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「皇室制度」改革の本質は官僚たちの延命策?──「皇室の御活動」維持が本当の目的なのか [女性宮家]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2012年11月12日)からの転載です


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「皇室制度」改革の本質は官僚たちの延命策?
──「皇室の御活動」維持が本当の目的なのか
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 先日、大手週刊誌の記者と名乗る人から拙宅に電話がかかってきました。若い皇族の進学問題について教えてほしいというのです。「なぜ私に?」「学校関係者ですよね」。私が何者かも調べずにいるようでした。

 あげくに、こう質問するのです。「どんなことを書いているんですか?」。相手が取り組んでいるテーマも理解しない突撃取材です。ネットで調べれば、簡単に分かるのに。

 駆け出しのころ、私もずいぶんと失敗を重ねたものです。そのころを思い出し、苦笑しつつ、それにしても、なぜいま皇族の進学問題なのか、と首をひねりました。

 私には、目下のところ、政府が進める「皇室制度」改革、いわゆる「女性宮家」創設問題以上のテーマが見当たらないからです。


▽1 なぜ「皇室制度」と銘打たれたのか

 政府が「皇室制度」改革を進める目的は、「皇室の御活動」の維持でした。

 今年2月、有識者ヒアリングを前にして、政府は、実施の趣旨について、こう説明していました。

「現行の皇室典範の規定では、女性の皇族が皇族以外の方と婚姻された時は皇族の身分を離れることとなっていることから、今後、皇室の御活動をどのように安定的に維持し、天皇皇后両陛下の御負担をどう軽減していくかが緊急性の高い課題となっている」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/koushitsu/yushikisha.html

 以前も申し上げましたように、きわめて論理性に欠けた文章です。なぜなのか? そこにポイントがありそうです。

 政府の説明では、女性皇族の婚姻後の身分問題を検討する目的は、「皇室の御活動」の安定的維持と、天皇皇后両陛下の「御負担の軽減」、の2つでした。

 キーワードは「皇室の御活動」で、より端的にいえば、「天皇陛下の御公務」であり、「天皇皇后両陛下の御負担軽減」のため、御公務を女性皇族にも「御分担」いただくというのが、政府が考える最大の目的である、と園部逸夫内閣参与は繰り返し説明しました。

「皇室の御活動」に関するヒアリングだとすれば、そのように命名すればいいものを、なぜ「皇室制度」と銘打たなければならないのか、不思議です。

 そして、6回のヒアリングを踏まえた「論点整理」で、「象徴天皇制度の下で、皇族数の減少にも一定の歯止めをかけ、皇室の御活動の維持を確かなものとするためには、女性皇族が一般男性と婚姻後も皇族の身分を保持しうることとする制度改正について検討を進めるべきであると考える」として、皇室典範改正による「女性宮家」創設がいよいよ打ち出されたのです。


▽2 「皇室の御活動」は制度ではない

 つくづくおかしいと思うのは、「皇室の御活動」というのは、天皇の国事行為は別として、制度的なものではないからです。

 宮内庁は、春秋の叙勲に伴う拝謁や内外大使らのご引見の多さを気にしていますが、憲法が定める国事行為は、栄典の授与、外国大使・公使の接受であり、拝謁やご引見ではありません。「国事行為のみを行う」とさえ明言されています。

 ましてや皇族方の場合、「論点整理」に添付された参考資料にはそれぞれの「御活動」が詳しく説明され、「総裁職など」の肩書きが列記されていますが、これらは制度上の御公務としてお務めなのではありません。

 それなのに、「皇室制度有識者ヒアリング」と銘打ったところに、すでに作為がある、と疑わざるを得ないのです。

 政府は「皇室の御活動」維持のため、そして「陛下の御負担」軽減のために、皇室典範改正が必要だというのですが、皇室典範は主として皇位継承に関する法律なのであって、「皇室の御活動」に関する法律ではありません。

 政府が改正をもくろむ、第12条「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」を含む、皇室典範の第2章は、「皇族」に関する取り決めであって、皇位継承問題と密接に結びついています。

 皇族とは、皇統に連なり、皇位継承資格を有する血族の集まりだからです。であればこそ、皇室典範に定めがあるのです。


▽3 皇室典範改正は「皇位継承」問題そのもの

 ところが、「女性宮家」創設を提唱する政府関係者はそのようには説明していません。

「女性宮家」創設を政府関係者として最初に提唱し、以後、たびたび公言してきたのは渡邉允前侍従長で、平成21年11月11日づけ「日本経済新聞」の連載「平成の天皇 即位20年の姿(5) 皇統の重み 「女系」巡り割れる議論」には次のような一節があります。

「宮内庁には『このままでは宮家がゼロになる』との危機感から女性皇族を残すため女性宮家設立を望む声が強い。しかし、『女系天皇への道筋』として反発を招くとの意見もある。渡邉允前侍従長は『皇統論議は将来の世代に委ね、今は論議しないという前提で女性宮家設立に合意できないものか。女系ありきではなく、様々な可能性が残る』と話す」

 この記事こそ、私が知るところ、一般紙が「女性宮家」創設を報道した最初です。提唱者が渡邉前侍従長であることと「皇統論議」棚上げが当初からいわれていたことが分かります。

 渡邉前侍従長は著書『天皇家の執事』の文庫版後書きでも、「皇位継承の問題とは切り離して考えるべきで、皇室典範の皇位継承に関する規定は現状のままにしておけばよいのです」と棚上げを勧めています。

 その後、スタートした有識者ヒアリングも、「皇位継承問題とは切り離して行う」(「ヒアリングを行う趣旨」)と念押しされました。

 しかし、「切り離し」などできるはずもないのです。

 繰り返しになりますが、皇族とは本来、皇統に連なり、皇位継承の資格を持つ血族の集まりを意味し、それについて規定するのが皇室典範第2章であって、第2章を改正することは皇位継承問題そのものに関わります。

 そんなことは基本中の基本であって、渡邉前侍従長や政府関係者が理解できないはずはないでしょう。だから、おかしいのです。


▽4 「御負担軽減」に失敗した宮内庁

 視点を変えて、皇室典範第12条を改正したあと、いったい何が起きるのか、を考えてみましょう。

 政府が進める「皇室制度」改革が目的と掲げる、(1)「皇室の御活動」の維持、(2)天皇陛下の御負担軽減は、はたして達成されるでしょうか?

 私は半信半疑です。

 渡邉前侍従長は、「女性宮家」創設について、こう訴えています。

「皇室は国民との関係で成り立つものです。天皇皇后両陛下を中心に、何人かの皇族の方が、両陛下をお助けする形で手分けして国民との接点を持たれ、国民のために働いてもらう必要があります。そうでなければ、皇室が国民とは遠く離れた存在となってしまうことが恐れられます。

 そこで、たとえば、内親王様が結婚されても、新しい宮家を立てて皇室に残られることが可能になるように、皇室典範の手直しをする必要があると思います」(前掲著書の後書き)

 御公務の「御分担」なるものが可能ならば、これまでも実行されてきたはずです。ところが、たとえば、いまがまさにその最中ですが、文化の日以後、ほぼ1週間にわたってつづく、叙勲に伴う拝謁が皇太子殿下と「御分担」できたのか、といえば、否です。

 内外大使のご引見などは、陛下の御負担軽減策が採られるようになった平成21年以降も、それ以前の方法がなんら変わらないように見えます。

 そもそも鳴り物入りで行われた宮内庁による御負担軽減策が失敗したのです。失敗を認めず、原因が何かを追求することもなく、今度は「皇室制度」改革を言い出したのでした。

 だとすれば、12条を改正したとして、どうして「御分担」できるでしょう?


▽5 官僚たちも不要になる

 政府は「女性宮家」創設の目的を「皇室の御活動」の維持と説明していますが、12条改正で維持されるのは、宮内庁の官僚組織ではないでしょうか?

 以前、当メルマガで取り上げた「文藝春秋」24年新年特別号は、「民主党政権下で平成が終わる日」を特集し、「皇太子不在の時代」「女性宮家創出」などについて「問題提起」しました。

 筆者の大島真生産経新聞記者が問いかけたことのひとつは、皇太子殿下が即位されると、東宮は不在となり、東宮職は廃止される。東宮職がなくなれば、むろん官僚たちも不要になる、ということでした。

 官僚たちにとっては危機以外の何ものでもありません。

 昭和40年代以降、宮内庁では職員の世代交代がおき、幹部職員はほかの省庁からの横滑り組が占めるようになったといいます。渡邉前侍従長もその一人でしょうが、本省の本流からはずれた官僚たちに、第二の人生のステージを提供してきたのが宮内庁でした。

 皇室の規模が縮小されれば、官僚たちは安閑としていられません。職場が失われることへの恐怖が「皇室制度」改革の本質ではないか、とも疑われます。
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