百年の計に耐えうる運動を ──依命通牒の「廃棄」をご存じない? 7 [女性宮家創設論]
以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2017年8月20日)からの転載です
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百年の計に耐えうる運動を
──依命通牒の「廃棄」をご存じない? 7
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拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの抜粋を続けます。一部に加筆修正があります。
第4章 百地章日大教授の拙文批判に答える
第2節 依命通牒の「廃棄」をご存じない?
▽7 百年の計に耐えうる運動を
じつは、第3章に書いたように、平成3年4月25日の国会で、宮尾盤宮内庁次長(当時)が
「(依命通牒の)廃止の手続きは取っておりません」
と答弁しています。
旧皇室典範ではなく、新皇室典範に従うというのが第1項です。依命通牒全体の「廃止」などあるはずもありません。問題はあくまで第3項と第4項です。
同じ日に、秋山収内閣法制局第2部長(のちの内閣法制局長官)は
「お尋ねの通牒は3項、4項をあわせ読めば、現行憲法及びこれに基づく法令に違反しない範囲内において従前の例によるべしという趣旨であります」
と答弁しています。「3項、4項をあわせ読めば」がミソです。第4項にはこう書かれています。
「前項の場合において、従前の例によれないものは、当分の内の案を立てて、伺いをした上、事務を処理すること」
30年のあいだ、依命通牒第3項に基づいて、「従前の例に準じて」存続してきた宮中祭祀が、突如、依命通牒第4項にいう「従前の例によれないもの」と判断されたのです。
問題は、だれが、何を根拠に、そう判断したのか、です。
昭和50年8月の長官室会議は、議事録すら残されていないようですが、
「憲法の政教分離規定に違反しない範囲内において、皇室祭祀令の例によるべし」
と決定したのでしょう。依命通牒(通達)ですから、もともと官報には載りません。公表されません。各部長官宛の依命通牒ですから、けっして内部文書ではありませんが、内部文書的なものとされ、人知れず事実上、「廃棄」されたのです。
その結果、依命通牒は法規集から外され、宮中祭祀の祭式は改変されていったのでした。皇室の伝統より憲法の規定を優先させる一大画期です。
しかし「皇室の伝統」と「憲法の趣旨」を対立的にとらえるだけでなく、憲法を優先させ、祭祀の歴史を改変させるという重要な判断は宮内庁幹部が、長官室という密室で行われるべきものなのでしょうか?
平成の御代替わりでは、政府は「皇室の伝統」と「憲法の趣旨」とを対立的にとらえ、皇室の伝統行事を伝統のままに行うことが現行憲法の趣旨に反すると考え、実際、国の行事と皇室行事とを二分し、挙行しています。
その背景には依命通牒の「廃棄」があることは明白です。ただし、御代替わりでは委員会が設けられ、参考人の意見も求められました。
10年以上前に始まった、女系継承容認=「女性宮家」創設論は少なくとも戦後の歴史全体を見渡す必要があるし、依命通牒の「破棄」は大きなポイントです。「無関係」(百地先生)のはずはありません。
なぜ「無関係」と言い切れるのか、それは百地先生が運動家だからではないでしょうか。私は戦後皇室行政史全体を視野に入れていますが、百地先生はそのときそのときの政治テーマが「闘い」のターゲットなのでしょう。だから、各局面の運動とその成果を誇ります。「女性宮家」創設問題という見方しかなさらないのでしょう。
もちろん私は、運動家がいけないと申し上げているのではありません。左翼運動家が大学で教鞭を執っている例など、枚挙に暇がないはずです。
問題は同じ運動なら、百年の計、千年の計に耐えうる運動を起こしてほしいということです。それには少なくとも百年、千年の歴史を見定めなければなりません。もしそのような視点があるなら、拙論を
「自己宣伝」
「自慢」
「的外れ」
などと、口汚く決めつけたりはしないでしょう。「的外れ」かどうかは、黙っていても、読者が判断してくれるはずです。
以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります
☆ひきつづき「御代替わり諸儀礼を『国の行事』に」キャンペーンへのご協力をお願いいたします。このままでは悪しき先例がそのまま踏襲されるでしょう。改善への一歩を踏み出すために、同憂の士を求めます。
〈https://www.change.org/p/%E6%94%BF%E5%BA%9C-%E5%AE%AE%E5%86%85%E5%BA%81-%E5%BE%A1%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E3%82%8F%E3%82%8A%E8%AB%B8%E5%84%80%E7%A4%BC%E3%82%92-%E5%9B%BD%E3%81%AE%E8%A1%8C%E4%BA%8B-%E3%81%AB〉
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百年の計に耐えうる運動を
──依命通牒の「廃棄」をご存じない? 7
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拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの抜粋を続けます。一部に加筆修正があります。
第4章 百地章日大教授の拙文批判に答える
第2節 依命通牒の「廃棄」をご存じない?
▽7 百年の計に耐えうる運動を
じつは、第3章に書いたように、平成3年4月25日の国会で、宮尾盤宮内庁次長(当時)が
「(依命通牒の)廃止の手続きは取っておりません」
と答弁しています。
旧皇室典範ではなく、新皇室典範に従うというのが第1項です。依命通牒全体の「廃止」などあるはずもありません。問題はあくまで第3項と第4項です。
同じ日に、秋山収内閣法制局第2部長(のちの内閣法制局長官)は
「お尋ねの通牒は3項、4項をあわせ読めば、現行憲法及びこれに基づく法令に違反しない範囲内において従前の例によるべしという趣旨であります」
と答弁しています。「3項、4項をあわせ読めば」がミソです。第4項にはこう書かれています。
「前項の場合において、従前の例によれないものは、当分の内の案を立てて、伺いをした上、事務を処理すること」
30年のあいだ、依命通牒第3項に基づいて、「従前の例に準じて」存続してきた宮中祭祀が、突如、依命通牒第4項にいう「従前の例によれないもの」と判断されたのです。
問題は、だれが、何を根拠に、そう判断したのか、です。
昭和50年8月の長官室会議は、議事録すら残されていないようですが、
「憲法の政教分離規定に違反しない範囲内において、皇室祭祀令の例によるべし」
と決定したのでしょう。依命通牒(通達)ですから、もともと官報には載りません。公表されません。各部長官宛の依命通牒ですから、けっして内部文書ではありませんが、内部文書的なものとされ、人知れず事実上、「廃棄」されたのです。
その結果、依命通牒は法規集から外され、宮中祭祀の祭式は改変されていったのでした。皇室の伝統より憲法の規定を優先させる一大画期です。
しかし「皇室の伝統」と「憲法の趣旨」を対立的にとらえるだけでなく、憲法を優先させ、祭祀の歴史を改変させるという重要な判断は宮内庁幹部が、長官室という密室で行われるべきものなのでしょうか?
平成の御代替わりでは、政府は「皇室の伝統」と「憲法の趣旨」とを対立的にとらえ、皇室の伝統行事を伝統のままに行うことが現行憲法の趣旨に反すると考え、実際、国の行事と皇室行事とを二分し、挙行しています。
その背景には依命通牒の「廃棄」があることは明白です。ただし、御代替わりでは委員会が設けられ、参考人の意見も求められました。
10年以上前に始まった、女系継承容認=「女性宮家」創設論は少なくとも戦後の歴史全体を見渡す必要があるし、依命通牒の「破棄」は大きなポイントです。「無関係」(百地先生)のはずはありません。
なぜ「無関係」と言い切れるのか、それは百地先生が運動家だからではないでしょうか。私は戦後皇室行政史全体を視野に入れていますが、百地先生はそのときそのときの政治テーマが「闘い」のターゲットなのでしょう。だから、各局面の運動とその成果を誇ります。「女性宮家」創設問題という見方しかなさらないのでしょう。
もちろん私は、運動家がいけないと申し上げているのではありません。左翼運動家が大学で教鞭を執っている例など、枚挙に暇がないはずです。
問題は同じ運動なら、百年の計、千年の計に耐えうる運動を起こしてほしいということです。それには少なくとも百年、千年の歴史を見定めなければなりません。もしそのような視点があるなら、拙論を
「自己宣伝」
「自慢」
「的外れ」
などと、口汚く決めつけたりはしないでしょう。「的外れ」かどうかは、黙っていても、読者が判断してくれるはずです。
以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります
☆ひきつづき「御代替わり諸儀礼を『国の行事』に」キャンペーンへのご協力をお願いいたします。このままでは悪しき先例がそのまま踏襲されるでしょう。改善への一歩を踏み出すために、同憂の士を求めます。
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