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曽根香奈子先生、さすがの見識と学びですね──5月31日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 2 [有識者会議]


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曽根香奈子先生、さすがの見識と学びですね──5月31日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 2
(令和3年7月4日、日曜日)
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前回の続きです。今日は曽根香奈子・日本青年会議所監事です。

曽根氏は、自己紹介によれば、愛知県半田市にある製造業の経営者の3代目です。3児の母であり、「ごく普通の民間人」です。「専門的な知識はない」と謙遜されますが、けっしてそうではありません。天皇の祭祀にいっさい言及しない大学教授らがほとんどなのに、曽根氏は天皇の歴史的なお役目を、臆することなく取り上げています。ご立派です。清涼感さえ感じます。

曽根氏は、ヒアリング後の有識者会議メンバーとの意見交換で、今回、ヒアリングに招請される前は、皇室問題にどの程度、関心を持っていたか、と質問されて、「なかった。テレビで見る程度」と正直に告白しています。短期間によくぞここまで深く学ばれたものだと心底、感心します。

言い換えるなら、国民の側に、皇室について、真摯に、謙虚に学ぶという姿勢があれば、女帝・女系継承容認が大半を占めるという現在のお寒い状況は、意外にも簡単に変わり得るということになります。曽根さんはいわばそのお手本です。

それでは、政府の設問に沿って、レジュメを作られ、話しておられますので、それに従って中身を検討していくことにします。


▽2 曽根香奈子氏──「普通の民間人」でもここまで学べる

まず問1の「天皇の役割や活動」について。

曽根氏は、天皇とは日本国と日本国民の象徴、シンボルであり、その役割と活動には、(1)祭り主、宮中祭祀の長であること、(2)お田植えなどを宮中でなさり、農業ほか伝統産業を守り伝えることの大切さを示されること、(3)国家元首として御公務をなさること、の3つがあると説明しています。

順徳天皇の「禁秘抄」に「およそ禁中の作法は神事を先にす」とあるように、天皇は「祭り主」であるというのが皇室の天皇観であり、曽根氏の指摘の第一がまさにこれです。3番目の「国家元首としての御公務」は近代化によって新たに加味されたものと一応、位置付けられます。


◇天皇と皇族の違い

注目したいのは、2の「田植え」です。

日本浪漫派の評論家・歌人として知られる保田與重郎全集の月報には、取材にやってきた新聞記者に、保田が「天皇の仕事でいちばん大切なのは何かね」と逆に質問し、考えあぐねる記者に「田植えだよ」と語り、記者が面食らったという逸話が載っていたのを思い出します。

天皇の稲作は歴史が浅く、昭和天皇が皇位継承後に始められたものでした。平成、令和と受け継がれ、平成以後は稲に加えて粟も栽培されるようになりましたが、その意味は何でしょうか。昭和天皇がお田植えを始められたとき、ある新聞はその目的を「産業振興」と伝えました。曽根氏も今回、同様のニュアンスで述べています。

一方の保田は、天皇の稲作は神話の時代と直結する、祭りであり、祈りであると考えていたようです。むろん記紀神話に描かれた斎庭の稲穂の神勅が前提でした。皇祖天照大神は天孫降臨に際して、「高天原にある斎庭の稲穂をわが子に与えなさい」と命じられたと伝えられます。天孫降臨は日本の稲作と始まりであり、皇室こそは日本の稲作産業の中心なのです。

としたときに、そのような「天皇の役割と活動」というものが、現下の皇位継承問題とどのように関わるのでしょうか。曽根氏はどのように説明しているのでしょうか。

問2の「皇族の役割や活動」について、曽根氏は、「天皇の役割と活動」と「皇族の役割と活動」は別であることを正しく指摘しています。このことはきわめて重要だと思います。

「女性宮家」創設=女系継承容認論は、天皇と皇族の役割を一緒くたにする考えが前提となっています。だから、園部逸夫内閣参与が以前の有識者会議でしきりに繰り返していたように、陛下はご多忙だから、女性皇族にも御公務を分担していただく、そのために「女性宮家」創設が求められるという論理が展開されたのです。

しかし天皇は「上御一人」であり、宮中祭祀がそうであるように、天皇にしかお出来になれないお役目を皇族方が代行することは、そもそも不可能です。まったく曽根氏の仰せの通りです。


◇問題は「皇位継承資格者」の減少

問3は「皇族数の減少」です。

曽根氏は「皇族の活動に一定の支障を来すという心配」を吐露しつつも、「根本の問題ではない」と断言しています。つまり、「安定的な皇位継承の資格を確保するための課題としては、皇位継承資格を有する者の減少が根本の問題である」からです。さすがの見識です。

そもそも「皇族」とは、皇位継承の資格を有する血族の集まりなのであり、本来の「皇族」といわゆる「みなし皇族」とを混同するから、議論は混乱していくのです。

そのうえで曽根氏は、「志ある旧宮家の方々に皇族、皇室へ復帰していただく以外に、根本問題を解決する道はない。ただし、皇族数が減少すれば、天皇および皇族の御公務の御負担が増えるのは確かであるから、何らかの対策は必要だ」と訴えています。

ほかに方法がないわけではないと私は思いますが、それはそれとして、いわゆる御公務の見直し・整理についても言及してほしかったと感じています。

何度も言いますが、先帝陛下の御在位20年を節目として、宮内庁の御公務御負担軽減策が始まりました。ところが、文字通り激減したのは宮中祭祀ばかりで、いわゆる御公務の件数は逆に増えていきました。失敗の反省も検証もなく、「女性宮家」創設=女系継承容認に走るのは、論理の飛躍以外の何者でもないはずです。


◇皇位継承は国民が議論すべきことではない

問4は「皇位継承の原則」についてです。「皇統に属する男系男子である皇族のみが皇位継承資格を有し、女性皇族は婚姻に伴い皇族身分を離れることとしている現行制度の意義をどのように考えるか」について、曽根氏は「たいへん大事な点だと思うので、私が学び、感じ、そして考えに至ったことを少し詳しくお話ししたい」と意を決したように語り始めます。

曽根氏は最初、「社会で女性が活躍し、男女平等が進んでいる今日、皇族も同じようにあるべきでは」と考えていました。皇位継承資格を男系男子に限る必要はないと思っていました。しかし、皇室についての認識が深まり、学んでいくに従って、誤りに気付いたというのです。

すなわち、天皇が「祭り主」であるという伝統が国民の結束の証であること、皇室に入られた女性たちが皇室の「多様性」を担ってきたこと、皇統の男系主義を壊してはならないこと、の3点です。

皇室問題の専門家でもない一民間人が真摯に学んでこられた姿勢に頭が下がる思いがします。そもそもが皇位継承の基本原則は、国民が議論すべきことではありません。

となれば、問5の「内親王・女王に皇位継承資格を認めること」について、賛成のはずはありません。「歴史的には時代状況により、皇族女性が皇嗣となったり、寡婦か未婚の状態で、中継ぎ的役割 で御即位されたりしたことはあった。したがって、男系女子の継承は、一時的にどうしても必要なときは可能だと考えている。しかし、その御子息・御令嬢である女系男子や女系女子への継承はあってはならない」と明言しています。

前にも指摘したように、近代の終身在位が前提なら、女帝即位はたちどころに女系継承容認に転化します。


◇正答を出すべき人たちはほかにいる

すなわち、問6の「皇位継承資格を女系に拡大すること」は認めようがありません。「父系、男系をたどり、初代神武天皇に血統がつながることが天皇」だからです。

そのうえで、曽根氏は「女系天皇というのは天皇には当たらず、もしも今後、女系天皇なるものが誕生すれば、それは天皇ではなく、新たな王朝を開くこととなり、皇室の歴史が終わり、ひいては日本の歴史が終わり、新王朝の下、新たな国家を開くことになる」と強く警告しています。

問7の「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することについて」も同様で、曽根氏は「必要ない」ときっぱり。「その配偶者と御子息・御令嬢は皇族ではない」からです。まったくその通りです。

問8の「婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族が皇室の活動を支援することについて」は、「菊栄親睦会や新たな組織などがあれば、御活動いただくべきだ」と指摘するにとどまっています。

問9の「皇族に属する男系の男子を、養子縁組または皇籍復帰により皇族にすることについて」は、もともと旧宮家の臣籍降下はGHQによる不当なハーグ陸戦条約違反だから、「旧宮家の志ある方を養子縁組することのみ可能にすべきだ」し、皇籍復帰にも「賛成」しています。

最後に、問10の安定的な皇位継承を確保するための、あるいは皇族数の減少に係る対応としての「そのほかの方策」について、曽根氏は「旧宮家の皇籍復帰しかない」と言い切り、「旧宮家の方々と丁重に議論を重ね、志ある方々に皇族、皇室にお戻りいただければと思う」と締め括っています。

最後に、一点だけ指摘すると、天皇第一のお役目が祭祀にあるとして、なぜそのことが男系主義と関わるのか、曽根氏のヒアリングからは答えは見つかりません。しかしそのことは何ら批判されるべきことではないでしょう。正答を出すべき人たちはほかにいるからです。その人たちの不作為と無能力こそ、大いに批判されるべきなのです。


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