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教育勅語の「道徳」論と「国体」論 ──初鹿博明議員の質問主意書をめぐって [教育勅語]

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教育勅語の「道徳」論と「国体」論 ──初鹿博明議員の質問主意書をめぐって
(斎藤吉久メールマガジン2017.4.8)
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 森友学園事件を契機として教育勅語が一気に話題になり、賛否両論噛み合わない議論が続いている。なぜ議論は噛み合わないのか、問題点をしばらく私なりに考えてみたい。
教育勅語@官報M231031

 今国会では通常の審議に加えて、質問主意書による場外バトルが展開されている。衆議院で提出された質問書は以下の4本である。参院では提出されていないらしい。

1、教育基本法の理念と教育勅語の整合性に関する質問主意書(2月27日民進党逢坂誠二議員提出。3月7日答弁書受領)

2、稲田大臣の「教育勅語の精神は取り戻すべき」発言に関する質問主意書(3月9日同逢坂議員提出。3月17日答弁書受領)

3、教育勅語の根本理念に関する質問主意書(3月21日民進党初鹿明博議員提出。3月31日答弁書受領)

4、「教育ニ関スル勅語」の教育現場における使用に関する質問主意書(4月6日民進党宮崎岳志議員提出。現時点では答弁書受領に至っていない)

 このうち初鹿議員の質問書は、稲田防衛相が教育勅語を肯定する国会答弁をしたことを受けてのものらしい。初鹿議員は、教育勅語が昭和23年6月に衆参両院でそれぞれ「排除」「失効確認」が決議され、「教育の指導原理性が否定された」と前置きした上で、次の5点を質問した。

1、衆院の排除決議は、教育勅語が「主権在君」「神話的国体観」に基づいているという考えからだったが、政府は是を踏襲しているのか?

2、教育勅語は基本的人権を損ない、国際信義に疑点を残すものであり、そのまま教育に用いることは憲法上、認められないのではないか?

3、国会決議を徹底するために、学校での使用を禁止すべきではないか?

4、稲田防衛相は教育勅語に共感する答弁をしているが、衆院決議で指摘した国際信義に疑点を残すことにつながらないか?

5、稲田防衛相を罷免すべきではないか?

 初鹿議員の問題意識は、国会決議で「排除」されたはずの教育勅語が「主権在民」の現行憲法下で復活することへの疑念を提起しているらしい。

 教育勅語が「民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ」などの現在でも守るべき徳目が記載されていると指摘して、一定の評価を示しつつ、「根本理念」が現代には合わないと断定している。議員が道徳論としては肯定していることに注目すべきだろう。

 他方、稲田大臣の場合は、初鹿議員の質問書に引用されているように、「教育勅語の核である、たとえば道徳、それから日本が道議国家を目指すべきであるという、その核について、私は変えておりません」と述べていて、教育勅語の「核」はもっぱら「道徳」論なのであり、初鹿議員の国体論批判的な見方とは異なる。議論が噛み合うはずがない。

 この捉え方の違いはどこから来るのか。教育勅語の「核」「根本理念」とはもともと何だったのか。敗戦・占領期の「排除」の歴史とどう関わるのだろうか。「道徳」が「核」だというのなら、新憲法は国民主権の下に「道徳」を「排除」した、あるいは「排除」させられたということなのか。「排除」すべきようなものを明治人は作りあげ、その後ずっと敗戦まで引きずってきたのか。

 さて、質問書提出の十日後に示された政府答弁書は、質問1については、昭和23年6月に森戸文相が「教育勅語その他の詔勅に対しましては、教育上の指導原理たる性格を否定してきたのであります。このことは、新憲法の制定、それに基づく教育基本法並びに学校教育法の制定によって、法制上明確にされました」と答弁したとおりと答えている。

 政府答弁の立場は占領期といささかの変わりはないという説明で、これは稲田大臣よりむしろ初鹿議員に近い、国体論批判的理解ということになるだろう。

 けれども3については、「教育勅語を教育の唯一の根本とするような指導を行うことは不適切だが、憲法や教育基本法等に反しないかたちで教材として用いることまでは否定されない」と答え、これが批判を浴びることになった。

 メディアの批判は「過去の遺物が教材か」(4月2日朝日社説)、「看過できない」(4月5日毎日新聞社説)という具合で、やはり国体論批判の匂いがする。だが、そもそも教育勅語とはどのようなものだったのか、なぜここまで批判の対象とされるようになったのか、もっと深い考察が必要な気がする。(斎藤吉久メールマガジン2017.4.8)

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