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「先例」を提示しつつ「新例」を開く矛盾 ──何のための歴史論か 1 [女性宮家創設論]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2017年6月28日)からの転載です


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「先例」を提示しつつ「新例」を開く
──何のための歴史論か 1
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 私は運動家ではありませんが、やむにやまれぬ思いから、「御代替わり諸儀礼を『国の行事』に」キャンペーンを、ひとりで始めることにしました。いまのままでは悪しき先例が踏襲されるばかりです。趣旨をご理解の上、友人知人の皆様への拡散を切にお願いします。
https://www.change.org/p/%E6%94%BF%E5%BA%9C-%E5%AE%AE%E5%86%85%E5%BA%81-%E5%BE%A1%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E3%82%8F%E3%82%8A%E8%AB%B8%E5%84%80%E7%A4%BC%E3%82%92-%E5%9B%BD%E3%81%AE%E8%A1%8C%E4%BA%8B-%E3%81%AB

 さて、以下、拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの抜粋を続けます。一部に加筆修正があります。


第2章 有識者ヒアリングおよび「論点整理」を読む

第5節 何のための歴史論か──「女性宮家」創設論のパイオニア・所功京産大名誉教授


▽1 「先例」を提示しつつ「新例」を開く
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 平成24年7月5日に行われた有識者ヒアリングの議事録が、やっと官邸のサイトに公表されました〈http://www.kantei.go.jp/jp/singi/koushitsu/yushikisha.html〉。

 意見を述べたのは、所功京都産業大学名誉教授(モラロジー研究所教授。日本法制史。女性宮家賛成派)と八木秀次高崎経済大学教授(憲法学。女性宮家反対派)のお2人ですが、ここでは所先生の意見について考えます。

 とくに、歴史と向き合う姿勢について、考えてみたいと思います。悠久なる皇室の歴史は日本の歴史そのものであり、皇室について語ることは必然的に歴史と向き合うことを迫られると思うからです。

 すでに述べてきたように、先生は、いち早く「女性宮家」創設を提唱するなど、「女性宮家」創設論に関しては突出したパイオニア的存在です。

 小泉内閣の時代、平成16年7月、ちょうど内閣官房と宮内庁が皇室典範改正の公式検討に向けて準備を始めたころ、先生は雑誌「Voice」8月号に、「“皇室の危機”打開のために──女性宮家の創立と帝王学──女帝、是か非かを問う前にすべき工夫や方策がある」を書いています。

「管見を申せば、私もかねてより女帝容認論を唱えてきた。けれども、それは万やむを得ざる事態に備えての一策である。それよりも先に考えるべきことは、過去千数百年以上の伝統を持つ皇位継承の原則を可能なかぎり維持する方策であろう。それには、まず『皇室典範』第12条を改めて、女性宮家の創立を可能にする必要がある」

 歴史上、「女性宮家」は存在しませんから、「女性宮家」の創設は皇位継承の伝統を維持することにはなりません。したがって所先生の論理は完全に矛盾しています。

 歴史と伝統を重んじる皇室を研究テーマとする研究者が、なぜ歴史にない新例を積極的に容認しようとするのか、私にはよく分かりません。歴史的伝統の堅持を宣言し、そのために歴史の断片を提示し、しかし実際は相反する新例に向かって突き進む、というのが先生の学問の最大の特徴のように見えます。

 翌17年6月8日には、小泉首相が開催した皇室典範有識者会議のヒアリングで、先生は「女性宮家」創設を提案しています。

「現在極端に少ない皇族の総数を増やすためには、女子皇族も結婚により女性宮家を創立できるように改め、その子女を皇族とする必要があろう」

 皇位継承の安定化のためには皇族の数を増やす必要がある。そのため女性皇族が婚姻後も皇室にとどまり、その子女も皇族とする必要性があると訴えています。

 同年11月の有識者会議報告書は、女性天皇・女系継承容認に踏み出しました。「女性宮家」という表現はなぜか消えましたが、その中味は盛り込まれています。

 所先生は

「女性天皇、女系継承、女性宮家の創立なども可能とした報告書の大筋には賛成したい」

 と新聞に感想を寄せています。先生はまさに新例創設のパイオニアです。


以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります
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