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政府予算案で大嘗祭の準備は万全か ──宮廷費は6割増しだが、内廷費は増えず [御代替わり]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンからの転載です


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政府予算案で大嘗祭の準備は万全か
──宮廷費は6割増しだが、内廷費は増えず
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 今上陛下の譲位を再来年平成31年の春に控え、先週の22日、関連予算を含む、来年度(30年度)宮内庁予算の政府案が閣議決定されたと伝えられます。
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 その概要は宮内庁のサイトに公開されており、誰でも見ることができますが、スムーズに御代替わりを迎えることができるのか、不安はないのでしょうか?


▽1 儀典関係費は2倍以上に

 政府予算案では、皇室の費用すなわち皇室費98億6000万円(前年度比36億4200億円増)と宮内庁の組織を運営するための114億6600万円(同2億4800億円増)を合わせて、213億2500万円(同38億9000万円増)が歳出予算として計上されています。

 皇室費の内訳は、天皇陛下ならびに内廷皇族(皇后、皇太子、皇太子妃)の御手元金である内廷費が3億2400万円(同増減なし)、各宮家の皇族に支出される皇族費が3億6400万円(同1億4900万円増)、皇室の御活動や皇室用財産の維持管理のため、内廷費以外の宮廷諸費に充てられる宮廷費91億7100万円(同34億9300万円増)となっています。

 誰が見ても明らかなのは、皇室費が前年度比で6割近くも急増していることです。増額分のほとんどは宮廷費で、いわゆる退位特例法の施行に向けた準備に必要な経費と説明されています。

 その内訳は、新侍従職・皇嗣職の準備に従事する職員等の人件費など「お支え関係」が1億7800万円、東宮御所や御仮寓所、秋篠宮邸の工事費など「お住まい関係」が17億3000万円、そして即位礼に用いられる高御座等の輸送・修理、装束、儀式用具など「儀式関係」が16億5300万円、計35億6000万円となっています。

 前年度比で6割方増加した宮廷費のうち、とくに増えたのは儀典関係費23億6500万円で、前年度より金額で16億1200万円、比率ではじつに214%増と、文字通り倍増しています。

 それだけ御代替わりに伴う重要な儀式が執り行われるということでしょうが、絶対に忘れてならないのは、この儀典関係費には御代替わりに関わる宮中祭祀の予算はまったく含まれないということです。


▽2 内廷費は定額制

 天皇の祭祀は「皇室の私事」であるという法解釈によって、関係する予算、すなわち掌典職の予算は、宮廷費ではなく、内廷費に含まれます。ところが、内廷費は平成8年度以来、3億2400万円に据え置かれたままです。

 それは、皇室経済法で、内廷費は「定額を毎年支出する」と定められているからです。

 以前、書いたように、天皇の祭祀に関わる掌典職の人たちが心配するのは、天皇一世一度の大嘗祭です。毎年、神嘉殿で行われる新嘗祭とは異なり、新たに大嘗宮を建て、大規模に斎行される大嘗祭はそれだけ人員も必要です。

 大嘗祭そのものについては、前回の先例を踏襲するのなら、関係予算は宮廷費から支出されますが、それ以外は別です。前回は、大嘗祭の前年の新嘗祭に7人を臨時に雇いあげ、本番に向けた予行練習を体験してもらうことになったようです。そのためには当然、予算が費用です。

 仮に1人月30万円として、9月から11月まで雇った場合、月210万円、3か月で630万円、ざっと1000万円弱の予算がかかる計算になります。けれども、内廷費定額制のもとでは、宮廷費のように臨機応変に予算を増やすことができません。

 前回の場合は、何しろ大嘗祭自体が内廷費で賄わなければならない最悪の事態も想定されていたぐらいでしたから、皇室では万が一に備え、以前からやり繰りをして、少しずつ積み立てを行っていたそうですが、いまはどうなのか。

 かといって、皇室経済法第4条第3項に基づき、皇室経済会議を開いて、「定額について変更」するというレベルの問題ともいいがたいのですが、それにしても20年以上も内廷費が据え置きなのは理解に苦しむところです。

 来年の新嘗祭に臨時祭員を参加させる予算がまったく確保できないとなれば、再来年の秋に予定される大嘗祭はぶっつけ本番で執り行わなければならないことになりますが、それで大丈夫なのか、とOBは心配するのです。


▽4 「退位の翌日に即位」の意味

 さて、蛇足ながら、以上のことに関連して、気になる情報を得ましたので、書き添えることにします。当メルマガで何度も言及している「退位の翌日に即位」とされている譲位の日程のことです。

 前々回も書きましたように、明治の皇室典範も、現行の皇室典範も、「天皇が崩じたときは、皇嗣が直ちに即位」というように規定し、空位を認めないことを明文化しています。当然のことです。

 この基本原則に基づけば、再来年4月30日に退位の儀式が行われ、この儀式をもって今上天皇が「退位」され、翌5月1日になにがしかの皇位継承の儀式をなさることにおいて「即位」されるという解釈なら、24時間の空位が生まれることになります。

 これは、崩御という事実の瞬間を皇位継承の区切りとする代わりに、譲位に関する儀式が行われる時間を「退位」「即位」の発生する日時と解しているわけですが、別の考え方もあり得ます。

 つまり、空位あるべからずという法の原則を遵守するなら、退位の儀式は行われるとしても、その事実にかかわらず、法的には今上天皇の「退位」は4月30日の午後11時59分59秒99をもってし、翌5月1日午前0時の瞬間に皇太子殿下が践祚(皇位継承)すなわち「即位」されると解釈するということです。

 法的な解釈としてはそれも可能なのですが、厄介なのは祭祀です。掌典職のOBがこれを指摘しています。


▽5 5月1日午前0時に賢所で御拝?

 旧登極令では、第1条に「天皇践祚の時は、すなわち掌典長をして賢所に祭典を行わしめ、かつ践祚の旨を皇霊殿・神殿に奉告せしむ」とあり、附式の第一編に、「賢所の儀」「皇霊殿神殿に奉告の儀」「剣璽渡御の儀」「践祚後朝見の儀」からなる「践祚の式」を掲げています。

 このうち「賢所の儀」は、神饌を供したのち、掌典長が祝詞を奏し、掌典長が天皇の御代拝を務め、御告文を奏し、掌典が皇后の御代拝を務めることとされています。「三日間これを行う。ただし第2日、第3日の儀は御告文なし」とされます。

 昭和天皇崩御に基づく平成の御代替わりでは、諒闇中であり、当然、天皇、皇后の御代拝でしたが、譲位に基づく今回の御代替わりでは御拝とされるのかどうか。そして、5月1日の午前0時をもって践祚とするのなら、このときをもって賢所の儀が執り行われることになるのかどうか。

 それとも退位の儀式と同時進行で、もしくは先行して賢所の儀が行われるのかどうか。

 5月1日は旬祭の親拝が行われる日でもあります。昭和40年代に入江相政侍従長の腕力で、毎月1日の旬祭の親拝は年2回に縮減され、平成の祭祀簡略化でも踏襲されましたが、それでも5月と10月の旬祭は御代拝とはなりませんでした。今回は、践祚の式で御拝が行われるとすると、旬祭はどうなるのか、掌典職のみならず注目せざるを得ません。

 もう1点、改元についていえば、登極令第2条には「践祚の後は直ちに元号を改む」とあり、大正、昭和とも即日改元が行われましたが、平成の御代替わりでは翌日改元でした。元号法には「直ちに」の定めはありません。

 昭和天皇崩御ののち、賢所では直ちに賢所の儀が行われ、宮殿では剣璽等承継の儀、朝見の儀が行われて、皇位は継承されたのですが、元号の「昭和」はこの日の午後12時まで続いたのです。

 それにしても「退位の翌日に即位」とする政府の説明は絶対的に不足していませんか。これを伝えるメディアの報道も同様でしょう。平成の御代替わりを踏襲するのなら、「翌日改元」という説明で十分です。それを「翌日即位」といえば混乱します。践祚を「即位」と無理に言い換えるから混乱するのです。

 退位の儀式すなわち践祚の式をもって皇位の継承とし、翌日の午前0時をもって改元するという説明では、なにか差し障りがあるのでしょうか。



☆ひきつづき「御代替わり諸儀礼を『国の行事』に」キャンペーンへのご協力をお願いいたします。
https://www.change.org/p/%E6%94%BF%E5%BA%9C-%E5%AE%AE%E5%86%85%E5%BA%81-%E5%BE%A1%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E3%82%8F%E3%82%8A%E8%AB%B8%E5%84%80%E7%A4%BC%E3%82%92-%E5%9B%BD%E3%81%AE%E8%A1%8C%E4%BA%8B-%E3%81%AB

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