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「ご意向」を操る大胆不敵な「宮内庁関係者」!? ──陛下の「生前退位」表明報道を考える [生前退位]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2016.7.12)からの転載です

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「ご意向」を操る大胆不敵な「宮内庁関係者」!?
──陛下の「生前退位」表明報道を考える
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 どう考えてもおかしい。女系継承容認論、「女性宮家」創設論がなりを潜めたいまなお、蠢き続ける何かがあるようです。


▽1 「生前退位」という用語はない

 発端はNHKのスクープでした。

 陛下が「生前退位」のご意向を宮内庁関係者に示されていることが分かった。数年内の譲位を望まれている。陛下ご自身がお気持ちを表明する方向で調整が進められている、と伝えられました。

 そもそも「生前退位」という皇室用語など聞きません。

 試しに国会図書館の検索エンジンで「生前退位」を調べると、3件の雑誌記事がヒットします。いずれもごく最近のもので、うち2件は2013年2月に、ローマ教皇ベネディクト16世の「生前退位」に関して、相前後して発表された記事です。

 そして、残る1件がもっとも古く、といっても、十数年前に書かれた「宮内庁『天皇生前退位』“計画”の背景」(「週刊現代」2005年5月21日号)でした。

 タイトルから見ると、すでにこのころ宮内庁内では「生前退位」計画が持ち上がっていたということでしょうか。とすると、なぜいま一気に議論が沸騰したのでしょう。

 興味深いことに、A.N.ウイルソンがベネディクト16世について書いた「Newsweek」の記事は、日本版では「生前退位」ですが、原文では単に「retire」のようです。なぜ「生前退位」と翻訳されなければならないのでしょう。

 ちなみに今回も海外メディアは「retire」と伝えているようです。それなら、なぜ日本のメディアは「譲位」「退位」と素直に表現しないのか。歴史上の「退位」とは別だととくに強調したい意図でもあるのでしょうか。


▽2 なぜリークなのか

 NHKニュースが意味するのは、「宮内庁関係者」が匿名を前提に、陛下の「ご意向」、および庁内の対応について、NHK記者にリークし、その結果、特ダネとして報道されたということでしょう。なぜリークなのでしょうか。

 知られているように、譲位は光格天皇が最後で、明治以後はありません。明治の皇室典範も現行の皇室典範も規定はありません。となると、当然、制度改革のための法改正が必要になります。天皇のご発意から法改正の議論が開始されるとすれば、前代未聞です。

 首相や宮内庁長官はコメントを差し控え、官房長官は「検討していない」と報道を否定しているのは、さもありなんです。といって、名指しされたはずの宮内庁は「スクープ」したメディアを批判し、抗議するわけでもありません。

 皇位継承という国家の最重要案件について、宮内庁トップが公式発表するのならまだしも、それどころか、匿名の「宮内庁関係者」が「ご意向」をメディアにもらすという手法が用いられたのは、法制度上の問題を自覚するからでしょうか。

 けれども、それはどう考えてもおかしいのではありませんか。

 後追いした大新聞は、「ご意向」が宮内庁関係者への取材で分かったと伝えていますから、「ご意向」をほかの媒体にももらし続ける「宮内庁関係者」は特定できるのでしょう。それなら、なぜみずから名乗り出て、説明しないのか。匿名の理由は何でしょうか。

 陛下に直接、確認できるはずもない「ご意向」は、改革派にとって切り札なのでしょう。情報の精度をどこまで把握しているのか、軽率な政治家は国民的議論が必要だなどと記者に答え、女系継承容認派の有識者もさっそく反応し、議論の本格化に向けて既成事実ばかりが積み重ねられています。


▽3 表に出ない関係者

 平成の皇室制度改革は、20年前に始まったといわれています。平成7年、自民党総裁選に立候補した小泉純一郎議員(のちの首相)が女性天皇容認を打ち出したのを受けて、翌年、鎌倉節宮内庁長官の指示で、皇位継承に関する基礎資料づくりが非公式に始まったといわれます。

 やがて水面下の動きは表面化していくことになりますが、その場合、メディアを選び、記者を選び、小出しに情報を漏らし、世論の動向を見極めながら、関係者は黒幕に徹して、「改革」を進めていったのです。

 私が知るかぎり、利用された最初のメディアは総合情報誌「選択」で、10年6月号に掲載された「『皇室典範』改定のすすめ──女帝や養子を可能にするために」は女帝容認を問題提起するとともに、「女性宮家」にも言及していました。

 というより、女系継承容認は「女性宮家」創設論と一体のものとして進められたのです。であればこそ、女系継承容認に踏み込んだ皇室典範有識者会議の報告書には「女性宮家」創設が内容的に含まれていたし、悠仁親王殿下ご誕生で女系継承容認論が一気に沈静化したあと、こんどは「女性宮家」創設論に姿を変え、復活したのです。

 先般の「女性宮家」創設論もリークで火を噴きました。23年11月、読売は「『女性宮家』の創設検討 宮内庁が首相に要請」と伝えました。

 世間では羽毛田長官が野田総理に要請したかのように受け止められましたが、記事はそのようには書いていません。長官本人も否定しています。実際に提案した「宮内庁関係者」はほかにいたのですが、ついに表舞台には現れませんでした。

 今回はどうでしょうか。


▽4 問われない当局の責任

 NHKの報道では、陛下が「ご意向」を示されたのは「5年ほど前」で、背景にあるのは陛下の「ご高齢」であって、「象徴としての務めを果たせるものが天皇の位にあるべきで、十分に務めが果たせなくなれば譲位すべきだ」というお考えを一貫して示されてきたと説明されています。

「ご高齢」という理由は理解できないわけではありません。実際、善意の国民はご高齢になった陛下のご健康を心配しています。

 しかし、そうだとすればなおのこと、まず「宮内庁関係者」にとって必要なことは、「ご意向」をリークして世論を煽ることではなくて、宮内庁自身のご公務ご負担策の失敗をみずから認め、原因を謙虚に見定めることではないでしょうか。

 いみじくも「5年ほど前」といえば、陛下の「ご高齢」「ご健康」を理由に、昭和天皇の先例に基づいて、宮内庁がご公務ご負担軽減策に踏み出したときですが、その結果、何が起きたでしょう。

 天皇第一のお務めとされる宮中祭祀ばかりが標的にされ、逆にご公務は増えたのではないですか。当時、宮内庁がもっとも気にかけていたのは拝謁の多さですが、のべ約一週間にわたって続く春秋の勲章受章者の拝謁のご負担はどれほど軽減されたでしょうか。

 宮内庁は失敗したのです。その責任を問わないまま、情報リークという手法が繰り返され、世論を誘導しようとしているのは、陛下の「ご意向」に沿うのでしょうか。


▽5 昭和天皇の苦悩

 NHKの解説は、「象徴」天皇制を定める現行憲法下にあって、護憲派の陛下が「象徴」としてのお務めを十分に果たせなくなることをいたくお気になさっているかのように読めますが、事実は違うと思います。

 第一に陛下は単純な護憲派ではありません。陛下は即位以来、皇室の伝統と憲法の規定の両方を「求め続ける」と仰せなのに、メディアは後者ばかりを伝え、護憲派の「象徴」に祭り上げてきたという経緯があります。

 今回の「ご意向」も、憲法に関連するご公務ではなくて、皇室の伝統である宮中祭祀のお務めを気にかけておられるのではないのでしょうか。

 思えば、昭和天皇も同様でした。まだご高齢というほどでもなかった昭和40年代に、入江相政侍従長の登場で、祭祀の簡略化が急速かつ大胆不敵に決行され、皇室第一の重儀とされる新嘗祭のお出ましが夕(よい)の儀のみで、暁の儀は御代拝となったとき、昭和天皇は神嘉殿からのお帰りのお車の中で、

「これなら何ともないから、急にも行くまいが、暁(の儀)をやってもいい」

 と仰せになったと『入江日記』(46年11月23日)に書かれています。入江は続けて、「ご満足でよかった」と述べていますが、逆でしょう。

 それどころか、その後、なおも祭祀簡略化を断行する入江に、昭和天皇は「退位」「譲位」を口にされたと入江自身が記録しています。

 今上陛下は昭和天皇の当時の苦悩が身にしみておられるのではないかと拝察します。今回の「退位」報道が正しいなら、陛下は昭和天皇と同様、平成の祭祀簡略化へのご不満を、数年来、表明し続けてこられたのではないかと推測されます。

 とすると、ご不満を逆手にとって、独善的な皇室制度改革に三度、火を付けようとする、よほど大胆きわまる知恵者がいるということでしょうか。まるで伏魔殿です。


▽6 メディアへのお願い

 さて、蛇足ながら、マスコミ関係者にお願いします。

 もともと皇位継承は皇家の家法であり、国民的議論には相応しくありません。宮務法は国務法とは別に定められるべきだと私は思いますが、議論の出発点であるご公務問題に関して、国民的議論が必要だと本気でお考えなら、むしろメディア主催のご公務にメスを入れていただけないでしょうか。

 先月、天皇陛下は皇后陛下とともにラグビーの国際試合を観戦されました。夜8時を回ってからのお出ましは、ご高齢の陛下に相応しいご公務とは思えませんが、親善試合の後援者は大手全国紙で、みずから首を絞めるような議論の余地はありません。

 天皇・皇族方がお出ましになるイベントを主催するメディアはこの一社に限りません。それどころか、新聞ビジネスのご公務利用は常態化し、その結果、ご負担はますます増えているように見えます。

 7年前、習近平・中国国家副主席の特例会見は「政治利用」との批判を浴びましたが、メディアの皇室利用は話題にもなりません。

 みずから身を削る見直しを提起することなくして国民的議論は始まらないと、少なくとも私は考えますが、スネに傷があることを十分に知る政府関係者は、であればこそメディアを利用するのでしょう。

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