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半井小絵先生、和気清麻呂のご子孫とは知りませんでした──6月7日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 2 [有識者会議]

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半井小絵先生、和気清麻呂のご子孫とは知りませんでした──6月7日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 2
(令和3年8月11日、水曜日)
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前回の続きです。今日は2番手、半井小絵氏です。気象予報士・女優と紹介されています。NHK時代からのファンも少なくないでしょうが、なぜこの方が「有識者会議」に招請されるのか、理解に苦しむところです。半井氏自身、「一国民」としての立場を表明しています。

しかし興味深いのは、半井氏が自己紹介する、その出自です。なんと「和気清麻呂の子孫」だというのです。古代において皇統の危機を救った忠臣の子孫とあれば、考えを改め、傾聴しなければなりません。


▽2 半井小絵氏──「しらす」までご存知とは

半井氏はきわめて謙虚です。「皇室のことを話すのは恐れ多い」「しかし、日本そのものの存続に関係する重要なことだから、勇気を振り絞り、発言させていただいている」とみずからを鼓舞しています。

かつての半井氏は「和気清麻呂の子孫」と両親や祖父母から聞いていたものの、興味はありませんでした。「柿本人麻呂の子孫」と誤って理解していたほどでしたが、数年前、ニュースのコメンテーターをすることになり、歴史を学び直しました。

そして、祖先の歴史を知るようにもなりました。清麻呂の姉・和気広虫は女官として天皇に仕え、日本ではじめて孤児院を開いた人物ともいわれます。

以前は「女性天皇」と「女系天皇」の違いも知らない半井氏でしたが、皇室を知るために、皇居の勤労奉仕にも参加し、御会釈を賜る機会にも恵まれました。「国民の幸せと世界の平和を祈ってくださっている天皇陛下のいらっしゃる、この国に生まれた幸せを実感した」「両陛下を、お父上、お母上と思ってしまうような親しみも湧いてきた」とそのときの印象を語っています。

じつに謙虚で、素直な人柄が伝わってくるエピソードですが、問題はそのような半井氏の理解と現下の皇位継承問題との関わりです。


◇「祭り主」天皇論の立場で

半井氏は、皇室の伝統的な天皇観である「祭り主」天皇論の立場で、話を進めています。

問1の「天皇の役割や活動」については、ほかの憲法学者たちとはまったく異なり、「天皇陛下はつねに我が国と国民の安寧を祈ってくださる有り難い存在である」「日本の長い歴史の中で育んできた伝統・文化をすべて背負ってくださっている存在である」と位置付けています。

つまり、半井氏によれば、歴代天皇は「日本そのもの」であり、「現代に生きる我々とその先祖の生きてきた証である」ということになります。とすれば、皇位継承について軽々に論ずることはできず、ヒアリングの場で意見を表明することは「恐れ多い」と思わずにはいられないことになります。

しかし、まことに残念ながら、天皇はなぜ「祭り主」なのか、具体的にいかなる「祭り」をなさり、そのことがいかなる意味を持つのか、少なくともこのヒアリングでは追究と説明がありません。

もっともそのことは半井氏だけの弱点ではありません。保守系の知識人はどなたも似たり寄ったりだからです。

なかには天皇は「稲の祭り」をなさると固く信じている神道学者さえいます。天皇が大嘗祭、新嘗祭で米と粟の新穀を供えて祈られるという事実を知らないばかりでなく、天皇の祭りが「稲の祭り」なら畑作民が疎外感を覚え、国と民を統合するスメラミコトたり得ないという想像性さえ持っていません。

半井氏は勤労奉仕の体験から、両陛下を「お父上・お母上」と感じたと振り返っていますが、なぜそういう思いが、「祭り主」天皇論から生まれるのか、ぜひ考察を深めてほしいものです。


◇常識的な皇位継承論

半井氏の意見は、保守派としては、きわめて常識的です。

「皇族の役割でもっとも大切なのは、皇統を引き継いでいかれることにある。皇統が途絶えるということは、日本そのものが終わるということである」
「どの天皇も父方をたどると神武天皇につながるということに大きな意味がある。女性皇族が婚姻に伴い皇族の身分を離れる現行制度は、民間の男性との皇位継承争いを引き起こさないためにも意義ある」
「女系天皇への拡大は我が国の歴史上ないことで、日本を混乱させる原因となり、許容できない」
「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持されることは、避けるべきだ。配偶者を皇族とすることはあってはならない。皇位継承は従来の伝統を崩してはならない」
「今後の変更で女性皇族も皇位継承資格を持つようになられたとしても、内親王・女王が結婚された場合は、従来どおり皇籍を離脱するべきである」
「婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族が皇室の活動を支援することについては、大使的な役割として、皇室の公務を担っていただくことには賛成である」
「現行の皇室典範では皇族に認められていない養子縁組を可能とすること、皇統に属する男系男子を現在の皇族と別に新たに皇族とすることは、共に賛成である」
「皇統を守るための方法は1つに絞らず、皇統を引き継いでくださる方が多いほど、安定的な皇位継承につながる」
「民間人として生まれ、皇籍に復帰し、天皇となられた醍醐天皇の例もある。旧宮家の男系男子の皇統復帰は、皇統の安定継承のためにも今すぐにでも実現する動きに入らなければならない」
「悠仁親王殿下に男子のお子様がお生まれになれば、旧宮家の男系男子の皇籍復帰は必要ないという意見もあるが、私はそうは思わない。もし男子がお生まれにならなければ、皇統の継承の危機となる。また、同世代に御相談できる男性皇族がいらっしゃるというのは、きわめて重要なことだ」
「皇室について国民が深く知り、理解することが必要である。学校教育でも表面的にしか教えない。日本は天皇陛下の『しらす』国である」
「いまのこの時代に2000年以上、大切にしてきた先人からの習わしを崩していいものかと思っている。できる限りの方法で守っていくということを希望している」


◇謙虚で素直な人たちばかりではない

いくつかのポイントを考えてみます。

ひとつは「皇族」です。皇位継承問題が混乱するのは、以前も指摘したように、「皇族」概念が定まらず、揺らいでいるからです。

もともとは皇統に連なり、皇位継承資格を有する血族の集まりが「皇族」のはずですが、明治の皇室典範以来、民間出身の皇后、皇太子妃までが「皇族」とされるようになり、現在では、血統ではなくて、天皇の御公務を「分担」できる特別公務員が「皇族」と認識されています。

政府・宮内庁が「安定的な皇位継承を確保するため」と称して、「女性宮家」創設=女系継承容認に舵を切ったのも、じつのところ国事行為・御公務の「安定」が目的であって、古来の皇位継承の存続は最初から念頭にはなかったのです。議論が混乱するのは当然です。

政府がまず取り組むべきことは、御公務の見直しです。御負担軽減に失敗した宮内庁の責任を問い、失敗の原因を探ることです。それをせずに、皇位継承に手を付けるのは論理の飛躍であり、不遜です。

ふたつ目は、半井氏は「皇族」に「大使的な役割」を期待していますが、現行憲法は皇室外交を予定していません。皇族の役割は「皇統の備え」に尽きます。

3つ目は、皇室の伝統を重視するのは当然として、「伝統」だけで現代の女系派を説得できるのかどうかです。半井氏のような謙虚な、素直な現代人ばかりではないのです。

それにしても、半井氏の口から「しらす」の解説が聞かれるとは思ってもみませんでした。


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