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このままでは天皇が天皇でなくなる [天皇・皇室]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2009年5月19日)からの転載です


 いま発売中の「文藝春秋」6月号に拙著『天皇の祈りはなぜ簡略化されたか』が取り上げられています。
http://www.bunshun.co.jp/mag/bungeishunju/

 今上陛下と同じ昭和8年生まれの5人の識者による「両陛下と歩んだ我らの50年」という企画で、外交評論家の田久保忠衛先生は拙著に言及しつつ、祭祀の簡素化に関する危惧の念を示されています。

「由々しいことだ」という先生の指摘は私の思いと共通します。


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 このままでは天皇が天皇でなくなる
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▽1 減っていない陛下のご負担
koukyo01.gif
 さて、先週は、陛下の御不例をきっかけに始まった宮内庁のご負担軽減策が、実際には実現されていないということについて、お話ししました。宮内庁が発表している「ご日程」の件数を数え上げてみると、明らかに総数では増えています。

 宮内庁の分類に従って、(1)「宮中でのご公務など」、(2)「行幸啓など」、(3)「国際親善」について、ここ3年間の3月期の件数を比較してみても、ほとんど変化は見られません。

 前号では一部、数値に不正確なところがありましたので、もう一度、表を掲げます。

                19年  20年  21年
(1)宮中でのご公務など
ご執務             9    10   12
新年祝賀・一般参賀       0    0    0
天皇誕生日参賀         0    0    0
首相などの親任式        0    0    0
大臣など認証官の任命式     2    0    2
大綬賞などの勲章親授式     0    0    0
新任外国大使の信任状捧呈式   2    3    3
海外賓客のご会見・ご引見    9    7    5
功労者など拝謁・お茶・ご会釈  15   26   25
海外賓客・要人との午餐・晩餐  4    2    1
春秋2回の園遊会        0    0    0
宮中祭祀            2    4    1
その他             4    1    3

(2)行幸啓など
行幸啓など           2    3    2

(3)国際親善
国賓のご接遇          7    0    0
公賓のご接遇          0    1    0
公式実務訪問客のご接遇     0    2    0
信任状捧呈式          2    3    3
ご会見・ご引見         9    7    5
ご親書・ご親電         0    0    0
在日外交団の接遇        1    1    3
赴任・帰朝大使の拝謁      1    0    2
外国ご訪問           0    0    0


▽2 「縮減」されていない「拝謁」

 思い出していただきたいのは1月29日に発表された宮内庁の「今後の御公務及び宮中祭祀の進め方について」の方針です。そこには、(1)拝謁などは回数、日程を縮減する、(2)外国賓客の御引見などはしかるべき調整を図る、(3)国内行幸啓は御臨席のみとする、(4)宮中祭祀の新嘗祭は夕の儀のみ親祭に、旬祭の親拝は年2回に削減する──とありました。
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/koho/kohyo/gokomu-h21-0129.html

 しかし実際はどうなのでしょうか?

 海外の賓客とのご会見などは減っているようです。もしかすると、他国の政府の遠慮があるのかもしれませんが、その代わりというべきなのか、在日外交団の接遇は増えています。

 他に比べて件数が多く、しかも年々、増えているのは、宮内庁が「縮減」の方針を打ち出したはずの「拝謁」などです。

 中身を詳しく見てみることにしましょう。

 宮内庁によれば、「拝謁」というのは天皇皇后両陛下にお会いすることで、社会福祉・医療・教育・文化・学術・産業など各分野で功績があった人が主たる対象となります。

「お茶・昼餐会」は文化勲章受章者・文化功労者・日本学士院賞受賞者・日本芸術院賞受賞者、駐日の外交団、赴任・帰朝大使夫妻など内外の要人をお招きになって催され、そのほか、内閣総理大臣や国務大臣が天皇陛下に所管事項などをご説明する「内奏」、専門事項などを両陛下にご説明する「ご進講」、皇居内の清掃奉仕のため全国各地から集まる人々とお会いになる「ご会釈」があります。

 これが増えているようです。


▽3 天皇を私物化する官僚たち

 内奏やご進講はやむを得ないとして、とくに赴任・帰朝大使をはじめとする官僚たちの拝謁が大して意味もなく増えているように私には見えます。

 平成19年3月は、赴任大使の拝謁は15日にニュージーランド兼サモア、ホンジュラス、チュニジア、イラク、エクアドル赴任大使の拝謁だけで、ほかに官僚の拝謁は以下の6件ありました。

!)3月1日 法務大臣及び財団法人矯正協会会長表彰の法務省矯正職員代表
!)3月8日 警察大学校警部任用科第18期学生
!)3月12日 警察庁長官表彰の全国優秀警察職員
!)3月16日 人事異動者
!)同日 人事異動者
!)3月26日 人事異動者

 20年は人事異動者や法務省の表彰矯正職員代表など官僚の拝謁が11件に増えました。

 そして、縮減の方針が出された今年は、といえば、新旧最高裁長官夫妻とのご夕餐、帰朝・赴任大使の拝謁・お茶のほかに、表彰を受けた警察・法務省・厚労省の官僚たちや人事異動者の拝謁が昨年ほどではないにしても、9件を数え、「縮減」にはほど遠いのが実態です。

 ご負担を軽減するというのが宮内庁の大方針だとすれば、官僚たちの無駄とも思える拝謁をこそ真っ先に控えるべきでしょう。なぜ身近なところから改善することをしないのでしょうか。天皇を私物化しているようにさえ見えます。


▽4 お飾りの「象徴」に成り下がる

 名ばかりのご負担軽減の一方で、文字通り削減されているのが、すでにご承知の通り、歴代天皇がもっとも重要視してきた宮中祭祀です。

 過去5年間の1~4月期の祭祀の件数を表にまとめると以下のようになります。

   17年  18年  19年  20年  21年
1月  6    4    7    6    2
2月  3    3    4    3    2
3月  2    3    2    4    1
4月  5    4    2    3    3
小計 16   14   15   16    8

 1~4月までの小計を比較すれば一目瞭然。祭祀は半減しています。

 4月の会見で陛下は憲法に規定されている「象徴」の意味について言及されましたが、その意味は長い歴史に培われてきた「国民統合の象徴」という意味のはずで、その地位は国と民のためにひたすら祈る祭祀王の本質に由来しているのだと思います。
http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/kaiken/kaiken-h21-gokekkon50.html

 ところが宮内庁は、ご即位20年、ご結婚50年というこのうえないお祝いの年に、陛下のご負担軽減と称して、もっぱら祭祀の空洞化に血道を上げています。それは天皇を祭祀王の地位から引きずり下ろすことに他ならず、天皇が天皇でなくなる、つまり、単なるお飾りの「象徴」天皇に成り下がるということでしょう。

 それは日本の文明を破壊する一種の革命工作であり、宮内官僚たちは取り返しのつかない愚行を働いているようにしか、私には見えません。

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