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海外メディアの「靖国」批判──「侵略戦争」を「正当化」? [靖国問題]

以下は斎藤吉久メールマガジン(2013年4月28日)からの転載です


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 海外メディアの「靖国」批判──「侵略戦争」を「正当化」?
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 一昨日の「赤旗」(電子版)に「靖国参拝 『不要な国粋主義』 NYタイムズ紙が社説」という記事が載りました〈http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-26/2013042601_07_1.html〉。

 24日付ニューヨーク・タイムズの記事を取り上げ、アメリカの有力紙も、安倍内閣の閣僚ら168人の国会議員による靖国神社参拝を批判しているではないか、と虎の威を借りるかのように、あらためて批判しているわけです。

「赤旗」はこれまでも海外の靖国批判を取り上げていますが、偏見や誤解に基づく海外の報道なら、まともに取り扱う方が無謀ではないでしょうか?

 というわけで、靖国批判が吹き荒れていた平成17年7月に、宗教専門紙に掲載された拙文を転載します。同紙の編集方針で、本文は歴史的仮名遣いになっています。一部に加筆修正があります。



 日本共産党の靖国批判が加熱してゐる。

 機関紙「赤旗」で遊就館の展示などを「戦争を賛美」「反省のかけらもない」と攻撃する一方で、「一部の日本のために無罪判決を求める戦争神社」(六月二十二日付ニューヨーク・タイムズ=NYT)などと伝へる米国の報道を取り上げ、「アジアにとどまらず米国でも問題にされてゐる」と、まるで鬼の首を取ったかのやうな激しい報道ぶりだ。

 けれども、「赤旗」も外国メディアも、靖國神社に対する無理解をさらけ出したに過ぎないのではないか。


▽ 浅薄かつ一方的

 米国を代表するNYTのこの記事は大西哲光・東京支局長が執筆したもので、右翼の街宣車が集合してゐる朝の風景から書きおこし、「靖國神社は軍国主義的な過去を修正する努力の象徴的中心である」「神聖天皇中心の国家主義的な国家神道創設に日本が駆り立てられたとき、靖國神社は創立された」「米国は無関心な第三者でゐられない。真珠湾攻撃を命令した日本人を神格化してゐるからだ」などと書きつづってゐる。

 しかし、そもそも神社と右翼団体との直接的関係はない。近代日本が終始一貫、「国家神道」に肩入れし、国民の生活の隅々にまで浸透した、といふやうなマルクス主義者が喜びさうな「国家神道」理解は今日、学問的に否定されてゐる。

 靖國神社を「国家神道の神社」と見ることも浅薄であり、むしろ神道人たちが「国家神道」と戦った歴史さへ知られてゐる。また「靖国の神」はGodではない。

 何よりもNYTの記事は、靖國神社が国に一命を捧げた戦歿者のための慰霊の祭祀を日々、厳修する祭場である、といふもっとも基本的な神社の本姿を伝へてゐない。

 執筆者は、「『昭和の日』は国家主義が高まり、制定された」「サマワに展開する自衛隊の活動は地元当局者には期待外れと」と「偏向」報道してきた人物ともいふ。

 もう一本、「赤旗」が推奨するのは、翌日付「USAトゥデー」のポール・ワイズマン記者の「東京の神社、アジアの怒りの的」である。

 米国最大の新聞の記事は、カップルが外苑を散歩する穏やかな社頭風景から描き始め、正式参拝のルポも交へてゐる。NYTの記事と比較すればはるかに客観的だが、一方で「靖國神社は密かにA級戦犯を合祀した」「神社の管理者は明らかに他者に与へた苦しみよりも日本の苦しみに敏感だ」と批判してゐる。

 けれども、いはゆるA級戦犯(昭和殉難者)の合祀は秘密でも何でもないし、同社が戦歿者の慰霊を第一義とするのは当然のことである。そもそもこの記事は、中国や韓国などの靖国批判の背後に何があるのか、を十分に掘り下げてゐない。

 靖国問題の原因が靖國神社および日本側にある、との見方は一方的であり、米国占領軍の偏見そのものといへる。


▽ 「赤旗」の的はづれ

 にもかかはらず、「赤旗」は「極右集団と靖国神社が、戦争の見方でまったく同じ立場、ネオ・ナチ的立場に立ってゐることに注目した」「密かに合祀したことが、戦中の日本の残虐行為をもみ消さうとする教科書と相まって、『アジア中の神経を逆なでしてゐる』と指摘した」と持ち上げる。

「赤旗」はこれらの記事が「靖國神社の戦争観とそれへの首相の態度といふ問題の核心に迫ってゐる」と主張するのだが、まったく的はづれであらう。

 靖國神社はかけがへのない命を国に捧げた戦歿者にひたすら慰霊の誠を捧げてきた。特定の歴史観や戦争観に基づくわけではない。遊就館の展示内容から「侵略戦争を正当化」などと決めつけるのは「濡れ衣」といへる。
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