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中国海軍の増強にいたって呑気な「友愛」総理 by 高井三郎───15日間の「東海艦隊」機動訓練が実証した能力 [軍事情報]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2010年5月10日)からの転載です


 今日は軍事専門家として内外で活躍される高井三郎(たかい・みつお)先生のエッセイをお届けします。

 先月上旬、中国海軍のヘリが海上自衛隊の護衛艦に異常接近するという事件がありました。東シナ海で何かがうごめいているようです。迷走する普天間基地移設問題と重ね合わせたとき、中国側に軍事的空白につけいろうというような意図があるのかどうか。

 読売の4月25日の報道では、中国軍内部の指揮系統のトラブルが原因だとする防衛省の分析を伝え、偶発的事故の発生についての懸念を説明しています。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100425-OYT1T00860.htm

 一方、同じ読売が27日に伝えたところでは、駐日中国大使は日本記者クラブでの会見で、日本の護衛艦がしつこくつきまとったのが原因だと、逆に日本側を批判しています。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100427-OYT1T01087.htm

 いったいいま東シナ海で何が起きているのでしょうか。

 もうひとつ、東京・八王子にお住まいの読者の方から、佐藤雉鳴さんの連載についてのご感想を頂戴しましたので、掲載します。


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1 中国海軍の増強にいたって呑気な「友愛」総理 by 高井三郎
 ───15日間の「東海艦隊」機動訓練が実証した能力
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◇1 放胆かつ異常な大規模訓練

 本年4月7日から22日までの間に、中国東海艦隊は、有力な一部をもって、東シナ海および沖縄本島南方の海上で、かなり大規模な海上機動訓練を行った。中国当局は、これを「遠洋訓練」と公称している。わが海上自衛隊艦艇との異常接近もあった。

 まず、7日から9日までの間に、艦艇5隻が東シナ海中部で、ヘリの飛行を含む訓練を行った。8日に、訓練の状況を視察中の海上自衛隊護衛艦「すずなみ」に対し、中国軍ヘリ1機が至近距離まで接近した。

 次いで、10日から22日まで、艦隊は、東シナ海から沖縄本島と宮古島間の海域を通過して、500キロメートル以上も南方の太平洋上で行動後、反転し、元の経路を辿り、東シナ海に戻っている。

 この間、21日に沖縄本島南方の北回帰線付近で護衛艦「あさゆき」に、中国軍ヘリ1機が再度、至近距離に迫ってきた。

 日本の防衛当局は、東海艦隊の南西諸島を横断するという放胆な行動および2回にわたるヘリの異常接近に対し、異常な危機感を抱いた。官邸サイドは、防衛当局の報告を受け、外交ルートを通じ、3回の申し入れと1回の抗議を行った。

 ところが、鳩山総理は、艦隊が太平洋で訓練さなかの13日に、ワシントンで胡錦濤首席と50分間も会談したにも関わらず、「東シナ海は友愛の海」という呑気な話を繰り返すだけで、まったく警告を発しなかった。

 したがって、民主党政権は、半年を超える普天間基地の移転先の混迷と相まって、国民に対し、外交上、防衛上の鼎(かなえ)の軽重を問われる問題をさらに提起したのである。


◇2 沿岸海軍から海洋海軍へ脱皮

 今回の主役、東海艦隊は、淅江(せっこう)省寧波(ニンポー、ねいは)に司令部を置き、江蘇(こうそ)省北端から福建省南端までの南京軍区の海正面における沿岸警備および台湾、南西諸島、九州各方面への作戦行動を担当する。

 これに対し、山東省青島(チンタオ)に司令部を置く北海艦隊は渤海(ぼっかい)、黄海および朝鮮半島を、広東(かんとん)省湛江(じんこう)に司令部を置く南海艦隊は南海および東南アジアを担当する。北海、南海両艦隊も日本に脅威を及ぼす存在であり、軽視すべきでない。

 日本にとり、当面の潜在脅威は東海艦隊である。駆逐艦6隻、フリゲート21隻、原子力潜水艦2隻、通常型潜水艦7隻と、1990年代に比べると5割以上も膨張し、有力な航空部隊と海軍陸戦隊(約5000人)も固有する。

 今回の大規模訓練によって、東海艦隊は、東シナ海を守備範囲とする伝統的な沿岸海軍(ブラウン・ウオ-タ-・ネイビ-)を脱皮し、太平洋域でも作戦行動が可能な海洋海軍(ブル-・ウオ-タ-・ネイビ-)に成長した姿を誇示したように思われる。

 すなわち、水上艦、潜水艦及び支援艦艇から成る任務部隊(タスク・フオ-ス)を編成し、彼らの戦略目標である南西諸島から太平洋で行動する能力を実証した。

 訓練は、駆逐艦2隻、フリゲート3隻、潜水艦2隻、補給艦、救難艦、曳船各1隻という編成で行われた。救難艦は、潜水艦の救助機能のほかに、艦隊の指揮機能も具備しており、アメリカ第7艦隊の指揮統制艦隊「ブル-リッジ」と同じ役割も果す。この点から察するに、彼らなりの創意工夫の努力の形跡が認められる。


◇3 海上自衛隊護衛艦を目標に監視偵察訓練か

 この任務部隊は、空母1隻を中心に置く、アメリカ海軍の空母打撃群(キャリア・ストライク・グループ)、あるいは揚陸艦2ないし4隻を増強すれば、遠征打撃群(エキスペデイショナリ-・ストライク・グル-プ)の基盤になる。

 駆逐艦、フリゲ-トは、水上戦、対空戦および対潜戦が可能であり、艦対艦ミサイルの威力圏は、おそらく100キロメートルを超える。

 海面偵察およびソノブイ(音源・磁気センサ)による海中目標の探知に任ずる艦載ヘリは、今回、わが護衛艦を目標に監視偵察訓練を行ったように思われる。要するに、搭乗員による唯の跳ね上がり的な行動でなく、戦術技術上の合理性がある。

 韓国、東南アジア諸国の各海軍は、これだけ大規模な任務部隊を海洋に進出させる能力はない。日本では、中国海軍は、西側よりも技術が遅れているという先入感に支配されて、彼らの戦力を評価する向きが多い。

 思うに、わが方は、今後、東海艦隊の動きに対し、色々な角度から注目し、然るべき対応策を講じて行くべきである。


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2 読者の声 by 八王子の素老人FT様から
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斎藤様

 69歳、エンジニア出身の年金生活者で、この方面のまったくの素人なので筋違いの感想を述べます。

 ご多忙と思いますので、特に読んでいただかなくても結構です。気にしないで下さい。

 教育勅語の「之を中外に施して悖(もと)らず」の解釈で、佐藤雉鳴氏が綿密な考証をされているようですが、すでにご承知と思いますが、杉浦重剛が昭和天皇の皇太子時代である大正3年から4年にかけて御進講された記録(?)、『昭和天皇の学ばれた教育勅語』(勉誠出版、平成18年初版)によれば、第11回にて「中外」が「国の内外」として説明されています。(151頁)

 けれども、教育勅語が渙発されたのが明治23年で、まだ日露戦争はおろか日清戦争以前の時代で、国の内外に施して悖らずいうほどの勇ましさ(?)はなかったのではと推測します。

 したがって、「古今に通じて謬らず」(時間軸)の対のフレーズとして、「中外に施してもとらず」(空間軸)と表現したのは、「国の内外」ではなく、「朝野」と解釈するのは妥当のように思えます。

 もともと中外が日本国内にとどまるフレーズなら、天皇のお言葉であれば、わざわざ言わずもがなという気もしますが、時間軸を表現すればバランス上、空間軸も入れる修辞的意味合いかと思いますが・・。

 しかし、韓国併合(明治43年)を経験した、大正3~4年には視野が広がり、杉浦重剛はこれを国内、海外という解釈になったような気がします。


☆斎藤吉久から

 つたないメルマガを読んでいただいたうえに、ご感想までお寄せいただきまして、ありがとうございます。

 「中外」の解釈について、おっしゃる通りだと思います。で、「中外」の意味が「国内外」に固定化していったのはなぜか、というのが次のテーマかと思います。

 なぜ「軍国主義・超国家主義」の元凶のように考えられるようになったのか、ということとあわせて、丹念な歴史検証が必要になると思います。



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