SSブログ

渡邉允元侍従長の「遺言」──『検証「女性宮家」論議』の「まえがきにかえて」 2 [女性宮家]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2017年4月25日)からの転載です


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
渡邉允元侍従長の「遺言」
──『検証「女性宮家」論議』の「まえがきにかえて」 2
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 以下は、拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの転載です。一部に加筆修正があります。


まえがきにかえて

宮中祭祀にも「女性宮家」にも言及しない前侍従長インタビュー


▽2 前侍従長の「遺言」


 歴史的天皇像の喪失は陛下の側近にまでおよんでいます。というより、側近たちこそ、震源地なのでした。

 たとえば、日経ビジネスオンラインは特別企画として、戦後のリーダーたちが未来に託す「遺言」を連載していますが、2月4日の第10回目に登場したのは、今上天皇の側近中の側近である渡邉允(わたなべ・まこと)前侍従長でした(この文章を書いた当時は前職でしたが、現在では元職です)。

 記事をまとめた中川雅之記者によるプロフィール紹介では、前侍従長の曾祖父・渡邉千秋氏は明治天皇崩御時の宮内大臣で、父は「昭和天皇最後のご学友」として知られる渡邉昭氏。現役の川島裕侍従長をのぞけば、唯一存命の侍従長経験者、と説明されています。

 今上陛下に個人として近侍しただけでなく、家柄としても皇室ときわめて関係の深いキーパーソンだというわけです。

 けれども、そうであるなら、いや、そうであるだけに、じつに不可思議です。

 記事には、古来、天皇第一のお務めとされてきたはずの宮中祭祀も、ついこの間、国民的な大議論を巻き起こしたばかりの、いわゆる「女性宮家」創設問題も、すっぽりと抜け落ちているからです。

 渡邉前侍従長ら側近たちは御在位20年をひかえて、ご高齢になった陛下のご健康をおもんぱかり、ご負担軽減に取り組みました。けれども、いわゆる御公務はいっこうに減らず、それどころか逆に増え、それとは対照的に、簡略化され、お出ましが激減したのが、天皇第一のお務めである祭祀でした。

 これが平成の祭祀簡略化です。つまり、側近たちによる御公務ご負担軽減策は大失敗したのです(拙文「天皇陛下をご多忙にしているのは誰か」=「文藝春秋」平成23年4月号)。

 しかしそれなら、御公務そのものをあらためて大胆に見直し、削減策を早急に講じるべきなのに、民主党政権は、皇室のご活動を安定的に維持し、両陛下のご負担を軽減するため、女性皇族にご分担を求めたいという理屈で、無謀にも皇室制度の検討に着手し、いわゆる「女性宮家」創設に関する有識者ヒアリングを開始させました。

 かまびすしい論議の発端は、後述するように、御在位20年を機に、ほかならぬ前侍従長らが提案したことで、メデイアの初出はこれまたほかならぬ日経本紙の連載でした。ただし、このときの問題意識は「皇統の悩み」であり、「『このままでは宮家がゼロになる』との危機感」と伝えられました。

 しかし国家の基本に関わる大テーマについて、あれだけの大論争を呼び起こしながら、結果的に何がどう変わったのか、嵐が過ぎ去ると、まるで何事もなかったかのように、元側近は黙して語らない、責任も問われない、メディアも報道しようとしない。これは、いったい、どういうことなのでしょうか?


以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。