宮内庁長官は「女性宮家」創設を提案していない ──最初の提案者であることを否定する研究者 1 [女性宮家創設論]
以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンからの転載です
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宮内庁長官は「女性宮家」創設を提案していない
──最初の提案者であることを否定する研究者 1
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以下は、拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの転載です。一部に加筆修正があります。
ところで、おかげさまで、当「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンが[メルマ!]の総合ランキングで14位、ニュース&情報部門で5位となりました。
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます。
それでは本文です。
第1章 いつ、だれが、何のために言い出したのか?
第4節 最初の提案者であることを否定する研究者──所功教授の雑誌論考を手がかりに
前節では、岩井克己朝日新聞記者による「週刊朝日」の記事などを資料として、「女性宮家」創設の最初の提案者は渡邉允前侍従長(いまでは元職)であり、著書の文庫版(平成23年12月発行)の「後書き」(平成23年10月執筆)に、「宮家創設」案が明記されていることを突き止めました。
けれども、創設論はどうやら、さらに数年、さかのぼれそうです。前侍従長の提案と決めつけることも出来ないようです。
それなら、いつ、だれが、何の目的で言い出したのでしょうか。誰が言い出したのかも分からない、その目的も中味もよく分からない、したがってまともには論ずるに値しないはずの「女性宮家」創設論の、言葉だけが独り歩きしています。
▽1 宮内庁長官は「女性宮家」創設を提案していない
雑誌「正論」平成24年3月号に、所功京都産業大学教授(当時)の記事「宮家世襲の実情と『女性宮家』の要件」が掲載されました。
所先生はたいへんまじめで温和な、人間的にいい方ですが、先生の論考は私の理解能力を超えています。
まず、論考のテーマについてです。
先生は論考の冒頭で、「象徴」「世襲」の天皇制度を可能なかぎり強化するよう努めなければならない。そのために「女性宮家」の創設が創設される必要があると訴えているのですが、私が理解に苦しむのはその次です。
先生は、読売新聞の「スクープ」と同様に、平成23年10月に羽毛田信吾長官が野田佳彦首相に「女性皇族が婚姻により皇室を離れる」ので、皇族の数が少なくなるから、「皇室のご活動に支障を来す」。制度改正が遅れれば「姉妹間で差異を生じる」ことを説明したと述べ、そのあと皇位継承論を展開しています。
先生の理解では、「女性宮家」創設論の発端は、一般の理解と同様、羽毛田長官の発言に置かれています。なるほどそのような報道もあるのですが、実際に長官が「女性宮家」創設を提案したかどうかは不明です。
先生の文章の最後は
「解説したという」
となっていますから、何かの引用なのでしょうか。何か特定の資料をもとに、「女性宮家」創設の提唱者は羽毛田長官である、と先生はお考えなのでしょうか?
しかし、それはこれまでの私の考察とは異なります。すでにお話ししたように、当代随一の皇室ジャーナリスト・岩井克己記者の雑誌記事によれば、野田首相に「女性宮家」創設を「火急の件」として提案したと伝えられていることについて、「長官は強く否定」しているからです(「週刊朝日」平成23年12月30日号)。
もっとも、所先生の記事は、羽毛田長官が「女性宮家」創設を提案した、とは書いていません。記事には参考文献などは示されていませんが、長官を最初の提唱者とする特別の資料があるのかも知れません。
ということで、久しぶりにご本人に直接、お話しし、うかがってみることにしました。
すると、意外な答えが返ってきました。
「複数の資料を見た」
と仰せなのです。そして「女性宮家」を誰が言い出したのか、については
「知らない」
と述べられるのでした。
だとすると、先生は、いつ、誰が、何の目的で言い出したのか、その内容も明らかにしないまま、「女性宮家」創設支持の議論を展開しているということになります。そんなことがあり得るのでしょうか。私たちは暇つぶしに、世間話をしているわけではないのです。
羽毛田長官はおそらく「女性宮家」創設を野田首相に語ってはいないのでしょう。それかあらぬか、所先生の論考でも、「女性宮家」問題ではなく、「皇室の御活動」問題として述べられています。
であるならば、女性皇族が皇籍離脱したあとの「皇室の御活動」をどう確保すべきか、ということが所先生の論考のテーマになるはずです。
ところが、先生の論考はいきなり皇位継承論に飛んでしまうのです。
今回の「女性宮家」創設の提唱者と目される渡邉允前侍従長は、「女性宮家」創設は皇位継承問題とは「別の次元の問題」だと再三繰り返していますが、なぜ先生は、「女性宮家」創設論を皇位継承問題として展開されるのでしょうか?
以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります
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宮内庁長官は「女性宮家」創設を提案していない
──最初の提案者であることを否定する研究者 1
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以下は、拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの転載です。一部に加筆修正があります。
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それでは本文です。
第1章 いつ、だれが、何のために言い出したのか?
第4節 最初の提案者であることを否定する研究者──所功教授の雑誌論考を手がかりに
前節では、岩井克己朝日新聞記者による「週刊朝日」の記事などを資料として、「女性宮家」創設の最初の提案者は渡邉允前侍従長(いまでは元職)であり、著書の文庫版(平成23年12月発行)の「後書き」(平成23年10月執筆)に、「宮家創設」案が明記されていることを突き止めました。
けれども、創設論はどうやら、さらに数年、さかのぼれそうです。前侍従長の提案と決めつけることも出来ないようです。
それなら、いつ、だれが、何の目的で言い出したのでしょうか。誰が言い出したのかも分からない、その目的も中味もよく分からない、したがってまともには論ずるに値しないはずの「女性宮家」創設論の、言葉だけが独り歩きしています。
▽1 宮内庁長官は「女性宮家」創設を提案していない
雑誌「正論」平成24年3月号に、所功京都産業大学教授(当時)の記事「宮家世襲の実情と『女性宮家』の要件」が掲載されました。
所先生はたいへんまじめで温和な、人間的にいい方ですが、先生の論考は私の理解能力を超えています。
まず、論考のテーマについてです。
先生は論考の冒頭で、「象徴」「世襲」の天皇制度を可能なかぎり強化するよう努めなければならない。そのために「女性宮家」の創設が創設される必要があると訴えているのですが、私が理解に苦しむのはその次です。
先生は、読売新聞の「スクープ」と同様に、平成23年10月に羽毛田信吾長官が野田佳彦首相に「女性皇族が婚姻により皇室を離れる」ので、皇族の数が少なくなるから、「皇室のご活動に支障を来す」。制度改正が遅れれば「姉妹間で差異を生じる」ことを説明したと述べ、そのあと皇位継承論を展開しています。
先生の理解では、「女性宮家」創設論の発端は、一般の理解と同様、羽毛田長官の発言に置かれています。なるほどそのような報道もあるのですが、実際に長官が「女性宮家」創設を提案したかどうかは不明です。
先生の文章の最後は
「解説したという」
となっていますから、何かの引用なのでしょうか。何か特定の資料をもとに、「女性宮家」創設の提唱者は羽毛田長官である、と先生はお考えなのでしょうか?
しかし、それはこれまでの私の考察とは異なります。すでにお話ししたように、当代随一の皇室ジャーナリスト・岩井克己記者の雑誌記事によれば、野田首相に「女性宮家」創設を「火急の件」として提案したと伝えられていることについて、「長官は強く否定」しているからです(「週刊朝日」平成23年12月30日号)。
もっとも、所先生の記事は、羽毛田長官が「女性宮家」創設を提案した、とは書いていません。記事には参考文献などは示されていませんが、長官を最初の提唱者とする特別の資料があるのかも知れません。
ということで、久しぶりにご本人に直接、お話しし、うかがってみることにしました。
すると、意外な答えが返ってきました。
「複数の資料を見た」
と仰せなのです。そして「女性宮家」を誰が言い出したのか、については
「知らない」
と述べられるのでした。
だとすると、先生は、いつ、誰が、何の目的で言い出したのか、その内容も明らかにしないまま、「女性宮家」創設支持の議論を展開しているということになります。そんなことがあり得るのでしょうか。私たちは暇つぶしに、世間話をしているわけではないのです。
羽毛田長官はおそらく「女性宮家」創設を野田首相に語ってはいないのでしょう。それかあらぬか、所先生の論考でも、「女性宮家」問題ではなく、「皇室の御活動」問題として述べられています。
であるならば、女性皇族が皇籍離脱したあとの「皇室の御活動」をどう確保すべきか、ということが所先生の論考のテーマになるはずです。
ところが、先生の論考はいきなり皇位継承論に飛んでしまうのです。
今回の「女性宮家」創設の提唱者と目される渡邉允前侍従長は、「女性宮家」創設は皇位継承問題とは「別の次元の問題」だと再三繰り返していますが、なぜ先生は、「女性宮家」創設論を皇位継承問題として展開されるのでしょうか?
以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります
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