官僚システムに組み込まれた叙勲者の「拝謁」──御負担軽減に立ちはだかる省庁の壁 [ご負担軽減]
以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2012年10月21日)からの転載です
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官僚システムに組み込まれた叙勲者の「拝謁」
──御負担軽減に立ちはだかる省庁の壁
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内閣官房が皇室制度有識者ヒアリングの「論点整理」に関する意見を募集しています。字数は2000字。受付締切は12月10日です。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060121009&Mode=0
意見を提出してはいかがですか?
さて、前々回、陛下の「拝謁」について書きました。
今回の皇室制度改革は、少なくとも今年2月の段階では、「陛下の御負担軽減」が最大の目的とされていました。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/koushitsu/yushikisha.html
「御負担」といえば、平成21年に始まる宮内庁の御負担軽減策では、「まず,宮中での儀式や行事では,両陛下には,各分野で功績があった人を中心に,拝謁・お茶等の形で,年間を通じて国内外の数多くの方々とお会いになっておられますが,その回数は,年間約100回に及んでおります」と、「拝謁」の多さがいちばん最初に指摘されていました。
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/koho/kohyo/gokomu-h21-0129.html
とくに叙勲に伴う「拝謁」が多いことが宮内庁の悩みでした。
「中でも,春・秋の叙勲に伴っては,合わせて50回以上の勲章等受章者の拝謁が,春・秋,それぞれ7日間あるいは8日間にわたって連日行われます。拝謁等については,年間の拝謁の3分の2を占める春・秋の叙勲に伴う拝謁を中心に,拝謁手順の見直し等を通じて拝謁の回数・日程を縮減するなどして,陛下の御負担の軽減を図ってまいりたいと考えております」
けれども、軽減策の実施にもかかわらず、改善されませんでした。その背景には官僚社会のカベがあるという指摘をしましたが、今回は、もう少しくわしく見てみたいと思います。
▽1 のべ7日間つづく「拝謁」
御負担軽減策が採られる以前の19年は、以下のように「拝謁」が行われたと宮内庁のHPに掲載されています。
まず春の叙勲です。5月8日火曜日から土日をはさんで翌週の16日水曜まで、延べ7日間、「拝謁」が続いています。
http://www.kunaicho.go.jp/activity/gonittei/01/h19/gonittei-1-2007-4.html
5月8日(火)
天皇陛下 平成19年春の勲章親授式・拝謁(宮殿)
天皇陛下 拝謁(平成19年春の勲章受章者)(宮殿)
5月9日(水)
天皇陛下 拝謁(平成19年春の勲章受章者)(宮殿)
5月10日(木)
天皇陛下 拝謁(平成19年春の勲章受章者)(宮殿)
5月11日(金)
天皇陛下 拝謁(平成19年春の勲章受章者)(宮殿)
5月14日(月)
天皇陛下 拝謁(平成19年春の勲章受章者)(宮殿)
5月15日(火)
天皇陛下 拝謁(平成19年春の勲章受章者)(宮殿)
5月16日(水)
天皇陛下 拝謁(平成19年春の褒章受章者)(宮殿)
秋の叙勲は、11月6日火曜日から始まり、間に10日土曜から13日火曜までの滋賀県行幸をはさんで、14日水曜に再開され、16日金曜まで続きました。
http://www.kunaicho.go.jp/activity/gonittei/01/h19/gonittei-1-2007-10.html
11月6日(火)
天皇陛下 平成19年秋の勲章親授式・拝謁(宮殿)
天皇陛下 拝謁(平成19年秋の勲章受章者)(宮殿)
11月7日(水)
天皇陛下 拝謁(平成19年秋の勲章受章者)(宮殿)
11月8日(木)
天皇陛下 拝謁(平成19年秋の勲章受章者)(宮殿)
11月9日(金)
天皇陛下 拝謁(平成19年秋の勲章受章者)(宮殿)
11月14日(水)
天皇陛下 拝謁(平成19年秋の勲章受章者)(宮殿)
11月15日(木)
天皇陛下 拝謁(平成19年秋の勲章受章者)(宮殿)
11月16日(金)
天皇陛下 拝謁(平成19年秋の褒章受章者)(宮殿)
▽2 1日だけ減る
軽減策実施後の22年にはどう変わったかというと、春の場合は、2件減りました。6回行われていた「勲章受章者の拝謁」のうち、6回目の「拝謁」に褒賞受賞者を参加させたからです。その結果、延べ日数は7日間から6日間に減りました。
http://www.kunaicho.go.jp/activity/gonittei/01/h22/gonittei-1-2010-2.html
5月7日(金)
天皇陛下 平成22年春の勲章親授式・拝謁・お礼言上(宮殿)
天皇陛下 拝謁・お礼言上(平成22年春の勲章受章者)(宮殿)
5月10日(月)
天皇陛下 拝謁・お礼言上(平成22年春の勲章受章者)(宮殿)
5月11日(火)
天皇陛下 拝謁・お礼言上(平成22年春の勲章受章者)(宮殿)
5月12日(水)
天皇陛下 拝謁・お礼言上(平成22年春の勲章受章者)(宮殿)
5月13日(木)
天皇陛下 拝謁・お礼言上(平成22年春の勲章受章者)(宮殿)
5月14日(金)
天皇陛下 拝謁・お礼言上(平成22年春の勲章受章者及び褒章受章者)(宮殿)
秋は、褒賞受賞者の「拝謁」が5回目と6回目に分散されました。
http://www.kunaicho.go.jp/activity/gonittei/01/h22/gonittei-1-2010-4.html
11月5日(金)
天皇陛下 平成22年秋の勲章親授式・拝謁・お礼言上(宮殿)
天皇陛下 拝謁・お礼言上(平成22年秋の勲章受章者)(宮殿)
11月8日(月)
天皇陛下 拝謁・お礼言上(平成22年秋の勲章受章者)(宮殿)
11月9日(火)
天皇陛下 拝謁・お礼言上(平成22年秋の勲章受章者)(宮殿)
11月10日(水)
天皇陛下 拝謁・お礼言上(平成22年秋の勲章受章者)(宮殿)
11月11日(木)
天皇陛下 拝謁・お礼言上(平成22年秋の勲章受章者及び褒章受章者)(宮殿)
11月12日(金)
天皇陛下 拝謁・お礼言上(平成22年秋の勲章受章者及び褒章受章者)(宮殿)
▽3 省庁ごとに設定される「拝謁」
しかし、なぜ1日しか減らせないのでしょうか?
というわけで、叙勲について、調べてみました。
内閣府賞勲局のHPには、叙勲に関する基本的な情報が掲載されています。
http://www8.cao.go.jp/shokun/index.html
選考については、各省庁から推薦を受け、内閣府が審査し、閣議で決定されるという一般的なことが書いてありますが、大薗友和『勲章の内幕』によると、そんなものではなく、企業、業界、所轄官庁を挙げてすさまじい「勲章取りゲーム」が展開されるとあります。
叙勲者の6、7割は官僚出身者、まさに「官高民低」の世界で、驚いたことに、省庁ごとに人数の割り当てがあるのだそうです。もっとも多いのが教育関係者を抱える文科省で、1500人といわれます。
となると、宮内庁は御負担軽減の有効な改善策を見出せなかった最大の障害は官僚社会ではなかったか、と想像されます。なにしろ叙勲者の選考から伝達・拝謁まで、官僚システムに完全に組み込まれているわけですから。
拝謁は実際、どのように行われるのでしょう? 何冊か、資料を読みあさったところ、日本叙勲者顕彰協会が発行する『勲章・褒賞─新栄典制度事典』にそれらしいことが書いてあるのを見出しました。
大勲位菊花章、桐花大綬賞、旭日大綬賞、瑞宝大綬賞は陛下が親授なさいます。旭日重光章、瑞宝重光章は宮中で首相から伝達されたあと「拝謁」があります。前者は午前、後者は同日、午後に行われるようです。
その他の中綬賞などの「拝謁」は翌日以降で、所管大臣からの伝達後、中央省庁ごとに設定された「拝謁」の日程に従い、各省庁に集合し、バスで皇居宮殿に向かい、代表者がお礼を言上し、陛下のお言葉を賜るという流れになっています。
どこまでも官僚社会の枠組みの中で、省庁ごとに行われています。
叙勲者の数は春秋とも4000人を超えます。配偶者同伴なら拝謁者の数は2倍に増えます。省庁のカベを破らなければ、「回数・日程の縮減」は困難です。
しかし困難だからといって、皇室の歴史と伝統にない「女性宮家」を創設すべきだという結論は、本末転倒です。
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