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どうしても女性天皇でなければならないのか。男系を固守することは不正義なのか。なぜ男系の絶えない制度を考えようとしないのか? [皇位継承]

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どうしても女性天皇でなければならないのか。男系を固守することは不正義なのか。なぜ男系の絶えない制度を考えようとしないのか?
《斎藤吉久のブログ 令和2年2月9日》
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女性天皇容認のみならず、「万世一系」とされる皇統に根本的変革を招く女系継承容認論が沸騰している。現在の皇位継承順位を一変させる「愛子さま天皇」待望論までが飛び出して、かまびすしい。
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古来の男系継承を堅持することがまるで不正義であるかのような口吻である。男系男子をもって皇位が継承され続けることは正義に反することなのだろうか。検討してみたい。


▽1 皇室のルールをなぜ変える

推進派の論拠は、法理論と歴史論、現実論の3つに大きくまとめられると思う。

①(法理論)人は法の下にあって平等である。男女は平等である。象徴天皇は女性でも務まる。
②(歴史論)8人10代の女性天皇が歴史に存在する。海外では男女を問わない王位継承に変わっている。
③(現実論)皇位継承資格者の数が減少している。男系継承主義の場合、入内する女性が受ける心理的圧力は計り知れない。国民の圧倒的多数が改革を支持している。

以下、Q&A式で考える。まずは法理論である。

Q1 男女は平等で、憲法も認めている。女性天皇の即位を認めるべきではないか?
A1 法の下の平等は憲法の大原則であるが、その一方、憲法は第一章で、血統主義に基づく天皇という特別の地位を認めている。天皇は平等主義の例外である。憲法の制定過程でも男系継承主義は問題にはならなかった。
 過去に女性天皇がいなかったのではない。夫があり、子育て中の女性天皇がおられないのである。民間から輿入れした女性は摂政ともなれる。これは男女差別だろうか。

 【関連記事】基本を忘れた女系継承容認論──小嶋和司教授の女帝論を読むhttps://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/2011-12-31

Q2 憲法は「皇位は世襲」と定めている。男系男子継承を定めているのは皇室典範であり、典範を改正すればいいではないか?
A2 憲法の「世襲」はdynasticの意味で、単に血が繋がっているという意味ではない。王朝の支配ということが本義であって、古来、連綿と続いてきた皇室のあり方を根本的に変えるような改革は憲法に違反する。なぜそこまでして、男系で継承されてきた皇室のルールを変更したいのか。

 【関連記事】眞子内親王の皇籍離脱をけしかける登誠一郎元内閣外政審議室長の不遜。安倍総理の次は秋篠宮親王に直言。女性天皇・女系継承容認へまっしぐらhttps://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/2020-01-26

Q3 象徴天皇の務めは憲法に書いてあるが、女性だから務まらないということはない。有能な女性なら、十分に務まるのではないか?
A3 古代において天皇はスメラギあるいはスメラミコトと呼ばれ、国と民を多様なるままに1つに統合することがお役目とされた。古代律令の定めのように、天神地祇をまつり、国と民のために祈ることが第一のお務めであり、歴代天皇は祭祀を継承されてきたが、国務法たる憲法には規定がない。
 皇位は世襲主義であり、能力主義ではない。有能か否かは皇位とは無関係である。むろん、人間的にいい方かどうか、徳の有無でもない。

 【関連記事】西尾幹二先生の御忠言を読む──どこが誤っているのかhttps://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/2008-07-22


▽2 古代律令は「女帝」を認めていない

次は歴史論です。

Q4 古代律令制は女子の継承を認めていたし、実際、8人10代の女性天皇がいる。女性天皇は皇室の伝統的あり方である。なぜ否定するのか?
A4 古代律令の、皇族の身分や継承法を定めた「継嗣令」には、「凡そ皇(こう)の兄弟、皇子をば、皆親王(しんのう)と為(せ)よ。〈女帝(にょたい)の子も亦(また)同じ〉。以外は並に諸王と為よ」(『律令』日本思想大系3)とあり、「女帝」が法制度上、認められていたという解釈がある。
 しかし、「女(ひめみこ)も帝の子、また同じ」と読むのが正しく、天皇の子女は親王・内親王とすると解釈されるべきだとの有力説がある。古代において「女帝」なる公式用語はない。
 過去に女性天皇は存在するが、寡婦もしくは独身を貫かれた。女系による継承は予定されていない。女性天皇がいないというのではなく、夫があり、子育て中の女性天皇が存在しないのである。
 それは天皇が公正かつ無私なる祭祀を行う祭り主だからだろう。ひたむきに夫を愛し、子育てに集中する女性の姿は美しいが、「天皇に私なし」とする皇位とは両立できるかどうか。女性の女性たる価値を認めるからこそ、女性天皇は独身を貫かざるを得なかったのではないか。

 【関連記事】田中卓先生の著作を読んで──「皇国史観」継承者が「女性皇太子」を主張する混乱by 佐藤雉鳴・斎藤吉久〈https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/2014-03-01

Q5 女子による皇位継承を認めなくなったのは、明治の皇室典範であり、男尊女卑の悪弊ではないか?
A5 明治の皇室典範制定過程では「男女同権」を掲げる女帝容認が繰り返し浮上し、そして最終的に否定された。明治の女帝容認論は根強いものがあり、男尊女卑の時代と断定することは一面的すぎる。
 旧典範が女帝を否認したのは、皇婿を臣民から迎えることが至難であり、女帝継承後に王朝が変わるからである。

 【関連記事】女系は「万世一系」を侵す──「神道思想家」葦津珍彦の女帝論http://www004.upp.so-net.ne.jp/saitohsy/ashizu_joteiron.html

Q6 海外では男女平等主義に基づいて、女子の王位継承が認められるようになった。日本も見習うべきではないか?
A6 たとえばイギリス王室では、女王による王位継承が認められているが、もともと父母の同等婚が原則で、女子の王位継承後は父方の王朝に変わる。女王の継承は新たな父系の始まりとなる。
 しかし日本では皇族同士の婚姻という原則はなく、参考にしようがない。しかも今日では、イギリスは王族同士の婚姻という原則が崩れており、なおのこと参考にはできない。
 スペインでは男子優先から男女平等主義に移行中だが、同等婚原則がすでに崩れており、これまた参考にしようがない。それでも参考にせよというのは独自の歴史と伝統を無視せよと要求するのと同じである。
 また北欧では国民が王を選ぶ選挙君主制の伝統がある。国民の意思で女子の継承を認めることとなったのは、民主的改革ではなくて、伝統回帰といえる。

 【関連記事】参考にならないヨーロッパの「女帝論議」──女王・女系継承容認の前提が異なるhttps://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/2006-12-18


▽3 御負担増を強いる女系継承容認論

最後は現実論です。

Q7 皇位継承資格者は秋篠宮文仁親王、悠仁親王、常陸宮正仁親王のお三方しかおられない。対策を講じなければ、皇室は絶えてしまいかねないではないか?
A7 たしかにそうだが、明治の典憲制定過程ではもっと深刻で、明治天皇に皇男子はなく、皇族男子は遠系の4親王家にしかおられなかった。女帝容認は火急の案件だった。それでも明治人は女帝を否認したのである。優れた見識というべきではないか。
 いまのままでは皇統は絶える。だから女帝を容認すべきだ、という論理はもっともなようで、じつはそうではない。皇統とはすなわち男系なのだから、男系が絶えないよう制度を考えるのが物事の順序というものであり、歴史にない女系継承容認論は論理の飛躍だ。

 【関連記事】基本を忘れた女系継承容認論──小嶋和司教授の女帝論を読むhttps://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/2011-12-31
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Q8 皇室に嫁ぐ女性が男子を産まなければならない心理的圧迫は相当なものである。女子の継承を認めれば、圧力はやわらぐのではないか?
A8 皇太子妃、皇后となる女性の心理を思いやり、古来、男系で貫かれた皇位継承制度に根本的変革を加えるのは、角を矯めて牛を殺すということわざの通りであろう。
 昔から皇統の備えとしての宮家という制度がある。一定の皇族を確保する方策を考えるべきではないか。知恵を絞れば方法はいくつもある。
 女性天皇を認めれば、女帝は御公務をこなしつつ、出産、育児を行うことになるのだろうか。女系継承容認、女性宮家創設論は天皇の御公務御負担軽減が目的とされているが、いまでも多忙をきわめる天皇にさらなるご負担を強いることにならないか。
 さらにもうひとつ、皇婿となる男性には子供ができなければならないという心理的負担はないのだろうか。女性の負担ばかりを考慮するのは平等の精神に反する。

Q9 多くの世論調査は女性天皇・女系継承容認を支持している。なぜ世論に反する男系主義に固執しなければならないのか?
A9 現在の国民の支持を盾にして、なぜ千年余の皇室のルールを変えなければならないのだろうか。古来、男系主義が続いてきたのは国民の支持があったからではないのか。
 女性天皇・女系継承容認を打ち出した政府の有識者会議は終始一貫、皇室の歴史と伝統について検討していない。皇室のことは皇室に委ねるべきではないのか。有識者会議はやり直すべきではないか。

 【関連記事】宮中祭祀をめぐる今上陛下と政府・宮内庁とのズレ──天皇・皇室の宗教観 その4(「月刊住職」平成27年11月号)〈https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/2016-01-17



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