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3 イスラム移民に揺れるフランス共和制 [政教分離問題]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2009年6月30日)からの転載です


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 3 イスラム移民に揺れるフランス共和制
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 AFPによると、フランスのサルコジ大統領は22日、上下両院合同会議で演説し、イスラム教徒の女性が着るブルカが「抑圧のしるしであり、フランス共和国の領土では歓迎されない」と述べました。
http://www.afpbb.com/article/politics/2613980/4285229

 ルイ・ナポレオン以来、じつに161年ぶりとなる大統領の議会演説の内容に、当然、イスラム教徒は反発していますが、大統領に同調する議員らは公の場でのブルカ着用規制に関する検討委員会の設置を決め、実態調査も始まるようです。


▽アメリカの政教分離との違い

 AFPの記事が興味深いのは、アメリカのオバマ大統領と比較していることです。

 半月前に渡仏し、サルコジ大統領と会談したオバマ大統領は、「西洋諸国はイスラム教徒が適当と考える宗教的行為を妨げないようにすることが重要だ」と語り、イスラム女性のヒジャブ(スカーフ)着用の権利を支持しました。しかし、サルコジ大統領は「公務員は宗教の如何にかかわらず、宗教的なものは身につけてはならない」と反論したといいます。

 記事は、二人の違いが政治家の個性の問題として描かれているようにも見えますが、むしろ国家と宗教に関する国是の違いに基づいているのだと私は思います。

 王権を実力で打倒し、カトリックを国教の座から引きずり下ろしたのがフランス大革命であり、以来、フランスは「自由・平等・博愛」を国是とする世俗国家を築いてきたのでした。

 公共の場からすべての宗教を排除し、私的空間では信仰の自由を保障するのがフランス流の政教分離です。このため19世紀後半には公立学校での宗教教育は禁止され、教室からキリスト像が撤去され、聖職者は教壇から追われました。20世紀になると、公認宗教に対して公金を支出してきた制度が廃止され、国家の宗教的中立性が徹底されます。

 一方、清教徒たちによって建国されたという神話をもつアメリカは、国家と宗教ではなく、国家と教会を分離するゆるやかな政教分離主義を国是とし、大統領の葬儀も新大統領の就任式も「全国民のための教会」と呼ばれる大聖堂で行われています。

 しばしば厳格な政教分離主義の源流のように説明されるアメリカですが、実態は異なります。


▽500万人にふくれ上がったイスラム教徒

 フランス共和制に転機をもたらしたのがイスラム教移民の急増です。

 移民を徹底的に同化し、国民として受け入れてきたフランスですが、人口6400万人のうち、イスラム教徒は500万人にふくれ上がっています。否応なしにイスラム文化が流入し、千人以上を収容する巨大モスクがあちこちに林立しています。「カトリックの長女」と呼ばれたフランスは、モザイク国家に変わったのです。

 しかしフランス共和制はフランス一元主義、世俗主義を、イスラム系移民にも強制します。5年前には、公立学校でのヒジャブ着用が禁じられました。

 移民の子であるサルコジ大統領が移民問題の難しさを知らないはずはありません。数年前、内相時代に、政教分離法を見直し、モスク建設に国の支援を可能にする提言を行ったのはサルコジ自身です。

 しかし今後、ブルカやヒジャブの規制はどこまで広がっていくのか。公立学校や役所など以外、もっと広く「公の場」で規制するとなれば、「公」と「私」、「聖」と「俗」を厳格に区別し、私的空間の信教の自由を保障してきたフランス共和制の理念を元首みずから破ることになりはしないか。革命で押し倒された十字架の代わりに掲げられた三色旗が引き下ろされることがあるのかどうか、が注目されます。

 以上、斎藤吉久メールマガジンNo.413から。
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