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官僚たちにとっての「望ましい」皇位継承──皇室典範有識者会議報告書を読み直す その2 [皇位継承]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2009年3月31日)からの転載です


 拙著『天皇の祈りはなぜ簡略化されたか』を、名の知られた一般紙や雑誌、長い歴史を持つ宗教専門紙、さらには神社の社報まで、いろんなメディアが取り上げてくださっています。

 先週は老舗の歴史雑誌として知らない人のいない『歴史読本』5月号(新人物往来社。24日発売)が、読書欄の「歴史図書さんぽ」のトップで、簡にして要を得た紹介をしてくださいました。
http://www.jinbutsu.co.jp/

 じつにありがたいことです。同誌最新号は「日本の名城」の特集です。税込1,090円。できましたら、どうぞお買い求めください。


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 官僚たちにとっての「望ましい」皇位継承
 ──皇室典範有識者会議報告書を読み直す その2
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▽1 祭祀軽視の背景に何があるのか
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 さて、当メルマガは前号から皇室典範有識者会議の報告書(平成17年11月)を読み直す作業を始めました。

 前回は春季皇霊祭・神殿祭に皇太子殿下の拝礼・御代拝がなかったことを取り上げました。トルコからのご帰国を1日早めればいいものを、そのような日程を側近らが組まなかったのは、「神事を先にし、他事を後にす」という歴代天皇が祭祀を重んじてこられた歴史と伝統が理解できないのではなく、いわば確信犯なのだということを指摘しました。

 この宮内官僚たちの祭祀軽視の背後に何があるのか、を例の皇室典範有識者会議報告書を題材にして、しばらく考えてみようと思います。

 すでにご承知だと思いますが、報告書について簡単に説明すると、皇太子殿下の次の世代の皇位継承資格者がおられないという皇統に関する危機感を背景にして、小泉純一郎内閣総理大臣の諮問機関として「皇室典範に関する有識者会議」が設置されたのは平成16年末のことでした。
 会議では「男系男子」に限られてきたこれまでの皇位継承の制度を改め、女性天皇の即位のみならず、女系による皇位継承に道を開くことが検討され、翌17年11月、「皇位継承資格を女子や女系の皇族に拡大することが必要である」(「結び」)とする報告書がまとめられたのでした。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousitu/index.html


▽2 不正確な会議発足の経緯説明

 報告書はA4サイズで84枚。このうち、会議の発足、審議の経緯を説明する「はじめに」、会議の問題関心を示した「問題の所在」、3つのポイントを示した「基本的な視点」、4つの側面から方向性を模索した「安定的で望ましい皇位継承のための方策」、女性天皇、女系継承容認の結論を示した「結び」までが20ページで、残り60ページあまりの大半が「参考資料」、さらに会議の趣旨や構成メンバーなどに関する「皇室典範に関する有識者会議について」と続いています。

 まず「はじめに」を読んでみます。

 なぜ会議が発足したのか、報告書は「内閣総理大臣から、将来にわたり皇位継承を安定的に維持するための皇位継承制度とこれに関連する制度のあり方について検討を行うよう要請を受け、本年(平成17年)1月以来、17回の会合を開くとともに、随時、非公式会合を行い、議論を重ねた」と経緯を説明しています。

 しかしこれは不正確です。小泉総理の「要請」以前から官僚たちが非公式に検討を進めてきたことが明らかになっているからです。したがって総理の「要請」は、官僚のお膳立ての上に乗っているに過ぎないことになります。


▽3 先行する官僚たちの非公式検討

 たとえば、「産経新聞」平成18年2月17日付の1面トップに「女性・女系天皇、『容認』2年前に方針、政府極秘文書で判明」という特ダネ記事が載りました。内閣官房と内閣法制局、宮内庁などで構成する政府の非公式会議が平成16年5月に女性・女系天皇容認を打ち出していたことが、同紙が入手した極秘文書で明らかになった、というのです。

 阿比留記者の解説記事に示されているように、じつのところ官僚たちは、橋本内閣時代の平成8年に、鎌倉節長官のもとで、基礎資料の作成を開始していたのでした。

 産経新聞が入手した極秘資料には皇室典範改正に向けた手順が示されています。第1段階は政府部内関係者による非公式検討の着手と16年3月末までのとりまとめ、第2段階は有識者会議の立ち上げと正式検討の開始、さらに中間報告書のとりまとめ、公表、そしてさらに成案とりまとめに向けた検討──と続いています。

 阿比留記者は、有識者会議発足後の推移が極秘文書の手順と符合していると指摘しています。

 つまり、有識者会議の報告書が「はじめに」で説明しているように、総理の要請を受けて有識者会議の検討が始まったのではなく、先行する官僚たちの非公式検討を追認するのが会議の役目であり、内容を踏襲するのが報告書だったのでした。


▽4 皇族の意見を求めない官僚たち

 むろん官僚たちの問題意識や論理が妥当なものならば、目くじらを立てるべきものとは限りません。逆に、問題意識の高さ、見識を賞賛すべきかもしれません。

 けれども、そうではないところに問題の核心があります。

 産経の記事が明らかにしているところによると、官僚たちによる非公式検討が始まった当時、首相の地位にあった橋本龍太郎元首相は、同紙のインタビューに答え、橋本首相が皇族の意見を聴くように求めたのに対して、官僚たちが拒否したのでした。

 つまり官僚たちは、天皇・皇族にとっての皇位継承とは別の次元で、官僚たちにとっての「安定的で望ましい皇位継承」を追求したのです。その結果が女帝・女系継承容認だったのだと私は考えます。

 ならば、官僚たちにとって「望ましい」とはどういうことなのか、次回、さらに掘り下げます。


▽5 気がかりな皇后陛下のお怪我

 最後にちょっと気になるのが皇后陛下のお怪我です。6週間も前のお怪我が今ごろになって明るみに出ました。そして、お楽しみにされていたであろう陛下とご一緒の御料牧場でのご静養もできなくなりました。
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/kohyo-h210324.html

 思い出されるのは、昭和52年夏の香淳皇后のお怪我です。側近たちの健康管理の甘さもさることながら、拙著に書きましたように、その6年後、側近たちによる祭祀簡略化が表沙汰になったとき、入江侍従長は、香淳皇后が那須でご静養中に骨折されたことを盛んに持ち出し、祭祀の正常化阻止に躍起になったといわれます。

「昭和の先例」を盾に、祭祀の形骸化を進めているのがいまの側近たちですが、皇后陛下が1日も早く、健康を回復されることとともに、この一件がさらなる祭祀軽視・破壊の根拠とされないことを願わずにはいられません。

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