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直宮の外国ご訪問への懸念──外国の政権に政治利用される恐れはないか? [皇室外交]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンからの転載です


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直宮の外国ご訪問への懸念──外国の政権に政治利用される恐れはないか?
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 前回は戦後の皇室関係史を俯瞰しつつ、いわゆる「女性宮家」創設への経緯を4段階に分け、〈第1期 皇室典範改正非公式検討期〉と〈第2期 典範改正公式検討期〉について、年表風にたどりました。

 今回は引き続き、〈第3期〉〈第4期〉を振り返るつもりでしたが、予定を変更し、皇室外交について考えてみることにします。皇室の御活動維持を表向きの目的として、目下、進行中の「女性宮家」創設問題と深く関係すると思うからです。

 その前に、今月6日、寛仁親王殿下が薨去されました。あらためて、慎んで哀悼の意を表したいと思います。

 facebookのウオールにも書きましたが、殿下はお若いころは皇籍離脱宣言をなさるなど、やんちゃなところがありましたが、長じては円熟され、スポーツ振興、障害者福祉などに尽力されるとともに、女性天皇・女系継承容認に反対の意をはっきりと表明されるなど、皇室のスポークスマンとしての重要なお役目を果たされました。

「女性宮家」創設論議が展開されるなかで、幽明界を異にすることになったのは、まことに残念というほかはありません。


▽1 「外交関係樹立50年」はいくらでもある

 さて、皇室外交について、です。

 秋篠宮殿下が今月12日から15日まで、妃殿下とともにウガンダを公式訪問されました〈http://www.kunaicho.go.jp/activity/gonittei/03/gaikoku/pav-h24-uganda.html〉〈http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/uganda/visit_120612.html〉。また、皇太子殿下は25日から7月1日まで、皇太子殿下がタイ、カンボジア、ラオスをご訪問になります〈http://www.kunaicho.go.jp/activity/gonittei/02/gaikoku/h24southeastasia/cpv-h24-southeastasia.html〉。

 秋篠宮殿下のウガンダ訪問は、同政府から両国の外交関係樹立50年を機に、ご招待の申し出があり、政府がご訪問を閣議了解したとされています。国賓待遇で迎えられた殿下は、妃殿下とともに、大統領を表敬され、記念晩餐会にご臨席なさるなどされたそうです。

 外務省は「我が国皇室による同国への初の御訪問」でもあり、「熱烈な歓待」を受けられ、「両国の友好・親善関係を再確認し,一層増進することとなった」と、ご訪問の成功を最大限に評価しています。

 しかし、以下のような、いくつかの懸念がぬぐいきれません。

 第1に、日本は世界のほとんどの国と国交がありますから、第2次大戦後、独立した国々との「外交関係樹立50年」は星の数ほどとはいわないまでも、数多くあるはずです。相手国から招待があったからといって、皇族がご訪問にならなければならない理由はどこにあるのでしょうか?

 外務省の「要人往来」によれば、ウガンダからは平成21年に外務大臣が来日していますが、日本からの要人訪問はせいぜい外務副大臣レベルにとどまっていました〈http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/uganda/visit/index.html〉。それがなぜ、直宮に一足飛びなのでしょうか? 外務大臣の訪問では不十分なのでしょうか?

 第2に、しかも、治安がいいのならまだしも、けっして良くないのです。外務省の「危険情報」にあるように、政府と反政府勢力との戦闘はいまも続き、首都カンパラでも流血事件が起きています。外務省は退避、渡航延期などを呼びかけています〈http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo.asp?id=93〉。

 そのような危険な国に、なぜ皇室外交の範囲を広げなければならないのでしょう?


▽2 ゴリ押し天皇会見の反省はないのか

 第3に、皇位継承順位第2位の殿下の身の安全が懸念されるのはもちろんですが、分裂状態にある外国の政権に、日本の皇室が政治利用される恐れはないのでしょうか? これこそもっとも恐れるべきことではないかと思います。

 3年前の暮れ、「神の新年」と位置づけられる賢所御神楽の当日にドタバタで設定された、中国・習近平副主席の「特例天皇会見」は、静謐なる天皇の祈りを妨げただけでなく、陛下のご引見を利用し、共産党内で巻き返しを図り、権力掌握に弾みをつけたいという副主席の思惑がありありで、天皇の政治的中立性をおびやかすものでした〈http://melma.com/backnumber_170937_4703227/〉。

 日本の外務省にはこのときの反省がないのでしょうか?

 第4に、行政主導による皇室のご活動は、行政の活動にお墨付きを与える一方、逆に、官僚たちの消極性を招き、ときに失敗の後始末をする効果をもつことになります。

 秋篠宮殿下のウガンダご訪問は現地で大歓迎されたようです。皇族方のご訪問はどこでも歓迎され、好印象を与えるでしょう。だから、困るのです。政治家も官僚たちも、安易に皇族方にお出ましを願うことになるからです。

 帰国された殿下は、翌日、「ご感想」を発表されました。そこには喜びと感謝がつづられています。争わずに受け入れるのが、皇室に伝わる「天皇の帝王学」です。殿下はお誕生日会見で、「公務というのはかなり受け身的なものではないか」と語られたことがあります〈http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/03/kaiken/kaiken-h16.html〉。

 政府から要請があれば、世界の果てまで、皇族方は出かけなければならないのでしょうか?

 もう一点、5番目に、指摘しなければならないのは、タイミングです。つまり、寛仁親王殿下の薨去にもかかわらず、ご訪問が強行されたことです。

 ウガンダご訪問が閣議了解されたのは5月15日です〈http://www.kunaicho.go.jp/activity/gonittei/03/gaikoku/pav-h24-uganda.html〉。6月11日のご出発を前に、1日、殿下は妃殿下とともに、武蔵野陵、武蔵野東陵に参拝されました。ここまでは通常のご日程です。

 しかし6日に寛仁親王殿下が薨去されます。殿下は親王邸に弔問されました。翌7日の御舟入にも臨まれました。同日、宮内庁は寛仁親王殿下の斂葬の儀を14日に行うと発表しました。

 秋篠宮殿下は8日、妃殿下とともに、ウガンダご訪問につき、賢所に参拝され、御所に上がり、陛下にご挨拶されました。つまり、寛仁親王殿下の薨去にもかかわらず、秋篠宮殿下のウガンダご訪問は延期にならなかったのでした。

 12日、13日のお通夜、14日の斂葬の儀にお出ましになったのは眞子内親王殿下でした〈http://www.kunaicho.go.jp/activity/gonittei/03/h24/gonittei-3-2012-2.html〉。

「相手の国にも失礼ではないか?」という宮内庁関係者の声もありますが、ご訪問を強行すべきではなかったのではないのでしょうか?


▽3 法的根拠が見当たらない

 2日後に迫った皇太子殿下の3カ国ご訪問も同様でしょう。

 それぞれの政府から招待の申し出があったとのことですが〈http://www.kunaicho.go.jp/activity/gonittei/02/gaikoku/h24southeastasia/cpv-h24-southeastasia.html〉、たとえばタイは、日本と外交関係が深い国ではあるにしても、6年前のクーデター以降、国内の政治対立が続き、日本の外務省は首都バンコクについても渡航者への注意を喚起しています。

「2011年7月に行われた下院総選挙の結果、タクシン派のタイ貢献党が第一党となり、インラック政権が誕生しましたが、インラック政権発足後、これまでのところは、大規模な集会等の開催は見られていません」ということですが、「不測の事態が発生するおそれは排除されません」と警戒を弱めているわけではありません〈http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo.asp?id=7

 こうした皇室外交の最大の問題点は、法的な根拠がとくに見当たらないことです。

 憲法は、天皇について、憲法改正、法律などの公布、国会の召集、衆議院の解散など、の国事行為を定めています。天皇にはほかに、象徴という地位に基づく公的行為として、国会の開会式へのご臨席、国務大臣など認証官の任命式へのご臨席、国民体育大会などへのご臨席があります。

 宮内庁の説明では、天皇・皇族の外国ご訪問は、国賓・公賓などのご接遇、外国大使の信任状捧呈式、来日した海外要人とのご会見、ご引見、在日外交団の接遇、赴任大使・帰朝大使拝謁・ご接見・お茶など、皇室による国際親善のご公務の一環として行われています。

 たしかに天皇の国事行為には、「外国の大使および公使を接受すること」が含まれていますから、陛下が国賓などをご接遇なさるのは理解できますが、天皇はいざしらず、天皇以外の皇族が、ご名代としてならともかく、国際親善のために外国をご訪問になる根拠はどこにあるのでしょうか?


▽4 ご活動なさることが天皇なのか

 余談ですが、今年2月、陛下がご入院されたとき、皇后陛下は、22日にはフィジーなどに赴任する日本大使夫妻とお茶に臨まれました。28日もドイツなどに赴任する日本大使夫妻とのお茶がありました。3月7日には離任するペルー大使をご引見になりました。

 天皇陛下はご入院・ご不例のため、拝謁・ご接見、ご引見をお取り止めになり、皇后陛下がお一人でご公務に臨まれたのですが、そのようになさる根拠はどこにあるのでしょうか?

 歴史的に見れば、天皇は「上御一人」であり、現行憲法は天皇の国事行為を定めているのであって、天皇陛下が皇后陛下を伴って、ご公務をなさる、ということは理解できますが、宮内庁のHPに記されているような、一夫一婦天皇制的な「両陛下のご公務」というのは本来、ないはずです。まして、皇后陛下が、ご名代でもなく、単独で、「天皇のご公務」とされるべき「ご活動」をなさるのは、認められるべきことでしょうか?

 もっといえば、前にも申しましたが、日本の天皇・皇室の存在意義が歴史的なあり方から、ずいぶんと方向的に別なものに改変されているという疑いが晴れません。

 宮内庁のHPはいみじくも「皇室のご活動」「両陛下のご活動」などと表現し、URLにはactivityと表記されていますが、「ご活動」なさることが125代続いてきた日本の天皇ではないはずです。

 けれども、まさに皇室外交を展開する当事者である外務省を出身母体とする渡邉前侍従長は、「皇室は国民との関係で成り立つものです。天皇皇后両陛下を中心に、何人かの皇族の方が、両陛下をお助けする形で手分けして国民との接点を持たれ、国民のために働いてもらう必要があります。そうでなければ、皇室が国民とは遠く離れた存在となってしまうことが恐れられます」(渡邉『天皇家の執事』文庫版後書き)と述べています。

 国民のために働くこと、活動することが天皇・皇族のお務めで、それが天皇の制度を成り立たせている、というきわめて近代的な理解で、その前侍従長が積極的に提唱しているのが、皇室の御活動の維持を目的とする「女性宮家」創設論なのです。

 それは私なき祈りの存在である、125代続いてきた天皇の制度ではありません。公正かつ無私なる存在を、国内のみならず、国際社会の権力政治のただ中に、放り出すようなことがあってはなりません。
 
タグ:皇室外交
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