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際限なく蹂躙される新嘗祭──皇太子殿下のお出ましまでが簡略化 [宮中祭祀簡略化]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンからの転載です


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際限なく蹂躙される新嘗祭
──皇太子殿下のお出ましまでが簡略化
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 陛下が発熱と気管支炎でご入院なさったのが6日(日曜日)の夜でしたから、それからちょうど2週間になります。昨日18日の皇室医務主管の発表によれば、39度近くあったお熱は前々日から下降傾向にあるようです。まずは一安心です。
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/koho/kohyo/kohyo-h23-1108.html#K1118

 気がかりなのは祭祀です。同じく昨日、宮内庁が公表したところによれば、皇室医務主管、東大病院の医師の判断に従って、陛下は「新嘗祭へのお出ましを差し控えられることになりました」。
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/koho/kohyo/kohyo-h23-1101.html#K1118

 旧皇室祭祀令では、新嘗祭は大祭に位置づけられています。第8条2項に「天皇喪ニ在リ其ノ他事故アルトキハ前項ノ祭典ハ皇族又ハ掌典長ヲシテ之ヲ行ハシム」とありますが、宮内庁関係者によれば、新嘗祭だけは別で、代行できないこととされています。

 したがって、皇室の伝統に従えば、陛下がいますが如くに神事が粛々と進められ、神饌御親供、御告文奏上、御直会の分、時間が短縮されることになります。

 けれども今回はそのような祭儀とはならないようです。


▽1 無原則に祭祀に介入する宮内庁

 すでにお話ししましたように、今月1日の段階で、宮内庁は、陛下のご健康問題を理由として、新嘗祭の新たな簡略化を打ち出しました。
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/koho/kohyo/kohyo-h23-1101.html#K1101

 2月の精密検査の結果がいまごろ報告されたということ自体信じがたいのですが、ともあれ、陛下のお出ましの時間を短縮し、夕の儀も暁の儀と同様に、儀式半ばから出御され、皇族および諸員の拝礼前に御退出(入御)されるようにお願いした、というのです。

 ところが、それだけではないのです。

 八束清貫の「皇室祭祀百年史」によると、本来なら、午後6時に天皇陛下が出御になり、皇太子殿下も相次いで参進されます。神事が進み、神饌が退下し、庭上に参列していた皇族諸員の拝礼がすんで、天皇陛下、皇太子殿下が相次いでお退がりになり、夕の儀が終了することになります。そのあと、暁の儀が繰り返されます。

 けれども、18日の宮内庁発表によれば、「なお、皇太子殿下は、夕の儀及び暁の儀の両儀式とも、儀式の半ば過ぎに、拝礼のために参進され、皇族及び諸員による拝礼の前に退出なさいます」とされています。

 新嘗祭簡略化の理由は陛下のご健康問題ですから、皇太子殿下のお出ましまで簡略化する必要はないはずです。宮内庁は何を根拠として、皇室の伝統に無原則の介入をしているのでしょうか?


▽2 10月1日の旬祭も親拝がない

 すでにご承知のように、戦前の皇室令は日本国憲法の施行に伴い、廃止されましたが、宮中祭祀の伝統は守られてきました。その根拠とされたのは、昭和22年5月の宮内府長官官房文書課長名による依命通牒で、そこには「従前の規定が廃止となり、新しい規定ができていないものは、従前の例に準じて事務を処理すること」と明記されていました。

 しかし依命通牒は50年8月、側近たちによって突然、廃棄され、祭祀は明文的根拠を失ってしまいました。その背景には厳格な政教分離主義がありました。昭和天皇の晩年、そしていま、祭祀がむちゃくちゃに扱われているのはその結果です。

 その無軌道ぶりは、陛下の祭祀へのお出ましが際限なく減り続けていることから明らかです。

 宮内庁が発表している陛下の「ご日程」に基づいて、陛下が宮中祭祀にお出ましになった日数を単純に数え上げると、以下のようになります。伝統を無視し、ご負担軽減の標的にされているのは、火を見るより明らかです。

平成 17年 18年 19年 20年 21年 22年 今年
1月 5日 5日 6日 5日 4日 6日 5日
2月 3日 3日 3日 3日 2日 3日 1日
3月 4日 3日 2日 3日 1日 2日 1日
4月 4日 3日 1日 2日 2日 3日 1日
5月 1日 3日 4日 1日 1日 1日 1日
6月 3日 4日 3日 4日 3日 2日 2日
7月 2日 2日 3日 2日 3日 1日 2日
8月 2日 1日 2日 2日 0日 0日 0日
9月 2日 2日 2日 3日 1日 1日 1日
10月 3日 1日 2日 2日 2日 3日 1日
11月 2日 2日 3日 2日 3日 1日
12月 6日 5日 5日 2日 4日 4日
合計 37日 34日 36日 31日 26日 27日

 2月11日は建国記念の日で、陛下は例年なら宮中三殿で御拝をなさるところですが、今年は検査入院のためお取り止めとなりました。

 10月1日は旬祭のお出ましがあるはずでした。21年1月の宮内庁が公表した御負担軽減策では、「毎月1日に行われる旬祭について、5月と10月以外は御代拝により行う」としていましたが、今年10月は親拝がありませんでした。
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/koho/kohyo/gokomu-h21-0129.html

 というのも、国体開会式御臨場に伴う山口県行幸の日程が入っていたからです。以前なら、祭祀を優先し、日程をずらしていましたが、いまは逆に祭祀がしわ寄せを受けています。「祭祀は天皇の私事」という発想なのでしょう。占領前期への先祖返りです。

 さらにいえば、祭祀への無理解、無神論的対応が背景にあるものと想像されます。

 以前から左翼チックな研究者やマスコミが「天皇が祭祀に出席・欠席」という表現を使用していましたが、いまでは宮内庁までが、「平成23年10月17日(月)天皇陛下、神嘗祭神宮遙拝の儀(神嘉殿)。天皇陛下、神嘗祭賢所の儀(賢所)。皇后陛下には右膝下の下腿筋膜炎のためご欠席」などと公表するようになりました。

 新嘗祭にお出ましになれない陛下がどれほど無念か、拝察するに余りあります。公正にして無私なる祈りを神々に捧げることこそ、天皇の天皇たる所以だからです。

 平成の大嘗祭で、政府は「稲作中心社会の収穫儀礼」と定義しました。そのような理解は、日本はもはや農耕社会ではない。農耕儀礼は形骸化している。祭祀の根本的見直しという選択肢もあり得る、と宮中祭祀廃止論を展開した皇室研究家のレベルと大して変わりません。

 今日、TPP参加をめぐる議論が賑やかに展開され、日本の稲作の前途を悲観する声も聞こえますが、もはや稲作農業の時代ではないから、天皇の稲作儀礼は簡略化されてかまわない、という論も可能です。

 つまり、当メルマガで指摘してきたように、天皇の祭祀が米だけではなく、米と粟の祭祀であることの意味が理解できないのです。


▽3 減らない御公務

 祭祀の伝統が崩れる一方、陛下のご公務はご負担軽減はかけ声ばかりで、ご多忙の日々が続いてきました。

 陛下のご公務日数を月ごとに計算すると、以下のようなデータが得られます。

平成 17年 18年 19年 20年 21年 22年 今年
1月 22日 21日 22日 21日 19日 23日 23日
2月 17日 18日 19日 22日 19日 17日 17日
3月 23日 22日 22日 25日 24日 26日 22日
4月 21日 22日 20日 20日 21日 22日 23日
5月 20日 25日 22日 19日 20日 23日 20日
6月 24日 23日 22日 25日 25日 23日 23日
7月 18日 20日 21日 22日 27日 20日 23日
8月 23日 18日 22日 19日 19日 23日 21日
9月 22日 26日 22日 25日 22日 23日 23日
10月 25日 25日 24日 24日 26日 24日 25日
11月 26日 25日 26日 26日 22日 24日
12月 22日 24日 22日 16日 24日 23日
合計 263日 269日 264日 264日 268日 271日

 一目瞭然、ご公務は減りません。なぜでしょうか?

 宮内庁は6日、ご体調について、「これまでのご疲労が相当蓄積し、お身体の抵抗力が低下しているご状況にあられると拝察されますので……」と発表していますが、まるで他人事のように聞こえませんか?

 考えてもみてください。陛下の国事行為は、7日以降、皇太子殿下が臨時代行されていますが、15日には、皇太子殿下だけでなく、秋篠宮殿下もご公務の代行をはじめてお務めになりました。皇太子殿下が長野県を行啓なさっていることから、秋篠宮殿下が陛下に代わり、秋の叙勲者などと面会されました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111115/t10013972971000.html

 御公務を皇太子殿下のみならず、秋篠宮殿下までが代行できるのなら、なぜもっと早い段階で、そのような対応をしなかったのでしょうか。陛下はご高齢で、しかも療養中なのに、です。

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