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将来に託さざるを得ない皇族教育改革 by 葦津泰國 [皇族教育]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2010年4月12日)からの転載です


 先般の愛子内親王殿下の「不登校」騒動は、学習院が戦後60年余を経て、いじめも学級崩壊もある、いかにも普通の学校になってしまったな、という印象を強くしました。

 そしてこんどは、秋篠宮殿下の第一女子、眞子内親王のICU(国際基督教大学)ご入学です。入学式は大学内の礼拝堂で行われたと伝えられます。
http://mainichi.jp/select/today/news/20100402k0000e040029000c.html

 秋篠宮殿下は学習院のキャンパスで、経済学部教授を父に持つ妃殿下と出会い、結婚されました。いわば学習院の学舎が両殿下を生み、育てたのでした。

 しかし眞子内親王のICU入学だけではなく、いずれ皇位を継承されるだろう、秋篠宮殿下の第一男子、悠仁親王殿下も幼稚園は学習院ではありません。

 もちろん学習院でなければならないということはありません。戦後の学習院は宮内省の外局であった戦前の華族学校、学習院とは違います。

 けれども、キリスト教精神にもとづいて設立され、クリスチャンの教員が、英語で授業を行う大学に、現行の制度では皇位に即くことのない内親王とはいえ、日本の皇族が通うことを、皇族自身の自由意思に任せて、容認されるべきものなのかどうか。

 その一方で、将来の皇位継承を見通し、悠仁親王について、あるいは愛子内親王について、帝王学教育の必要性を主張する人々もいます。一般の学校教育では期待できない皇族教育の重要性が指摘されているということですが、日本の歴史と伝統のシンボルである皇室の子弟教育は、現実にはキリスト教の学校にまで振り子が振れてしまっています。

 これらのことをどうお考えるべきなのか、今日は問題提起として、葦津泰國さんのエッセイをお届けします。

 それともう1本、荒木和博特定失踪者問題調査会代表のご了解を得て、調査会NEWS 914](平成22年4月12日)から「他人任せ」を転載させていただきます。 


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 1 将来に託さざるを得ない皇族教育改革 by 葦津泰國
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 桜の花が国土をいろどるこの時期、子供たちが希望に胸を膨らませて幼稚園、小学校、中学高校大学へと進学、進級する4月。幼い親王、内親王たちが相次いでその時を迎えられた。

 将来の皇位継承者のお一人である悠仁(ひさひと)親王は幼稚園に進まれ、愛子内親王は小学校3年に進級、佳子内親王は高校生に、眞子内親王は大学生になられた。お元気で進学進級されるお姿は、国民にとってもいかにも春を飾るにふさわしい。

 だが、そんなご様子を過去の皇室のそれと比較すると、大きな変化が起こっていることが注目されている。センセーショナルな表現をすれば、「学習院離れ」ともいうべき現象か。

 先般来、大きな国民的関心事ともなった「愛子内親王の学習院初等部への不登校」報道、それに悠仁親王、眞子内親王が学習院以外の学校を選ばれたことなどと重ね合わせて、国民にとっても重大な関心事ともなっているのだ。

 単純化すれば、「学習院の質が一般学校と同じようになったので、皇族方が学習院を避け始めたのではないか」などという憶測が流行しているように思われる。


◇1 皇族の唯一の教育機関でなくなった学習院

 学習院は幕末に、公家の師弟養成のために京都御所の門前に設けられた学習所が、明治17(1884)年に宮内省所轄の官立学校となり、同40年に乃木希典が明治天皇の思し召しにより院長となり、学内の空気を一新、大正15(1926)年の皇族就学令により皇族方の学習所に指定された。

 それは昭和22(1947)年、敗戦直後まで宮内省の外局として維持されてきたが、その後、新たに私立の民間学校として現在の学習院に継続している。

 制度はこのように根本的に変わったのだが、皇族子弟が通う学習所としては、その後も引き継がれ、国民も学習院を皇族子弟の教育機関として意識する格好となってきていた。

 それが学習院とは格別に縁の深い秋篠宮家の悠仁親王が、お茶の水女子大の幼稚園に通われ、学習院の高校を卒業された眞子内親王は、わざわざキリスト教系のICUに進学され、礼拝堂で入学式を行われた。学習院は必ずしも、皇族方が通われる唯一の指定校とはいえないかたちになってきた。

 悠仁親王は「学習院に三年保育の制度がないのでお茶の水を選ばれた」、眞子内親王も「お進みになりたい学科がなかったからICUを選ばれた」と説明されてはいる。だが、国民の受け取り方は必ずしもそうではない。

 学習院には、戦前の伝統を引き継いでいるとの国民の思い入れがあったのに、愛子内親王が同級生の乱暴におびえて登校拒否されたと発表される(この発表によって皇室のイメージが損なわれることに、宮内庁側が無関心なのにはまったくあきれる)など、従来、国民が日本の皇室にいだいてきた意識を根底から覆すような話題は、学習院に対するイメージダウンを招き、皇室への信頼の失墜させる効果を生じさせた。

 それに続いて今度は、眞子内親王が「異教の学校」へご入学され、悠仁親王は学習院以外の幼稚園に入られた。これを結び付けて、国民が「やはり」と思ってしまうのはやむをえまい。


◇2 一般国民とは異なる人格形成が求められるけれど

 連続するこれらの報道により、国民の間には、皇族方の子弟教育に関して、「このままでよいのだろうか」との疑問の声も起こってきている。

 なかには、「戦後の学習院が、いじめも学級崩壊もある普通の学校を目指しているように見える方針をここで改め、戦前の宮内省の外局時代のようなものに戻るべきだ」との意見や、「皇族方が一般の施設に通われる制度を改めて、宮中ご学問所のようなものを新設し、皇族子弟のご養育にあたるのが筋だ」との意見、そのほか、「一般の国民子弟をご学友に加えながらも、将来の皇族に立派に育つ独自の養育施設を設けるべきだ」との声などがあがっている。

 私自身も報道を見て、関係者から実情を聞き、確かに現在の皇族子弟の養育制度には、将来の皇室の在り方を考えるとき、問題が山積している点には同感をする。

 皇族は一般の国民とはまったく次元の違う独自の人格形成が求められる。それはもちろん、学校教育において身につけられるものではない。逆に、青少年期の学校教育が人間の思考法、価値観、徳性、人格形成などに与える影響は計り知れない。

 日本の皇族方には、独特の無私のお立場でひたすら皇祖皇宗はじめ神々に祈り、祭りをなさる陛下とともに、伝統的な「みやび」の心を持たれることが望まれる。それが伴わなければ、いくら国民と同様の知性を身につけられていても、皇族にお相応しいお人柄とは言えないだろう。

 だが、そのような皇室の伝統と理想を深く知る関係者が、現在の日本のどこにいるのだろうか。

 知識人たちは日本の皇室の育んできた悠久の姿の本質をほとんどまったく考えようともせず、公布からたかだか60年ほどにしかならない新憲法の上辺だけで眺めて、あたかも日本の皇室を知悉(ちしつ)しているかのように得意げに語り、国民は外国の王制の「覇権」と日本の皇室の「みやび」の違いすら知ろうとしない。

 そのなかで、皇族教育のあるべき姿を模索することは不可能に近い。


◇3 妨げになることだけはしないで

 いまや日本の皇室は、過去から継続する皇室の価値を部分的にでも知る皇族方や、伝統に基づく不断の生活のなかで皇室を崇拝する数少ない国民によって支えられている。つまり、わずかに残る歴史の断片が皇室を支えているのが現実であろう。

 そんな時代にこれ以上、おかしな歪(ゆが)めは進めたくない。

 だから今は、制度そのものを変更するのではなく、少なくともいま以上には皇室が日本の歴史と伝統から浮き上がったものにならないよう、学校、宮内当局の慎重な打ち合わせにより、学校教育としての質の確保に目的がしぼられるべきであろう。

 もとより一般国民への学校教育と皇族子弟への皇族教育はおのずから違う。そして現段階では皇族子弟養成の十分条件は、学校教育などでは得ることができない。そのことをよくよく認識しなければならない。

 皇族の条件は一流の学問知識を身につけることでも、一流の社交技術を身につけることでもない。皇族子弟のご養育は、ただ国民すべてのことをつねに思い、全国民の状況を知ろうとつねに努力され、国民の幸せをみずからの幸せと考えることを理想とする精神姿勢をつねに心がけられ、国民に信頼されるお人柄を身につけられる、これを目標に進められるべきだと思うが、いまはその環境がない。

 学習院、そしてその他の皇族方を受け入れられる学校に望むのは、皇族子弟の広い心を育てる妨げになることや、あらゆる層の国民を大切に思うことに妨げとなる教育だけは絶対にしないことである。国の将来のためにも心がけてもらいたい。

 世の中は大きく変わりつつある。日本の国の将来の発展のためには、日本らしさをもう一度見直して、連綿と続いてきた歴史の流れの先に、特徴ある日本文化を位置付けなければならない。やがてそのことを国民の多くが気付くときがくる。いまは黎明(れいめい)期なのだと私は時を見ている。そのような新しい動きが出てくるまで、焦らずにじっと待つほかはない。


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