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「生前退位」は陛下の「ご意向」ではなかった!? ──NHKではなく「週刊現代」のスクープだった [生前退位]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2016.7.24)からの転載です

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「生前退位」は陛下の「ご意向」ではなかった!?
──NHKではなく「週刊現代」のスクープだった
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 陛下の「生前退位」報道は、「ご意向」の真偽が確認されることもなく、リークした「宮内庁関係者」が表舞台に出ることもなく、どんどん独り歩きしています。

 とりわけ女系継承容認の改革派は意気軒昂で、まるで錦の御旗を得たかのようなハイテンションです。

 けれども、NHKのスクープ以前に「生前退位」を報道したメディアがあり、その内容が今回の「ご意向」報道とはまったく別物だったとしたら、話は完全に変わります。

 特ダネに逐一反応し、振り回されるのは考え物です。むしろその背後に何があるのかを冷静に考えるべきです。


▽1 「宮内庁関係者による」報道

 今月13日の夜7時のNHKニュースでは、

(1)陛下が「生前退位」の「ご意向」を宮内庁関係者に示されていることが分かった、

(2)陛下は数年内の譲位を望まれている、

(3)陛下ご自身が内外にお気持ちを表す方向で調整が進められている、

 と伝えられました。

 その背景には、

(4)「憲法上の象徴としての務めを十分に果たせる者が行為にあるべきだ」というお考えがあり、

(5)皇后陛下や皇太子殿下、秋篠宮殿下なども受け入れられている、

 とされています。

 また、

(6)陛下がこうした「ご意向」を示されたのは5年ほど前である

 とも伝えられました。

 しかし「宮内庁関係者による」報道はどこまで事実か、分かりません。匿名の「宮内庁関係者」が「ご意向」とされるものをNHKにリークしたというのが考えられる最低の事実です。陛下に直接、事実関係を確認できないのですから、それが皇室報道の限界です。


▽2 今年5月半ばに始まった

 後追いしたメディア報道で、面白いのは毎日新聞です。

 翌日の報道では、陛下の「ご意向」を受けて、宮内庁の幹部5人が今年5月半ばから会合を重ね、検討が本格化させてきたと伝えています。

 5人というのは、風岡典之長官ら宮内庁トップ2人と侍従職トップの2人、そして皇室制度に詳しいOBで、「4+1」会合と呼ばれ、早朝に会合を開き、杉田和博内閣官房副長官とすり合わせし、両陛下には河相周夫侍従長らが報告してきたとされています。

 陛下は7年前から皇太子殿下、秋篠宮殿下と3者会談を設けられていて、それを受けて、「4+1」会合が開かれることもあり、皇室典範改正、元号、退位後の呼称などが検討されたとされています。

 きわめて具体的ですが、なぜ「今年5月」なのかは説明されていません。


▽3 「5年ほど前」ではなく「7年前」

 その謎に迫っているのが「週刊新潮」です。

 同誌は、「ご意向」が示されたのは、NHKニュースが伝えた「5年ほど前」ではなくて、「さらに1、2年遡る」と伝えています。

 平成20年2月、羽毛田長官が「愛子さまのご参内が少ない」と皇太子殿下に異例の「苦言」を呈するほど、御所と東宮との間にすき間風が生じていたころ、皇后陛下の発案で翌21年、3者会談が実現します。毎日新聞も伝える「7年前」でした。

 折しも同年には国体でのお言葉廃止などご公務削減が始まり、23年には東日本大震災が起こり、これが「ご意向」の遠因となりました。被災者に寄り添おうとなさる陛下のお体は悲鳴を上げていたのです。

 ブータン国王歓迎行事は陛下ご欠席のまま行われ、その年の秋には秋篠宮殿下がお誕生日会見で「陛下の定年制」に言及されました。

 翌24年、心臓手術を受けられ、手術は成功したものの、陛下は「天皇としての任を果たせないのならば」と「ご意向」を3者会談の場で漏らされるようになりました。

 同年6月に風岡長官が就任すると3者会談は定例化し、長官もオブザーバーとして同席し、当然、「ご意向」を聞き及ぶことになり、やがて侍従らにも伝わりました。

 けれども実現性は疑問視され、遅々として進みません。ところが今年5月、宮内庁による大幅なご公務軽減策をめぐって、陛下は強い難色を示されました。

「ご公務削減案を出すのなら、なぜ退位できないのか」

 原案を突き返された官僚たちは、遅まきながら仕組み作りに走り出したというのです。

 つまり、陛下の強い「ご意向」が宮内庁を走らせたということになりますが、だとすると「生前退位」なる新語は陛下ご自身の創作なのでしょうか。


▽4 小泉時代に検討されていた

 どうも違うのです。

 陛下の「生前退位」は「ご意向」ではなくて、ほかならぬ宮内庁の「計画」であり、「5年ほど前」でも「7年前」でもなく、十数年前に遡れると報道されているのです。

 それが「宮内庁『天皇生前退位』“計画”の背景」と題する「週刊現代」2005年5月21日号の3ページの記事です。

 サイパン御訪問が閣議決定されたが、強行スケジュールは71歳の陛下にはかなりのご負担で、「生前退位」検討の動きが庁内に出ていると職員の証言を伝えています。

 折しも小泉内閣時代で、皇室典範有識者会議が開かれているから、「即位」条項だけでなく、「退位」についても詳しく明記すべきではないかという声が出ているというのです。

 しかも、退位後のお住まいは京都迎賓館とするという、皇族方の京都移住を提案する「双京」構想論者が泣いて喜びそうなプランまで検討されているとされています。

 とすると、「退位」でも「譲位」でもない「生前退位」なる新語の創作者は「宮内庁関係者」なのか。当時、「宮内庁関係者」が提案したという「生前退位」と7年来の陛下の「ご意向」とされる「生前退位」とはいかなる関係にあるのでしょうか。


▽5 無視される祭祀のお務め

 私にはやはり、現行憲法が定める「象徴」天皇制度の下でのご公務ご負担軽減問題ではなくて、もうひとつの問題としての宮中祭祀簡略化が背景にあるように思えてなりませんが、報道からは完全に無視されています。

 21年には祭祀簡略化が始まり、23年には古来、皇室第一の重儀とされてきた新嘗祭が夕の儀、暁の儀とも簡略化されました。「ご意向」を漏らされた時期と重なります。

 陛下は即位以来、皇室の伝統と憲法の規定の両方を「追い求める」と仰せです。ご公務だけが「ご意向」の原因であるはずはありません。むしろ主因は祭祀かも知れません。

 平成の祭祀簡略化は昭和の先例に基づいていますが、昭和天皇は側近による祭祀簡略化に抵抗され、「退位」「譲位」を口にされたと側近の日誌に記録されています。

 今上陛下は「憲法上の象徴としての務めを十分に果たせる者が天皇の位にあるべきだ」とお考えなのではなくて、「祭祀を十分に行い、ご公務を十分に果たせる者が」と仰せなのではありませんか。

 その「ご意向」が曲げてリークされ、さらに曲げられて報道されているのではないでしょうか。宮中祭祀とご公務のうち、前者を軽視し、後者ばかりを重視してきたのが当局であり、メディアです。まして皇室典範改正、女系継承容認論が消えたわけではありません。

 陛下の「ご意向」は改革派に利用されているのでしょう。

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