皇位継承問題と「表裏一体」──羽毛田長官は野田首相に「要請」したか? 3 [女性宮家創設]
以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンからの転載です
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皇位継承問題と「表裏一体」
──羽毛田長官は野田首相に「要請」したか? 3
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以下は、拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの転載です。一部に加筆修正があります。
第1章 いつ、だれが、何のために言い出したのか?
第1節 羽毛田長官は野田首相に「要請」したか?──不思議な読売新聞の「スクープ」
▽3 皇位継承問題と「表裏一体」
記者は他紙に先駆けて、何を嗅ぎつけたのでしょうか?
読売の記事は、じつに面白いことに、
「宮内庁が『女性宮家』創設の検討を要請した」
に続けて、
「併せて安定的な皇位継承制度の実現も求めている」
と話題を展開させています。つまり、「女性宮家」創設論と皇位継承問題とが最初からリンクしていたのです。
この「スクープ」をきっかけに、女性天皇・女系継承認否の大論争が再燃したのも道理です。読売の「スクープ」記事がすっきりしない原因もここにありそうです。
それなら、ここでいう「女性宮家」とはいかなるものなのか、です。少なくとも千数百年を超える皇室の歴史において、「女性宮家」はありません。
記事本文によると、「女性宮家」とは、
「宮家の当主となる女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ」
ことで、そのために皇室典範の一部を改正すると説明されています。
その目的は、記事によれば、
「宮内庁側は、今後、結婚により女性皇族が皇籍を離れるなどして皇族方が少数になると皇室全体の活動に支障が出ると危惧」
していて、このため
「女性宮家創設により皇族方の減少をくい止めることが喫緊の課題」
とされているのでした。つまり、社会的に行動する皇室論に基づいた御公務問題です。簡単にいえば、皇室の人手不足です。
しかし一方で、記事は、
「女性宮家創設は、男系男子による皇位継承に問題が生じた場合、女性の皇位継承も可能にするものとなり得る」
とも指摘しています。「スクープ」記事を書いたと思われる小松夏樹編集委員による、署名入りの「解説」では、
「安定的な皇位の継承という課題と表裏一体のものでもある」
「宮内庁側が今回、女性宮家創設が『火急』とした背景には、将来的には女性の即位も選択可能な状況を作ることが今は先決だとの判断もある」
と説明されています。
「表裏一体」の問題を、別の問題として再提案する、という高度な戦術を弄する賢者が、陛下に近侍しているようですが、羽毛田長官自身が否定しているところからすると、宮内庁長官ではありません。長官ではないけれども、長官にも匹敵する実力者なのでしょう。それはいったい誰なのか、です。
ともかくも、この「スクープ」を契機に、「女性宮家」創設は動き出しました。読売は続報で、「スクープ」が載った日、藤村官房長官が午前の記者会見で、この問題に答えたことを伝えています。
「安定的な皇位継承のため、皇室典範の改正が必要との認識を示した上で、『女性宮家』の創設については国民的な議論を踏まえて検討していく考えを明らかにした」
同時に続報では、羽毛田長官が野田首相に会談した際、皇位継承問題について「説明」したことを藤村長官が認めたとされています。「スクープ」記事に書かれた宮内庁の段階では皇室のご活動問題と説明されていたのに、続報の政治レベルでは皇位継承問題にすっかりすり変わっています。
こうして官僚たちが火を付けた「女性宮家」創設論議は、メディアを媒介として、皇位継承論議と一体化し、民主党政権下で急速に燃え広がっていきました。
以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります
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皇位継承問題と「表裏一体」
──羽毛田長官は野田首相に「要請」したか? 3
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以下は、拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの転載です。一部に加筆修正があります。
第1章 いつ、だれが、何のために言い出したのか?
第1節 羽毛田長官は野田首相に「要請」したか?──不思議な読売新聞の「スクープ」
▽3 皇位継承問題と「表裏一体」
記者は他紙に先駆けて、何を嗅ぎつけたのでしょうか?
読売の記事は、じつに面白いことに、
「宮内庁が『女性宮家』創設の検討を要請した」
に続けて、
「併せて安定的な皇位継承制度の実現も求めている」
と話題を展開させています。つまり、「女性宮家」創設論と皇位継承問題とが最初からリンクしていたのです。
この「スクープ」をきっかけに、女性天皇・女系継承認否の大論争が再燃したのも道理です。読売の「スクープ」記事がすっきりしない原因もここにありそうです。
それなら、ここでいう「女性宮家」とはいかなるものなのか、です。少なくとも千数百年を超える皇室の歴史において、「女性宮家」はありません。
記事本文によると、「女性宮家」とは、
「宮家の当主となる女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ」
ことで、そのために皇室典範の一部を改正すると説明されています。
その目的は、記事によれば、
「宮内庁側は、今後、結婚により女性皇族が皇籍を離れるなどして皇族方が少数になると皇室全体の活動に支障が出ると危惧」
していて、このため
「女性宮家創設により皇族方の減少をくい止めることが喫緊の課題」
とされているのでした。つまり、社会的に行動する皇室論に基づいた御公務問題です。簡単にいえば、皇室の人手不足です。
しかし一方で、記事は、
「女性宮家創設は、男系男子による皇位継承に問題が生じた場合、女性の皇位継承も可能にするものとなり得る」
とも指摘しています。「スクープ」記事を書いたと思われる小松夏樹編集委員による、署名入りの「解説」では、
「安定的な皇位の継承という課題と表裏一体のものでもある」
「宮内庁側が今回、女性宮家創設が『火急』とした背景には、将来的には女性の即位も選択可能な状況を作ることが今は先決だとの判断もある」
と説明されています。
「表裏一体」の問題を、別の問題として再提案する、という高度な戦術を弄する賢者が、陛下に近侍しているようですが、羽毛田長官自身が否定しているところからすると、宮内庁長官ではありません。長官ではないけれども、長官にも匹敵する実力者なのでしょう。それはいったい誰なのか、です。
ともかくも、この「スクープ」を契機に、「女性宮家」創設は動き出しました。読売は続報で、「スクープ」が載った日、藤村官房長官が午前の記者会見で、この問題に答えたことを伝えています。
「安定的な皇位継承のため、皇室典範の改正が必要との認識を示した上で、『女性宮家』の創設については国民的な議論を踏まえて検討していく考えを明らかにした」
同時に続報では、羽毛田長官が野田首相に会談した際、皇位継承問題について「説明」したことを藤村長官が認めたとされています。「スクープ」記事に書かれた宮内庁の段階では皇室のご活動問題と説明されていたのに、続報の政治レベルでは皇位継承問題にすっかりすり変わっています。
こうして官僚たちが火を付けた「女性宮家」創設論議は、メディアを媒介として、皇位継承論議と一体化し、民主党政権下で急速に燃え広がっていきました。
以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります
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