SSブログ

ご公務はなぜ減らないのか──新聞各紙の社説を読んで [ご公務ご負担軽減]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンからの転載です


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ご公務はなぜ減らないのか
──新聞各紙の社説を読んで
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

koukyo01.gif
 当メルマガが以前から取り上げてきた陛下のご公務軽減問題について、陛下のご入院、手術をきっかけに、ようやく新聞各紙が真正面から取り扱うようになりました。

 そこで今日は、その内容について検証することにします。

 結論からいえば、(1)陛下のお務めは何か、という本質論が欠けている、(2)近代、とりわけ戦後の天皇・皇室史の流れが見えていない、(3)ここ数年のご公務ご負担軽減の経緯が掘り下げられていない、という疑いを痛切に感じます。


▽1 ご公務とは何か

 まず読売新聞です。

 同紙は昨日19日の社説で、「陛下には、どうか無理をなさらずに、治療と静養に専念していただきたい」と希望を述べたうえで、「難しいのは公務との兼ね合いである」として、「年間1千件近い内閣の書類への署名・押印、首相や閣僚ら認証官の任命式、国賓歓迎行事、地方訪問……。宮中祭祀も多い」ことを説明しています。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120218-OYT1T00781.htm

 リーマン・ショック後の御不例のあと、21年に宮内庁は一定の「負担軽減策を打ち出した」けれども「行事削減までは踏み込まなかった」と、これまでの経緯を簡単に振り返り、今後について、「陛下の体調が心配されるときや静養の際には、皇太子さまが国事行為の臨時代行や名代を務めたり、皇族方が各種行事に出席して陛下の思いを伝えるといった柔軟な対応も必要になろう」と改善策を提案しています。

 けれども、この社説には、天皇のご公務とは何か、という本質論がすっぽりと抜けています。つまり、憲法に定められる国事行為と成分的根拠のないようなご公務、それと歴代天皇がもっとも大切にしてきた宮中祭祀を一緒くたに議論すべきではないと思います。

 ご公務の削減策が打ち出されて3年も経つのに、当メルマガが再三、示してきたように、ご公務は、少なくとも日数において逆に増え、その一方で祭祀へのお出ましが激減した、生の現実への言及もありません。

 宮内庁はいわゆるご公務の削減策を打ち出したけれども、実質的に削減されることはなかった。その原因を探究することなしに、「柔軟な対応」を呼びかけても、絵に描いた餅になるのが関の山でしょう。


▽2 女性宮家創設への執着

 どうも社説の執筆者には、国事行為も、ご公務も、宮中祭祀も、一緒くたにしなければならない事情があるようです。つまり、昨年11月に同紙が「スクープ」した、いわゆる女性宮家創設問題への執着です。

 社説は、陛下は皇室の将来を心配されている。女性皇族の結婚で皇室を離れれば皇族は減っていく。「近い将来、皇室活動の安定性に重大な不安が生じる」。政府は近く有識者からの聞き取りをはじめる。首相も「早急の結論を出したい意向を示している」と畳みかけています。

 執筆者は、渡邉允前侍従長が主張しているように、女性宮家問題を皇室のご活動の確保問題と理解しています。ご丁寧に、前侍従長と同様、「皇位問題と切り離して」と念押ししています。

 しかし陛下のご公務と皇室のご活動は本質的に異なります。女性皇族が天皇のご公務を代行できると、この論説委員は本気でお考えなのでしょうか。

 また、陛下が皇室活動の「将来」についてご心配である、と単純に推断すべきでもありません。

 社説は「陛下と、国民の安心につながる議論を望みたい」と結んでいますが、女性宮家創設が過去の歴史にない女系継承をもたらすのなら、「陛下と、国民の安心につながる」はずはありません。


▽3 開かれた皇室論?

 毎日新聞は14日の社説で、ご公務のご負担軽減を訴えています。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20120214ddm005070125000c.html

 陛下のご快癒とさらなる健康を祈り、「とともに、近年たびたび指摘されてきた陛下の公務の負担について改めて精査し、先送りせずに適切な軽減を図るべきではないか」と指摘しています。

 指摘はいいのですが、問題は根拠です。毎日の論説委員は、陛下の多忙なご公務は憲法の理念に基づくものと考えているようです。「象徴天皇制を定めた現行憲法のもとで初めて皇位を継承した天皇陛下は、『開かれた皇室』に代表される理念を具現化すべく、皇太子時代から国民と接する機会をとても大切にしてきた」というのです。

 社説の執筆者によれば、今上陛下が皇后陛下とともに被災地で被災者を励ましたりなさるのは「開かれた皇室」の理念を実現するためだと理解しているようですが、違うでしょう。社説本文に登場する「平成皇室」なるものは陛下ご自身が明確に否定されています。ご在位20年の会見で、陛下は「平成の象徴像というものをとくに考えたことはありません」とお答えになっています。

 同紙の社説は、「すでに宮中祭祀で一部負担を軽減するなどしているが、本格的な見直しにはまだ遠い」と説明していますが、陛下のご多忙は「国中平らかに、安らけく」という、公正かつ無私なる祈りの精神にこそあります。

 ところが、ご負担軽減と称して、祭祀を狙い撃ちにして激減させ、祈りの機会を奪ったのがここ数年の皇室行政でした。

 社説は、今回、医師団が手術を決定した理由・目的に「Quolity of Life」を上げていることに言及していますが、「およそ禁中の作法は神事を先にす」(順徳天皇「禁秘抄」)をみずから具体化できない状況に追い込まれている陛下にとってのQOLとはいったい何でしょうか。

 結局のところ、読売と同様、天皇のお務めとは何か、という本質論が欠けているのです。


▽4 戦後憲法論の限界

 もう1本の社説を取り上げます。信濃毎日の19日の社説です。
http://www.shinmai.co.jp/news/20120219/KT120218ETI090005000.html

 陛下のご快復を祈り、ご公務の見直しを求める点では変わりません。78歳になるご高齢、ガン療養中のご健康について説明し、「宮内庁が09年にまとめた資料によると、昭和天皇の時代と比べて公務の量は格段に増えている。赴任する大使などとの面会は5倍近く、地方訪問も2倍以上に達する。皇居での執務や行事、宮中祭祀を合わせると、休みの取れない日が続くときもある」と具体的にご多忙ぶりを指摘し、とくに昨年の強行スケジュールに言及しています。

 そのうえで、「適切にブレーキをかけるのが宮内庁の役割」と訴え、「天皇の公務については、首相の任命や国会の召集などの「国事行為」は、憲法で定められている。それ以外は、法令に基づくものではない」と正しく指摘するのですが、結局、戦後派的な憲法解釈の枠組みを超えられないでいます。

 このため、「憲法の原点」にもどり、国事行為以外は大胆に取捨選択すること、「国民の総意を基盤とする象徴天皇制」にふさわしく、ご公務のあり方について、宮内庁は国民に意見を募ってはどうか、と呼びかけるにとどまっています。


▽5 増える宿命のご公務

 天皇は古来、私なき祈りの存在です。同時に、天皇には民の声を聞き、民の心を知るという王者の伝統があるといわれます。今上陛下が各分野の人々との拝謁で、一人ひとりと触れ合おうとされるのはそのためでしょう。清掃奉仕の人々へのご会釈も、被災地ご訪問もしかりです。このため陛下のご公務は減るどころか、増えていく宿命にあるといえます。

 一方、憲法が定める国事行為についていえば、大臣その他、認証官のポストが増えれば、任命式の件数は増えます。国連加盟国の数が1945年設立当初の51カ国から現在は200カ国近くにまでを増えていますから、外国の大使に信任状を捧呈する儀式、ご引見の件数はそれだけ増えることになります。

 けれども、陛下は御歳78になられました。江戸期の霊元天皇と並ぶ、歴代第4位の御長寿ですが、歴代天皇は若くして退位されており、75歳を超えて皇位にあるのは昭和天皇と今上天皇だけです。まして今上陛下は療養中です。ご負担軽減は待ったなしです。

「ご公務定年制」の提案もあります。祭祀がおできになれないなら退位すべきだという意見もあるようです。なるほど中世においては退位の制度がありましたが、明治以後はこれを禁じ、終身在位制が採用されています。

 それならどうすればいいのか。昨年11月のご入院のとき、国事行為は皇太子殿下が代行され、秋篠宮殿下がご公務を代行されるという局面がありましたが、これからのご公務のあり方を考えるうえで、大きなヒントを与えてくれるように思います。


▽6 ひとつの提案

 問題は歴代天皇が最重視し、今上陛下ご自身、皇位継承後、正常化に努めてこられた祭祀です。

 旧皇室祭祀令には、天皇が親祭される大祭について、天皇に事故あるときは皇族または掌典長に祭典を行わせると定められていました。ひとつの提案として、たとえば大祭なら、陛下に代わって秋篠宮殿下にお出ましいただいて、祭典を行い、皇太子殿下は皇太子として拝礼なさるというようなことはできないのでしょうか。

 その方が、掌典長や掌典次長による御代拝よりも、原則なき祭典の簡略化よりも、陛下は安心なさるのではないかと私は思います。

 最後に蛇足ですが、ご公務ご負担の軽減を進言したという渡邉允前侍従長は、その著書『天皇家の執事』の後書きで、概要、以下のように、ご負担軽減について書いています。

「平成10年の天皇誕生日の記者会見で明言されたように、陛下はご公務を減らすつもりはまったくないという考えで一貫してきた。したがって、21年1月のご公務・祭祀の調整・見直しをお許しになったことは感慨無量だったが、ご公務そのものを削減することはなく、まだまだお忙しいことにまったく変わりはない」

 3年前、陛下は「お許しになった」のに、ご公務は減りません。減ったのは祭祀ばかりです。陛下は22年暮れのお誕生日会見で、「今のところこれ以上大きな負担軽減をするつもりはありません」と明言されています。

 なぜご公務は減らないのでしょうか。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0