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2 鳩山首相の辞職を要望する by 市村眞一 [鳩山由紀夫]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンからの転載です


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 2 鳩山首相の辞職を要望する by 市村眞一
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◇1 歴史家トインビーの「宰相の4要件」

 鳩山氏の首相就任以来の発言と行動を見て、この人を日本国の首相に留めてはならぬと判断する。理由は以下に詳論するが、一日も早く首相の職を辞してもらいたい。日本国のため、民主党のために。

 良き宰相たるには、持つべき素質と条件がある。鳩山氏は、その要件を著しく満さない。もちろん、過去にも同様な首相は多い。鈴木善幸氏など一例である。ではその要件は何か。管見の及ぶところ、歴史家トインビーが、1924年以降の世界の指導的政治家を対比検討して要約した宰相の条件が見事である。

「成功した政治家の多くは、体力と財力に恵まれていたが、この2つは絶対ではない。ルーズベルトはひどい肉体的ハンディがあり、晩年のレーニンも同様であった。ロイド・ジョージの生れは貧しかった。歴史的に見て、政治家が成功する最も確実な条件は、それよりは次の4つである。
 〈1〉勇気と国民を奮い立たせる能力のあること、
 〈2〉私的偏見のないこと、
 〈3〉他人の考えや気持を敏感に捉える直感力、
 〈4〉あくまで、確実で限られた目標を追求すること。」

 つづけて、トインビーは、アタチュルク、チャーチル、ガンディ、ホーチミンが、国難に際し国民を奮い立たせた非凡の力量を称えたあと、私心のないことに言及する。

「トルーマンは、私的偏見がなく、正直で誠実な強い意志の持ち主として、いまでは非常に高い評価を受けている。社会的にも、個人的にも、依怙贔屓(えこひいき)が少ないことは、現代の政治家や政党が生き残る必須の条件である。政党が、組合や大企業や私利私欲の走狗(そうく)と化したのでは、もうお終(しま)いである。政治に策略はつきものである。かの禁欲的聖人のガンディもなかなか抜け目のない政治家でもあったが、しかしその策略は卑劣なものではなかった。同じ革命政治家のなかでも、トロッキーは幻想家として失敗し、レーニンとスターリンは現実主義者として成功した。」

 この名言に照らせば、鳩山氏の能力と知識は4条件のどれも満さないが、致命的なのは、とくに第4条件、次いで第2条件である。なお同氏には、トインビー条件以外にも問題があるが、それは後述する。


◇2 現実を直視できぬ政治家は必ず失敗する

 トロッキーも、スターリンの死後ゴルバチョフまでのソ連指導者も、毛沢東とその追随者も、自国を取り巻く国際環境と力関係を冷静に認識できなかった。

 鳩山首相も、日本を取り巻く現実の把握が非常に甘く、日本の経済力と政治力の限界を知らない。それは首相が「VOICE」誌の昨年9月号に書いた「私の政治哲学」を読み、また、いまの予算編成の過程と普天間問題処理のもたつきを見れば明々白々である。

 トインビーのいう幻想家に近い。超楽観的な歳入見通しを立て、俗受けするマニフェストを掲げ、予算編成がとどのつまりに来るまで決断せず、結局、謝罪してけろりとしていることが、彼の力と素質を物語る。

 その思考を一言で表せば、「希望的観測思考」Wishful Thinkingである。必ずや、普天間問題でも同じ失敗を繰返すであろう。予算は国債増発で一時を糊塗できるが、普天間問題はそうは行かない。

 政権交代時に日米間で交渉中なら話は別だが、それはすでに日米両政府間で「グアム協定」に関連して合意し、国会で議決され、米国務長官と日本の中曽根外相がサイン済みだ。それを鳩山首相は先延ばした上、5月末までに普天間の移設先を決めると何度も明言する。

 しかし二つの困難なハードルをどう越えるのか。第一は、辺野古以外の移設先の特定と受入れ先の同意、第二は、それへの米政府の同意である。官房長官も外相も防衛相も、行き先が決まらぬ事態を心配して色々発言するが、首相のみは、未だに交渉を始めもしないで、どこかに決め得るかのごとく希望的観測を語る。

 しかも「覚悟」して事に当っていると言う。記者が決まらぬ時の覚悟かと問いつめても、言を左右にして答えない。それは典型的に、現実を直視できぬ幻想家の優柔不断な姿である。

 だが予算と同様、とどのつまりが3、4カ月後に必ず来る。そのとき謝ってすむものではない。沖縄の反発にどう対処するのか、日米関係への打撃への責をどう負うのか。もしそんな事態を惹き起せば、首相の職を辞してもらいたい。いったん決まっていた重大問題を再発させ、混乱させた見通しの悪さと誤った判断の責は、辞職でつぐなうほかはない。


◇3 「私の政治哲学」の現実離れ

 首相がこのようにトインビーの第4条件を満さぬことは、炯眼(けいがん)なる読者なら、先の「政治哲学」からも読みとれたはずである。それは一政治評論としては有意義な内容だが、近く首相の座につく人の論としは余りに「現実離れ」で、厳しく言えば「書生論」だからである。

 首相は書く。祖父が尊敬したクーデンホーフ・カレルギー伯の「友愛」の理想に共鳴し、共産主義とナチズムという左右の全体主義の行きすぎた「平等」の追求にも、アメリカの市場原理主義の行きすぎた「自由」の追求にも反対である。個人・家族・地域・民族国家のなかでの友愛と民主政治の徹底をもとめ、国内では「地域主権」国家の建設を、国際的には民族国家の枠を越えて、欧州連合のような「アジア共同体」を目指したい、と。それに必要として、憲法の改正までも提言する。

 しかし、首相がみずから最後にクーデンホーフ・カレルギー伯の言葉を引用して書いたように、「すべての偉大な歴史的出来事は、ユートビアとして始まり、現実として終った。そして1つの考えがユートピアにとどまるか、現実となるかは、それを信じる人間の数と実行力にかかっている」のである。

 政治家に問われるのは、まさに実行力である。首相は実行の手筈や工程表を語らねばならぬ。希望的観測を語ってはならない。そこが解っていない。

 二酸化炭素削減25%を、いかに実現するかの論議や委員会への諮問もなく、突然、首相が国際的約束を言うが如きは狂気の沙汰に近い。そして評判がよいと言って喜ぶとは、軽薄の至りであろう。問題対策の法令や規則を作るのが政治的実行力であり、そうでなければ「幻想家」にすぎない。


◇4 「人ノ其ノ言ヲ易(やす)クスルハ、責ナキノミ」

 首相の言動の軽さは目に余る。

 もっともひどいのは、前に「秘書の罪は議員の罪である。私ならバッジをはずす」と、大見得を切っておきながら、今回の脱税問題で己の秘書が2名も起訴されても「自分はまったく知らなかった、私は私腹は肥やしていない」と言い訳して平然としている。こんな食言は通らない。

 親からの援助の詳細を知らずとも、巨額な入金を察せず、その会計処理を監督できない人に世界一の借金国の経理を委せてよいのか。また巨額の政治資金があればこそ、彼は首相の座を得た。それは権力欲という私腹を満たしたと言えないか。

「武士に二言なし」とは、わが国のエリートの矜持(きょうじ)である。シナでも孟子は表題のごとく言った。言信なくば、それだけで指導者失格である。

 さらに首相には「ぶれ」や逡巡(しゅんじゅん)が多い。それは国を軸がぶれる駒にしてしまう。

 西郷南洲遺訓は言う。「昨日出でし命令の、今日忽ち引き易ふると云ふ様なるも、皆、統轄するところ一ならずして、施政の方針一定せざるの致すところ也」と。旧陸軍の作戦用務例はいう「遅疑逡巡ハ、指揮官ノ最モ慎ムベキモノトス」と。

 首相は日本の指揮官である。とくに外交防衛政策に定見がなくては、一国を指導できない。首相は「政治哲学」のなかで、日米同盟は日本外交の基軸だと書きながら、駐留米軍が果している役割にも日米安保条約が片務的になっていることにも触れない。そればかりか、数年前に「駐留無き安保」を主張していたことを否定もしていない。

 今回問い正されて初めて「現実に首相になってはこれを封印する」と語った。そこには、アメリカへの極端な「甘え」がある。しかも平然と、緊密対等な日米安保と主張する。だが首相は、わが自衛隊が戦場で米軍に守られるが、米軍を守らないことを問わない。それで対等か。首相は憲法解釈を変えて、集団安保を認める気はさらさらない。対等とは何ぞ。


◇5 深まる日本国への打撃

 首相は、いまの金融危機をもっぱら米国の市場原理主義の責めにする。だが、その前の97年のアジア金融危機も、日本の「失われた90年代」の長期不況も論じない。それらは決して市場原理主義のせいではない。首相の議論は単純すぎ、また反米のトーンが強すぎ、世界経済の他の大切な要因を見落としている。

 これらから判断して、首相は国際政治と経済問題の助言者の選択を誤っている。とくに首相の防衛問題の意見がぶれたのは、対米関係と沖縄問題についての助言者が適切でなかったからであろう。もし報じられるがごとく、寺島実郎氏が助言者なら、別人の意見に早急に耳を傾けるべきである。しかし人選は所詮、首相の責任である。

 国内問題での「地方主権」論もきわめて未熟である。私自身、分権問題には多年、専門的考察を重ねてきたが(拙論「アジアの発展と地方分権政策」『東アジアへの視点』平成21年3月参照)、この難問につき、首相が専門家の助言を求められた痕跡がない。

 以上から、鳩山首相が長く首相の座に留まられれば留まられるほど、日本国への打撃は深くなると判断する。その辞職を要望する所以である。


 ☆斎藤吉久注 市村先生のご了解を得て、3月1日発行「日本」4月号(日本学協会)〈http://members.jcom.home.ne.jp/nihongakukyokai/〉から転載させていただきました。適宜、若干の編集を加えてあります。

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