥の地とされています。

 高千穂には宮崎県北部・高千穂町と鹿児島県霧島市の二説がありますが、10年前に訪ねたのは高千穂町で、ちょうど梅雨どきでした。行ってみて驚きました。山ばかりだったからです。米作りがここで始まった、とはとても想像できません。

 翌朝、高千穂神社の後藤俊彦宮司に案内されて、国見ヶ丘に登りました。邇邇藝命の曾孫が初代神武天皇で、その孫の健磐龍命(たけいわたつのみこと)がここから四方を望んだ、と伝えられます。しかし山肌を刻む棚田は見えますが、広い水田はどこにも見当たりません。


▼最初の稲作は水田耕作ではなかった?

 『日本書紀』は、天孫降臨に際して、「わが高天原(たかまがはら)にある斎庭(ゆにわ)の穂をわが子に与えなさい」と命じられた、と書いています。

 天神が子や孫を地上の統治者として山上に天降らせる、という天降(あも)り神話は朝鮮半島から内陸アジアにかけて広く分布するといわれます。なかでも朝鮮の檀君神話は有名で、日本の神話とよく似ていますが、日本以外の神話では母神が授けるのは麦であって、稲ではありません。民族の祖神が稲をたずさえて山上に天降られるという神話が伝えられるのは日本だけのようです。それにしてもなぜ山ばかりなのでしょうか。

 高千穂神社の境内には行乞(ぎょうこつ)の俳人といわれる種田山頭火の句碑があります。「分け入っても分け入っても青い山」。国見ヶ丘から眺める風景はまさにその通りです。

 古代の高千穂は日向(いまの宮崎県。古くは南九州全域)、豊後(大分県)、阿蘇(熊本)にまたがる広大な丘陵地帯一帯を指したともいいます。それなら、山間地で日本の稲作が誕生したというのはどういうことなのでしょう。日本で最初に確認された弥生時代の稲作遺跡、静岡・登呂遺跡のような平地の水田耕作を考えていると疑いばかりが頭をもたげてきます。


▼佐藤洋一郎教授の「南北二元説」

 そこで思い出されるのは総合地球環境学研究所(京都)の佐藤洋一郎教授(植物遺伝学)が提唱している「日本稲の南北二元説」です。日本の稲には遺伝学的に二系統があるといいます。ひとつは東南アジアの島々から伝わってきた陸稲的な熱帯ジャポニカで、そのあと、もう一つの中国・揚子江流域を起源とする水稲的な温帯ジャポニカが伝来した、と佐藤教授は説明しています。

 面白いことに、両系統の稲は本来は晩生で、秋冷の早い東北地方などでは稔りません。ところが、両者が交雑すると不思議にも早生が発生します。佐藤さんは、二つの稲が自然交雑して早生が発生し、稲作は北部日本に瞬く間に北上することができた、と推理します。そして、この交雑は西南暖地、つまり九州でおこったというのです。

 もしや記紀神話は、日本稲が九州で自然交雑によって誕生したこと、最初の稲作が畑作的であったことを伝えているのかも知れません。

 後藤宮司夫妻の運転で熊本の阿蘇山にまで足を伸ばした帰り、秀麗な二上山(ふたかみやま)が雨雲の切れ目にようやく姿を現しました。「日向国風土記」逸文に天孫・邇邇藝命が天降られたと書いてある高千穂の「上の峯」です。


 参考文献=『古事記』(『古事記・祝詞』日本古典文学大系1、岩波書店、1958年)、「風土記逸文」(『風土記』日本古典文学大系2、岩波書店、1958年)、『日本書紀』(『日本書紀・上』日本古典文学大系67、岩波書店、1967年)、佐藤洋一郎『稲のきた道』(裳華房、1992年)など


((((((((読者の声)))))))))))

◇横須賀のNK様から

 「誤解だらけの天皇・皇室」vol.15を拝見して、改めて歌会始の素晴らしさに気づきました。

 最近は殺伐とした生活を送っているせいか、久しく忘れていた初釜のことも思い出しました。

 昔、茶道(裏千家)を少しだけ習ったことがありますが、初釜には歌会始の御題にちなんだお茶碗が使われ、高級なものから私たちが手に入れられるような
リーズナブルなものまであり、毎年一つずつお茶碗が増えていきました。

 歌は詠めなくてもお茶をいただく時に歌会始の新年の優雅さを感じることができました。本当に日本に生まれてこその有難さだと思います。


(((((((( 「天皇・皇室の一週間」 )))))))))))

1月31日(木曜日)

□高円宮妃久子さまが洋らん展にお出ましになりました(MNS産経ニュース)。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/080131/imp0801310002000-n1.htm

1月26日(土曜日)

□皇太子同妃両殿下が長野市で開かれた冬季国体の開会式に臨まれ、お言葉を述べられました(時事ドットコム)。
http://www.jiji.com/jc/c?g=spo_30&k=2008012600168

 お言葉は宮内庁のホームページに掲載されています。
http://www.kunaicho.go.jp/koutaishi/okotobah20-01.html#63kokutai

1月20日(日曜日)

□秋篠宮殿下は妃殿下を伴われて、ジャカルタで開かれた日本インドネシア友好年記念式典に出席され、お言葉を述べられました(中日新聞)。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008012001000328.html

1月19日(土曜日)

□秋篠宮・同妃両殿下はインドネシアのカリバタ英雄墓地を訪問され、記念碑に献花・黙祷されました(読売新聞)。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080119ic07.htm
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