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削減どころか月60件を超える陛下のご日程───10月のご公務ご負担削減を検証する [ご公務ご負担軽減]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンからの転載です


 メルマガの更新がすっかり遅れました。申し訳ありません。

 今週の月曜日(23日)は新嘗祭の日でした。宮中では夕刻から夜半にかけて、陛下みずから親祭になり、今年とれた稲と粟の初穂が神前に捧げられたものと思います。同様に、全国各地の神社などで神事が行われたはずです。

 私も夕刻、都心で行われた「新嘗を祝う集い」に参加してまいりました。「新嘗の祭りはけっして農耕民の行事ではない。都会には都会人の新嘗があってしかるべきだ」という考えから、26年前、わずか数人の青年たち有志によって始まり、以来、毎年欠かさず行われているのだそうです。

 今年は東京都内だけでなく、近県からも40人ほど、各人各様のお供えを持ち寄って、集まりました。元市長さんのにこやかな顔もありました。私はイセヒカリのおにぎりを用意しました。神事は神職の資格を持つ高校の先生が務めました。厳格な祭典のあとは、和やかな直会が遅くまで続きました。

 自然の恵みに感謝するこのような新嘗の祭りは、遠く奈良時代にまとめられた日本最初の地誌「風土記」に粟(あわ)の新嘗のことが載っているように、古い歴史を引き継いでいます。

 現代では「古い」という言葉はとかく否定的な意味を持って語られがちですが、千年以上もの歴史を持つ文化がとうとうと受け継がれているのは、日本ならではのことであり、世界に誇るべきでしょう。

 国の法律では「新嘗祭」という言葉さえ消えていますが、けっして死語になってはならないと思います。そのためにはこの「祝う集い」の試みのように、現代的な意義を見出し、最活性していく必要があります。


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 削減どころか月60件を超える陛下のご日程
 ───10月のご公務ご負担削減を検証する
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▽陛下と国民を欺く

 さて今日は、毎月恒例となっている今上陛下のご公務削減の検証をします。

 宮内庁は陛下のご高齢とご健康に配慮して、という説明で、今年からご日程を調整しています。しかし、このメルマガで、あるいは雑誌「正論」10月号の拙文「宮中祭祀を蹂躙する人々の『正体』」に書きましたように、ご日程の件数は減るどころか、少なくとも宮内庁発表の資料を見るかぎり、増えています。そして、その一方で、歴代天皇が第一のお務めと考えてきた祭祀が激減しています。

 側近たちの振る舞いはまさに言行不一致そのもので、陛下および国民を欺いているだけではなく、とくに宮中祭祀に対する不当な越権的干渉といわざるをえません。

 稲作民の米と畑作民の粟をともに捧げる公正無私なる祈りは、古来、多様なる国民を多様なるままに統合してきた多神教文明の中心だと私は考えていますが、だとすると、宮中祭祀の簡略化は文明の根幹に関わる問題であって、黙過することはできません。

 さっそく先月のご日程を見てみましょう。


▽前年同期比で2割り増し

 宮内庁がネット上に公表しているご日程の件数を、平成19年から今年まで3年間について、1~10月まで月ごとに単純に足し算し、まとめたのがつぎの表です。先月のご日程件数は60件の大台を超えています。

    19年  20年  21年
1月  41   49   55
2月  44   36   38
3月  53   53   59
4月  50   61   68
5月  39   51   52
6月  40   46   52
7月  43   43   26
8月  39   24   30
9月  39   50   45
10月 58   55   63
小計 446  468  488

 今年の4月はご結婚50年のお祝いがありました。そのため過去にないほど件数が増えたのかといえばそうではありません。祝賀行事は1件としか数えていないからです。10月は4月に迫るほどに増えています。

 昨年10月は24~27日まで4日間の那須ご静養、30~翌2日まで4日間の奈良・京都行幸があり、ご日程件数は55件でした。今年10月は那須御用邸ご滞在も地方行幸もありません。豊かな海づくり大会は東京が開催地でした。ご日程件数の63件は、前年同期比で2割増え、前月比では45件の4割り増しに増えています。

 いったいどこがご公務削減なのでしょうか。言っていることとやっていることがまるで違うように見えます。


▽中身を見ると意外にも

 具体的に何が増えているのでしょうか。

 19~21年10月期のご公務日程を、宮内庁の分類方法に準拠し、「宮中のご公務など」「行幸啓など」に分類し、まとめると次のような票が得られます。「国際親善」については省略しました。

                   19年  20年  21年
[1]宮中のご公務など
 ご執務など             13   10  11
 新年祝賀の儀・新年一般参賀      0    0   0
 天皇誕生日祝賀・一般参賀       0    0   0
 首相・最高裁長官の親任式       0    1   0
 大臣ほか認証官の任命式        1    1   0
 大綬章などの親授式          0    0   0
 新任外国大使の信任状捧呈式      2    0   3
 外国元首とのご会見・そのほかのご引見 4    3   4
 国内功労者などの拝謁・お茶・ご会釈 36   33  33
 海外賓客の午餐・晩餐         1    1   1
 春秋2回の園遊会           1    1   1
 宮中祭祀               3    3   3
 その他(稲作など)          2    3   0
 ご結婚50年祝賀関連         0    0   0
 両陛下のご誕生日祝賀行事       1    1   1
  宮中のご公務小計         64   57  57

[2]行幸啓など
 全国戦没者追悼式など都内式典ご臨席  1    1   2
 植樹祭などご臨席の地方行幸啓     0    2   1
 その他の都内お出まし         1    2   4
 その他の地方行幸啓          2    6   4
 地方ご静養              1    1   0
  行幸啓小計             5   12  11

 この表で見ると、興味深いことに、宮中のご公務も行幸も、内容的に件数は増えていないことが分かります。宮中のご公務では信任状捧呈式が増えているのが目立ちますが、小計で見ると前年と同じ数字です。行幸も都内のお出ましが増えていますが、小計は前年比ではわずかながら減っています。


▽前月9月と比較すれば

 ところがです。前月9月と比較すると、宮内庁がもっとも気にかけていた「拝謁」が増えています。

 宮中のご公務について、次の表を見れば明らかです。

                   21年9月 10月
宮中のご公務など
 ご執務など              9    11
 新年祝賀の儀・新年一般参賀      0     0
 天皇誕生日祝賀・一般参賀       0     0
 首相・最高裁長官の親任式       1     0
 大臣ほか認証官の任命式        2     0
 大綬章などの親授式          0     0
 新任外国大使の信任状捧呈式      0     3
 外国元首とのご会見・そのほかのご引見 3     4
 国内功労者などの拝謁・お茶・ご会釈 25    33
 海外賓客の午餐・晩餐         1     1
 春秋2回の園遊会           0     1
 宮中祭祀               1     3
 その他(稲作など)          3     0
 ご結婚50年祝賀関連         0     0
 両陛下のお誕生日祝賀行事       0     1
  宮中のご公務小計         45    57

 なかでも勤労奉仕団へのご会釈が9月の3件から10月は10件に増えたのが目立ちます。各界の功労者への拝謁も増えています。

 要するに、ごくごく簡単にいえば、ご公務ご日程の件数は宮内庁の削減方針にもかかわらず、「減っていない」のです。


▽「続けたい」と語られた陛下

 先のご即位20年に際しての記者会見で、ご負担軽減についての質問がありました。

 陛下は「皆が私どもの健康を心配してくれていることに、まず感謝したいと思います。この負担の軽減ということは、今年1年、その方向で行われまして、やはり負担の軽減という意味はあったのではないかと思っています。しかし、この状況は、今の状況ならば、そのまま続けていきたいと思っております」と語られています。

「そのまま続けて」とおっしゃるのは、見せかけだけの削減策を認められたのでしょうか。そうではない、と私は思います。

 3点、指摘します。

 第一は、陛下のご公務は拡大する宿命を帯びていることです。

 古来、天皇による統治は、「しらす」政治だといわれます。民意を知って統合を図ることの意味です。今上陛下は、ご高齢にもかかわらず、療養中にもかかわらず、多くの人々の声を聞こうとされています。

 たとえば、地方から皇居勤労奉仕にやってくる人々に対して、陛下は1人1人に親しくお声をかけようとされます。それどころか、陛下のお気持ちとすれば、国民すべてに声をかけたいと思われるでしょう。国民すべての天皇だからです。

 したがって、陛下が考えるご公務は、お気持ちを尊重すれば、無限に拡大していく可能性を持っています。

 第二は、争わない陛下の姿勢です。

 宮内庁が進めるご公務削減策は、まやかしとはいわないまでも、どう見てもかけ声倒れです。日程表を見れば私でも分かりますが、官僚たちは不思議に思わないのでしょうか。

 陛下は官僚たちが用意するご公務を粛々とこなされています。争わずに受け入れるのが天皇の帝王学ですが、それに甘んじていいのか、宮内庁はよくよく考えるべきでしょう。

 ご高齢で療養中の陛下のご負担を減らそうとするならば、官庁主催のイベントについてはご名代として皇太子殿下にお出まし願うなど、抜本的な対策が必要かと考えます。


▽昭和の悲劇の再来

 第三は、昭和の祭祀簡略化と同じ事態が起きているということです。

 宮内庁のご公務削減策は、歴代天皇が第一のお務めとしてきた狙い撃ちにするものです。過去3年間について、月ごとの祭祀件数をまとめたのが次の表ですが、ご公務が減っていない一方で、祭祀が激減していることが明らかです。

   19年 20年 21年
1月   8   7   4
2月   4   3   2
3月   2   4   1
4月   2   3   3
5月   4   1   1
6月   3   3   3
7月   3   2   3
8月   2   2   0
9月   2   3   1
10月  3   3   3
 計  36  34  21

 陛下は会見で、「感謝したい」「意味はあった」と述べられました。祭祀の簡略化を肯定されたということでしょうか。そんなことはあり得ないでしょう。

 皇位継承後、皇后陛下とともに宮中祭祀について学び直され、正常化に努められたのが陛下です。もし簡略化を認められたのだとすれば、歴代天皇の姿勢に反するだけでなく、みずからの方針を破ることになります。

 ふりかえれば、先帝昭和天皇は、側近中の側近である入江相政侍従長が進める祭祀簡略化に、精いっぱい抵抗されました。

 入江日記の昭和46年11月23日には、「今年から新嘗はさわりだけに願った……(夕の儀からの)お帰りのお車の中で『これなら何ともないから急にもいくまいが、暁(の儀)をやってもいい』との仰せ」とあります。

 入江は続けて、「ご満足でよかった」と書いていますが、「ご満足」のはずはないでしょう。争わずに受け入れる天皇の抵抗を、祭祀嫌いの俗物侍従長が鼻であしらっているように私には読めます。簡略化で負担が簡略化されたのは、むしろ入江自身でした。

 今上陛下もまた、至難の帝王学を実践しつつ、祭祀王のお務めを果たそうとされている。「続けたい」とはその意味でしょう。それならいま「昭和の先例」を根拠に進められる平成の祭祀簡略化について、官僚たちは入江のように「ご満足でよかった」とうそぶくか、それとも改めようとするのかどうか。

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