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御負担軽減のネックは官僚社会!?──減らない庁内人事異動者と赴任大使の拝謁 [女性宮家創設論]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2012年9月30日)からの転載です


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御負担軽減のネックは官僚社会!?
──減らない庁内人事異動者と赴任大使の拝謁
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 引き続き、いわゆる「女性宮家」創設問題を取り上げます。

 政府の「皇室制度」改革がいよいよ急ピッチを告げています。

 藤村官房長官は8月1日の記者会見で、2月に始まり、計6回、12人の意見を聞いた「皇室制度に関する有識者ヒアリング」に一区切りをつけ、論点整理に着手し、秋までにまとめる、と表明していました。
http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201208/01_a.html

 昨日のNHKの報道によれば、論点整理がまとまり、近く、公表されるとのことです。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120929/k10015386421000.html

 その内容は、皇族の減少に歯止めをかけるため、女性皇族のうち、天皇の子や孫の「内親王」が結婚後も本人の意思によって皇室にとどまれる、「女性宮家」を一代に限って創設する。そのうえで、(1)結婚した夫や子どもも皇族とする案と、(2)皇族としない案の2案が併記されているようです。

 他方、ヒアリングで多くの有識者が提案した、女性皇族が結婚で皇室を離れても「内親王」などの尊称を贈って活動を続けてもらうという考え方については、「法の下での平等」を定めた憲法に抵触するおそれがあり、実現は難しいと指摘し、代わりに国家公務員として皇室の活動に参加できる制度を新たに設ける案が示されているのだそうです。

 歴史に前例のない「女性宮家」がいよいよもって、現実化することになりそうです。どうしても必要だというのなら、理解できるのですが、私にはその目的がさっぱり分かりません。


▽1 御負担軽減のためにやるべきことはもっとある

 さて、前回は、

(1)「皇室の御活動」を維持するという目的のために、皇室典範を改正し、女性皇族が婚姻後も皇室にとどまるようにするという政府の発想には論理の飛躍があること、

(2)ここ数年、陛下の御公務御負担軽減に取り組んできた宮内庁が、その失敗について、何ら検証せず、一気に、女性皇族に「分担」を求めようとしていること、

(3)宮内庁のデータによると、「女性宮家」の提唱者である渡邉前侍従長の出身母体である外務省関連の御公務は、軽減策が採られていないように見えること、

 などを指摘しました。

 つまり、皇室典範を改正し、「女性宮家」を創設し、女性皇族に「陛下の御公務」を「分担」していただく前に、やるべきことはもっとあります。

 今回は、「拝謁」について検証します。園部内閣参与は「天皇陛下の大変な数の御公務の御負担をとにかく減らさないと……」とヒアリングでたびたび述べています。宮内庁の御負担軽減策は「拝謁」の多さがひとつの契機でした。
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/koho/kohyo/gokomu-h21-0129.html


▽2 庁内人事異動者の拝謁がダントツ

 宮内庁が公表している「陛下のご日程」から「拝謁」だけを抽出してみます。

 まず御負担軽減策が採られる前の平成19年です。

(1)人事異動者の拝謁(宮殿・御所) 22件
(2)宮内庁新規採用職員(宮殿) 1件
(3)新任皇宮護衛官(宮殿) 1件
(4)陵墓監区事務所副所長(宮殿) 1件
(5)宮内庁永年勤続表彰者(宮殿) 1件
(6)皇宮警察本部長表彰の永年勤続功労者(宮殿) 1件
(7)外国ご訪問につき随員等(宮殿) 2件
(8)皇太子殿下モンゴルご訪問首席随員(宮殿) 1件

 以上は、宮内庁関係の拝謁です。人事に関連する拝謁がけっこう多いことが分かります。具体的に見ると、4月2日には宮殿で1件、御所で1件と同日に拝謁が重なっています。7月2日、10月2日も同様です。

(9)赴任大使夫妻の拝謁(宮殿) 13件

 件数で人事異動者に次いで多いのが赴任大使の拝謁です。

(10)衆議院・参議院永年在職表彰議員(宮殿) 1件
(11)参議院正副議長(新任につき)(宮殿) 1件
(12)参議院副議長(宮殿) 1件
(13)衆議院・参議院役員等(宮殿) 1件
(14)全国地方裁判所長・家庭裁判所長等(宮殿) 1件

(13)までは議会関連の拝謁です。

(15)全国検事長及び検事正会同に参加する検事正等(宮殿) 1件
(16)全国警察本部長会議に参加する全国警察本部長等(宮殿) 1件
(17)自衛隊高級幹部会同に参加する統合幕僚長等(宮殿) 1件

 以上は全国会議参加者の拝謁です。

(18)春秋の勲章親授式・拝謁(宮殿) 2件
(19)春秋の勲章受章者(宮殿) 12件
(20)春秋の褒章受章者(宮殿) 2件

 以上は、宮内庁が「春・秋の叙勲に伴っては,合わせて50回以上の勲章等受章者の拝謁が,春・秋,それぞれ7日間あるいは8日間にわたって連日行われます。拝謁等については,年間の拝謁の3分の2を占める春・秋の叙勲に伴う拝謁を中心に,拝謁手順の見直し等を通じて拝謁の回数・日程を縮減するなどして,陛下の御負担の軽減を図ってまいりたいと考えております」と御負担軽減のターゲットにした叙勲関連の拝謁です。

 たしかに連日、拝謁が続きます。

(21)総務大臣表彰の地方公共団体税務職員(宮殿) 1件
(22)財務大臣表彰の申告納税制度普及発展尽力者(宮殿) 1件
(23)法務大臣及び財団法人矯正協会会長表彰の法務省矯正職員代表(宮殿) 1件
(24)農林水産祭天皇盃受賞者拝謁、業績展示等ご覧(宮殿) 1件
(25)厚生労働大臣表彰の第59回保健文化賞受賞者(宮殿) 1件
(26)厚生労働大臣表彰の身体障害者又は知的障害者の自立更生者,更生援護功労者及び社会参加促進功労者並びに第16回デフリンピック冬季大会等の成績優秀者(宮殿) 1件
(27)文部科学大臣表彰の優良公民館代表者(宮殿) 1件
(28)文部科学大臣表彰の教育者表彰被表彰者(宮殿) 1件
(29)警察庁長官表彰の全国優秀警察職員(宮殿) 1件
(30)日本郵政公社総裁表彰の郵政事業優績者等(宮殿) 1件

 以上は、表彰者たちの年1回の拝謁です。これらを削減するとすれば、皇太子殿下に移譲するというような思い切った発想を採るほかはないでしょう。

(31)警察大学校警部任用科学生(宮殿) 3件
(32)神宮及び勅祭社宮司等(宮殿) 1件
(33)新旧神宮大宮司(宮殿) 1件

 以上が19年の拝謁すべてです。これらがどのように変わったのか?


▽3 逆に増えた赴任大使の拝謁

 22年のデータのめぼしいところだけ、比較してみます。

(1)人事異動者(御所・宮殿) 15件

 19年は22件でしたから、かなり減りました。けれども、3月31日は宮殿と御所でそれぞれ行われ、翌4月1日にも同じく御所と宮殿で拝謁が繰り返されています。8月には3日、11日、20日、31日と4回行われました。

 まとめて行えない理由があるのでしょうか?

(9)赴任大使夫妻(宮殿) 14件

 19年は13件でしたから、増えています。以前から5カ国までをグループにして行われているようですが、1月は18日、21日と2日おきの日程が組まれ、8月30日から9月3日まで5日間連続して拝謁が行われています。10月も1日、4日と2日おきの日程です。

 月ごとにまとめられたら、6件に収まるのですが、そのようにはできないのでしょうか? どうしても女性皇族の手を借りなければならないのでしょうか? 私ははなはだ疑問です。

(19)(20)春秋の勲章受章者の拝謁・お礼言上(宮殿) 12件

 19年は勲章受章者と褒賞受賞者が別々に行われ、合わせて14件でしたから、2件減ったことになります。というより、春秋それぞれ6回行われる勲章受章者の拝謁のうち、6回目の拝謁に褒賞受賞者を参加させることにしたということでしょう。

 宮内庁は叙勲に伴う拝謁の多さをとくに気にしていたはずですが、有効な改善策を見出せなかったということです。

 叙勲は省庁がせめぎ合う場とも聞きますが、内部の人事異動者の拝謁件数を減らせない宮内庁といい、赴任大使の拝謁を減らすどころか増やしてしまった、「女性宮家」提唱者である渡邉前侍従長の出身母体である外務省といい、御公務御負担軽減の最大のネックは官僚社会ということになりませんか?

 だとすると、「陛下の御公務」=「皇室の御活動」を維持するためと称して、皇室典範を改正し、女性皇族に皇室にとどまっていただき、御公務を「分担」していだくという発想こそがまったく筋違いではないでしょうか?

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