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小川寛大さんの神社本庁批判に異議あり。もともと上意下達の組織ではない [神社神道]

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小川寛大さんの神社本庁批判に異議あり。もともと上意下達の組織ではない
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金刀比羅宮の神社本庁離脱をめぐって、「中外日報」の元記者で、「宗教問題」編集長の小川寛大さんという方がプレジデント・オンラインに『大激震! 「神社本庁は天皇陛下に不敬極まる」…"こんぴらさん"離脱で離散危機に』と題する一文を寄せています。「神社界全体を揺るがす大ニュース」というわけです。〈https://president.jp/articles/-/36456

小川さんによると、近年、有力神社の離脱が相次ぎ、神社本庁が揺れているのは、「偉そうに『上納金だけ持ってこい』という態度」に地方の苛立ちがつのっているところへ、本庁の「土地転がし問題」で不信感が高まったからだと説明されています。神社本庁が「ばらけるときには一気にばらける危険性」も指摘されています。

地方の神職や本庁周辺のコメントも散りばめられ、取材のあとも見受けられますが、当事者たる金刀比羅宮や本庁への直接取材は見受けられません。私が指摘したように、本庁幣の供進について本庁は事務手続きを粛々と進めたのに、香川県神社庁の単純ミスで不祥事が生じたらしい真相究明への意思もありません。相次ぐ大社の離脱から一気に本庁の危機という結論が導かれています。

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小川さんには『神社本庁とは何か』という著書もあるそうですが、本庁が全国8万社の包括宗教法人で、いわば教団の上部組織による不手際が全体の危機の原因を生んでいるという思考のプロセスにむしろ問題がありはしないでしょうか。本庁はキリスト教や仏教の教団組織とは似て非なるものです。


▽1 神社本庁として糾合した事情

小川さんが説明するように、宗教法人法の枠組みでいえば、神社本庁は間違いなく包括宗教法人であり、神職資格を付与し、神職の人事権も握っています。しかし実態としては、上意下達的、強権的な人事権の行使はあり得ません。各神社には古来の氏子の存在があるからです。宮司の任命権は実質的に氏子にある場合もあり得ます。

それぞれのお宮にはそれぞれ歴史と信仰があります。源氏のお宮もあれば、平家の社もある。山神の神社もあれば、海の神社もある。それらが一見、総本山とも見える神社本庁として糾合することになった、そうせざるを得なかった事情を小川さんは見落としていませんか。

前にも書いたように、神社本庁設立の気運は敗色が濃厚となった戦争末期に遡ります。敗戦となり、神社を敵視する占領軍が進駐することになれば、全国の神社は壊滅的な状況に陥る。危機を回避するには一致団結する他はない、と葦津珍彦が有力者に呼びかけ、大日本神祇会、皇典講究所、神宮奉斎会が糾合することになりました。

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葦津はこのとき神社連盟案を提案し、宗教法人化は好ましくないと進言したようですが、受け入れられませんでした。宗教法人なら神、教義、聖職者、教会、信徒などキリスト教的な要素を無理にでも作り上げる必要に迫られます。宗教法人の概念がキリスト教由来だからです。

ただ、神社本庁は統一教義を作ることは避けました。小川さんが書いているように自然宗教の神社です。多様性こそが神道の神髄なら、統一教義の作成は不可能です。

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▽2 ほんとうの危機とは

小川さんは神社本庁が『戦前の「国家神道」体制を統括した行政機関「神祇院」を形式的に継承している組織』と書いています。国家神道の亡霊が戦後に命を長らえ、強権を振るっていることに地方の神社が反発しているというようなニュアンスですが、間違いでしょう。

既述したように、神社本庁は民間3団体の統合で生まれたのです。なぜそのような事態になったのか、そこが重要でしょう。

葦津が神社本庁設立の準備に奔走していたころ、アメリカ陸軍省が製作したプロパンダ映画に「Know Your Enemy : Japan」があります。皇祖神の神勅に基づき、八紘一宇の精神で、昭和天皇を現人神として、アジア各地に神社を建て、世界を武力で侵略していると新兵たちを教育する映画です。

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これこそがアメリカが敵視する国家神道なのでした。神道には本来、教義も布教もないのですから、誤解と偏見以外の何ものでもありませんが、敗戦国には反論権はありません。そして神社本庁が生まれたのです。古代から続く民族の信仰を守るという一事に、関係者が心をひとつにしたのです。

しかしそれから70有余年、神社本庁は、あるいは地方の神社関係者は本庁設立の精神を見失っているのではありませんか。危機の原因はむしろそこにあるのでしょう。小川さんはそうはお思いになりませんか。神社本庁は国家神道の残影だと言わんばかりの小川さんに真っ向反論する人さえ、いまの本庁にはいないでしょう。それこそがほんとうの危機なのです。


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