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韓国の歪んだナショナリズム──「反日」日本勢力に「支配」される「反日」 [日韓関係]

以下は斎藤吉久メールマガジンからの転載です


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韓国の歪んだナショナリズム
──「反日」日本勢力に「支配」される「反日」
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 韓国の朴槿恵大統領が訪問先のアメリカで、「正しい歴史批判をもたなければならない」と日本批判を強めています。

 前回のメルマガでお伝えしたように、韓国の教科書制度が「国定教科書」に変わったのは、朴槿恵大統領の父で、日本の陸軍士官学校に学んだ経歴を持つ、朴正煕大統領(1917─1979)による「維新体制」の時代でした。

 父・朴正煕時代に「国史」教育が強調されたのは、今日のような日本批判が目的ではありません。なぜ韓国は植民地化されたのか、民族内部の弱点を直視し、克服しようという狙いがありました。

 ところが今日、長女の朴槿恵大統領はもっぱら日本批判に終始しています。これでは韓国は変われません。なぜ朴槿恵大統領は父の姿勢に学ぼうとしないのでしょうか?

 というわけで、平成13年7月に宗教専門紙に掲載された拙文を転載します。テーマは朴正煕大統領亡き後、歪んでしまった韓国のナショナリズムについて、です。なお、一部に加筆修正があります。

 それでは本文です。



 ある意味では、じつに象徴的なことが起きた。

 先月上旬、「新しい歴史教科書をつくる会」主導の中学校歴史教科書に反発する市民団体のメンバー二百数十人が、集会のあと、この教科書を検定合格させた文部科学省に抗議しようと、東京・虎ノ門の庁舎を「人間の鎖」でぐるりと取り囲んだのである。

 韓国からはるばる来日した元「従軍慰安婦」も参加する、このイベントを呼びかけたのは、元朝日新聞のジャーナリストやプロテスタント系のキリスト者、いわゆる進歩的文化人などであった。

「赤旗」なども記事に取り上げた、これらの人たちの行動は、近隣諸国との抜き差しならない外交問題にまで発展した、今回の教科書摩擦の政治的な構図をあぶり出し、韓国の民族主義者と日本の進歩派とが政治的に連帯する「呉越同舟」の性格を浮き彫りにしたのである。


◇日本の進歩派と韓国の民族派
◇思想・論理不在の「呉越同舟」

 それぞれ民族が異なる民族主義者同士というのも同居しがたいだろうけれども、民族派と進歩派という取り合わせも本来的には並び立たないはずである。ところが、少なくとも日韓教科書摩擦に関しては、日韓の「反日」的な国際連帯が成立している。

 今回の騒動は、反権力、反政府的な言動を繰り返してきた日本の左翼勢力が、「新しい歴史教科書をつくる会」攻撃という政治目的のために、韓国の民族主義者をたき付けるという実態が指摘されている。

 検定中で本来は非公開はずの「白表紙本」段階の教科書を密かに入手し、コピーして販売するなど、日本国内ばかりか海外にまで、極秘情報を意図的に流し、煽り立てたというのである。

 日本の左翼進歩派によるルール無用のリークや一部マスコミを含むキャンペーンが韓国内の「反日」世論に火を付け、その結果、検定合格以前の非公開の段階から韓国政府までが過剰反応し、日韓関係を危うくさせているのである。

 たとえば「日の丸・君が代」法制化反対にも中心的役割を果たした、日本のある教育学者などは、「つくる会」の教科書を、「神武天皇が史実であったかのように紹介している」「日本の歴史を正当化しようとする面が目立つ」と批判している。

 つまり、神話教育を否定し、自民族中心・自国正当化の歴史記述を排除すべきだという考えで、それならそれで「檀君神話」から説き起こし、民族の誇りを重んじ、祖先たちの功績を称えるのに終始する韓国国定教科書をも同時に批判すべきだが、そうした声は聞こえてこない。

 日本の進歩派にとっては批判の対象はあくまで日本の民族派であって、そのため韓国の民族主義を政治的に利用しているのである。なかには、韓国政府が日本の教科書の「再修正要求」を突きつけたことについて、礼状を韓国紙に寄稿した東大名誉教授さえいるらしい。

 これに対して、韓国の民族主義者もまた、日本の左翼文化人にしきりに政治的エールを送っている。

 教科書問題を批判的に伝える韓国紙は、しばしば「ノーベル文学賞受賞者」や「東大名誉教授」という日本の「権威」にすがり、驚いたことに、連帯しうる「日本の良心的勢力」として、日教組や朝日新聞などの名前まで挙げている。

 韓国の民族主義者たちは、みずから民族の自立性と主体性に基づくのではなく、「反日」的日本人に煽られ、情報提供を受けて、「反日」的言動に走っている。

 既述した「つくる会」の教科書は、文科省の検定で137カ所の修正を受け、「ごく普通の教科書」になったとされている。

 たとえば、「白表紙本」の段階では、韓国紙などからも批判されたように、「韓国併合は、国際関係の原則にのっとり、合法的に行われた」という記述があったが、「併合過程の実態について誤解を招くおそれがある」という検定官の指摘を受けて削除され、修正されている。

 韓国問題の専門家によると、韓国政府はこの日本政府の「努力」を評価し、振り上げた拳を下ろすことも可能であったし、日本政府もそうした対応を期待したともいう。

 ところが、検定合格後も韓国政府は強硬姿勢を貫いた。

 その結果、国家主権に属するはずの他国の教科書編纂に介入するという前代未聞の過ちを犯し、3年前の日韓共同宣言のあとに「もはや過去のことが外交問題になることはない」と語った金大中大統領の発言を反故にしてしまったのである。

 その背景には、日本の進歩派から煽られて対日強硬論を展開する韓国のマスコミや世論、議会の存在がある。

 韓国の民族主義者は「日帝」といかに勇敢に戦ったかを強調する「抵抗史観」に立つ。だがいまや、日本の「反日」勢力に依存・従属して「反日」を叫んでいる。

 完全な矛盾といわざるを得ない。


◇朴政権以後、「国史」の変化
◇民族内の欠点克服を見失う

 じつはもっと恐るべき事実が指摘されている。

 以前、紹介したように、韓国の歴史教科書は、制度的には韓国の一流の歴史研究者や教育者によって編纂されているといわれる。1970年代、朴正煕大統領の時代、「維新体制」の理念を具体化する「国策科目」として「国史」の学習が強調され、「国定教科書」制度が導入されたのである。

 ところが朴政権後、大きな変化が現れた。学問的実証性より時代性、政治性が色濃く反映されるようになったのだ。そしてここにも日本が絡んでいることが、韓国問題の専門家から指摘されている(「現代コリア」5・6月号の特集記事)。

 たとえば「歴史歪曲」の典型とされ、「反日」キャンペーンの切り札となっている「慰安婦」だが、1980年代までは韓国の教科書に記述はなかったという。

 80年代後半になり、「女性までも侵略戦争の犠牲にされた」という記述が登場する。

 ある日本人が「自分は軍の命令で挺身隊員として韓国女性を連行し、慰安婦にした」と回想録に書き、慰安婦問題が一気に沸騰した直後であった。

 震源は日本であった。けっして学問研究の成果ではない。

 90年代半ばになると、「女性までもが挺身隊という名目で連行され、日本軍の慰安婦として犠牲になりもした」という記述が現れる。

 92年の宮沢首相訪韓の前後から慰安婦問題が大きく取り上げられるようになった影響と考えられている。

 ここにも日本が関与しているのである。しかも挺身隊と慰安婦とはまったく別のはずなのに、韓国では同じものと見なされている。

 まったく事実に反する虚構の歴史が、歴史学の名の下に政治的にでっち上げられ、韓国の子供たちに教えられているのである。

 この態度は朴政権時代とはまるで異なる。

 朴大統領の時代はむしろ、なぜ韓国が植民地化されたのか、なぜ独立後の近代国家建設が順調に進まなかったのか、という問題意識が強かった。韓国民族内部の弱さや欠点を直視し、克服しようという姿勢があった。

 ところが、その後の韓国の歴史教育では、植民地化の原因としてもっぱら「日帝の侵略」が指摘され、日本批判に軸足が大きく移ったという。

 そしていまや、内省どころか、日本の「反日」勢力に依拠して、日本批判を展開している。これは韓国の民族主義の歪み、後退というほかはない。


◇なぜに「過去」を否定するのか
◇「日本人」になりかけた韓国人

 韓国の歴史教科書は終始一貫、「反日」に貫かれている。まるで日本という存在がなければ、自画像が描けないかのようである。

 なぜそれほど日本にこだわるのか?

 韓国・朝鮮問題の専門家として知られる産経新聞ソウル支局長の黒田勝弘氏は、『韓国人の歴史観』のなかで、興味深い指摘をしている。

 韓国の「反日」は日本に支配されたことへの反発それ自体よりも、日本支配から脱するのに、自力では果たせなかったことへの鬱憤のせいではないか、と推理するのである。

 韓国人は酒の席でよく「日本と一度、戦争をして勝ってみたい」と冗談半分に言うらしい。インドやベトナム、インドネシアなどの国々は宗主国と戦い、勝利して独立を勝ち取ったが、韓国はそうではない。連合国には加われなかったし、東京裁判の原告席にも座れなかった。

 韓国の教科書は「抗日」のシンボルとしての「光復軍」について言及しているが、黒田氏に言わせれば、「光復軍」はアメリカ軍の指導下にあり、金日成の「人民解放軍」もソ連軍に組み入れられていたのであって、韓国・朝鮮独自の「独立戦争」は存在しなかった。

 そのうえで、黒田氏はさらに注目すべき事実を指摘する。韓国の歴史教科書では1940年代が「空白」に近い簡単な記述になっているというのだ。

 黒田氏によれば、戦争末期のこの時期こそ、日本に対する「抵抗」ではなく、「協力」がもっとも進み、当時の韓国人はほとんど日本人になりかけたのである。「慰安婦」を含めて、戦時体制に対する最大の協力者が韓国・朝鮮人であった。

 しかし、日本時代が突然、終わりを告げ、新しい国づくりのために、韓国は本当の「韓国人」を必要とするようになる。そこで韓国は困り果てる。日本人化した韓国人はいるが、本当の「韓国人」が見当たらない。

 韓国人を本当の韓国人に作り替えるためには、韓国は過去を全面否定し、日本を全否定する「反日教育」の断行に迫られた。戦前・戦中の日本支配への「協力」が切なるがゆえに、かえって戦後は「反日」が強調されることになった──と黒田氏は指摘している。

 韓国人の「反日」とは自分のなかの「対日協力」の記憶を消す作業だというのである。

 これは歴史の連続性を重視する日本人には異質の歴史感覚である。日本人はあの朝鮮総督府でさえ、朝鮮歴代王朝の始祖を祀る斎場や墳墓での伝統祭祀を厳修し、李舜臣を祀る祠廟をも公認したのである。

 しかし韓国人は現代という時点に立って、「過去」を否定しようとする。黒田氏によれば、韓国人は「過去」にこだわるように見えて、意外にもあるがままの「過去」を認めようとせず、「過去」を作り替えてしまう。

 翻って、日本にも「過去」を図式的に理解し、後知恵で断罪しようとする人たちがいる。教科書問題は「過去」重視ではなく、「過去」を軽視する日韓双方の勢力の連帯によって、ますます混迷を深めている。

タグ:日韓関係
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