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淑子内親王は歴史の先例か? ──何のための歴史論か 6 [女性宮家創設論]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2017年7月3日)からの転載です


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淑子内親王は歴史の先例か?
──何のための歴史論か 6
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 私は運動家ではありませんが、やむにやまれぬ思いから、「御代替わり諸儀礼を『国の行事』に」キャンペーンを、ひとりで始めました。いまのままでは間違いなく悪しき先例が踏襲されるでしょう。同憂の士を心から求めるとともに、友人知人の皆様への拡散を切にお願いします。
https://www.change.org/p/%E6%94%BF%E5%BA%9C-%E5%AE%AE%E5%86%85%E5%BA%81-%E5%BE%A1%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E3%82%8F%E3%82%8A%E8%AB%B8%E5%84%80%E7%A4%BC%E3%82%92-%E5%9B%BD%E3%81%AE%E8%A1%8C%E4%BA%8B-%E3%81%AB

 さて、以下、拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの抜粋を続けます。一部に加筆修正があります。


第2章 有識者ヒアリングおよび「論点整理」を読む

第5節 何のための歴史論か──「女性宮家」創設論のパイオニア・所功京産大名誉教授


▽6 淑子内親王は歴史の先例か?
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 平成24年に執筆された「宮家世襲の実情と『女性宮家』の要件」(「正論」同年3月号)では、所先生は、「継嗣令」以後の皇室の制度史を概観し、

「宮家も男系の男子で世襲されてきたが、正室の嫡子だけでなく側室の庶子が認められていても、それは必ずしも容易ではない。そのため、実子が無ければ、皇族の間から養子を取って継嗣とした」

 と述べて、

「幕末に皇女を迎えて当主とした」

 という桂宮家の例をあげています。

 指摘すべき2点目はこの桂宮家の事例です。

 先生のお考えは、古代に女系継承容認の法制度があったように、女性宮家の先駆的事例が歴史上、存在する、ということのようです。古代律令制は女性天皇の存在を認め、幕末期には宮家の当主となった女性皇族も実在する、という歴史理解は、今日の「女性宮家」創設論を強力に後押ししています。

 けれども、これも半信半疑です。

 今回のヒアリングでも、先生はいかにも歴史家らしく、「宮家」の歴史を見渡し、桂宮家のケースに言及しています。

「幕末に至って、同家の家臣らから要請され、文久3年、西暦1862年に、孝明天皇や皇女和宮親子内親王の姉に当たられる敏宮淑子(すみこ)内親王が第11代の当主に就任しておられます。
 ただ、早く婚約していた閑院宮第5代の愛仁親王に先立たれ、一生独身を通されましたから、明治14年(1881)、その薨去(こうきょ)により絶家となってしまいました」

 淡々とした説明は、何をおっしゃりたかったのでしょうか?

 レジュメでは

「念のため、宮家の歴史を振り返ると、嫡子も庶子も当代天皇の猶子(名目養子)となり 親王宣下を蒙れば、宮家を相続(世襲)することができた。また桂宮家では、幕末に男子の猶子を得られないため、皇女(淑子内親王)を当主に迎えた実例がある」

 とされていますから、「女性宮家」は歴史に先例があり、新例ではないと主張されたいのでしょうか?

 所先生によれば、桂宮家は波乱の歴史をたどっています。しばしば後嗣に恵まれなかったからです。3、4、5、6代と皇子を養子に迎えて、宮家を継いでいます。

 そして8代目が薨去したあと、20年以上、空主の時代を迎えます。先例にならって、生まれて間もない、光格天皇の皇子を迎え、第9代となりますが、ほどなくして亡くなり、ふたたび空主となります。

 24年後、今度は仁孝天皇の皇子が迎えられ、第10代となりますが、やはり2歳半弱で夭折し、三度、空主となります。

 26年後の文久2(1862)年に迎えられたのが、仁孝天皇の皇女淑子(すみこ)内親王でした。御歳34歳。

 所先生は「史上初めての皇女を当主とする宮家」がここに成立したと説明しますが、未婚を貫かれ、20年後、この世を去り、同宮家は幕を閉じます。

「女性宮家」創設の前例となりうるかどうかは、精査の必要があります。


以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります
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