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ある神社人の遺言「神社人を批判せよ」 [神社人]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2010年7月14日)からの転載です


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ある神社人の遺言「神社人を批判せよ」
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 神道系大学を傘下に置く皇学館の理事長だった上杉千郷(うえすぎ・ちさと)さんが先月、亡くなりました。

 上杉さんは世界を股にかけて活動する数少ない神社人でしたが、一方でローカルな視点を失いませんでした。「田舎神主」という言葉があるように、地方にこそ神道の神髄があります。よき神道人の代名詞です。上杉さんこそは田舎神主の典型で、病床で「田舎に帰りたい」と願い、最期は故郷の岐阜で静かに息を引き取ったそうです。

 私にとっては公私にわたってお付き合いいただいた、私の人間性を知る数少ない一人でした。苦境にあるとき、どれほど精神的に応援し続けてくれたことか。

 最後にお会いしたのは病室でした。別れのとき、私の手をかたく握り、目を見つめながら、いつも変わらぬヒョウヒョウとした声で、「ひとつ、日本のために頑張ってくださいよ」と語られたのが忘れられません。

 上杉さんは特攻隊の生き残りです。敗戦後は「おつりの人生」と見定め、全力投球してきたとおっしゃっていました。だからこそ口にできる「日本のため」なのですが、私にはあまりにも荷が重すぎます。


▽1 イエロー・ペーパーをやれ!!

 上杉さんが生前、私に何度も提案されたことがあります。それは神社人批判の勧めでした。ご自身は神社界の重鎮なのに、野人に過ぎない私にくり返し迫りました。「斎藤君、S新聞をやったらいい。キミならできると思う」

 S新聞というのはいわばイエロー・ペーパーです。つい最近まで、宗教界のスキャンダルを暴き立てることを得意とする新聞がありました。しかし編集者の高齢化で自然消滅したようです。

 その新聞があったころは書かれる側にもそれなりの緊張感があった。いまはそれがなくなり、だれきっている。だからお前がやれ、と上杉さんは何度も語るのでした。

 私がスキャンダル嫌いなのを上杉さんは知っているはずです。人間の世界なら、どこにでもあるような醜聞を暴き、カネに換えるようなことを私がまったく好まないことを、上杉さんは百も承知のはずです。

 それならなぜ、「わが神社人を批判せよ」とくり返し迫ったのか?

 それはなにより、上杉さんが若き日に文字通り、命を捧げようとした祖国の60数年後の腐りきった現状に深い憂いがあるからでしょう。そして、改革の先頭に立ってほしいと期待する神社人が、実際にはいっこうに現れてこない現実に対する苛立ちからではなかったか、と私は想像しています。


▽2 抗議の声が上がってこない

 たとえば、私がこのメルマガなどで一貫して指摘してきた平成の宮中祭祀簡略化問題です。

 【関連記事】天皇陛下をご多忙にしているのは誰か──祭祀が減り、公務が増える。それは陛下のご意志なのかhttps://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/2011-04-01-2
 【関連記事】宮中祭祀を蹂躙する人々の『正体』──「ご負担軽減」の嘘八百。祭祀を簡略化した歴代宮内庁幹部の狙いは何かhttps://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/2009-09-01-2

 多くの人々が支持してくれましたが、祭祀を専門とする肝心の神社人のなかから、強い抗議の声はいっこうに上がってきません。昭和の簡略化問題が表面化した昭和50年代末に、猛反発し、宮内庁に抗議した、当時の若い神職たちはいまは60代で、第一線で活躍しているはずですが、昭和の先例を踏襲する目の前の現象に対しては、何も感じないのでしょうか?

 それどころではありません。ある神社人などは、拙著に対してずばり、「宮内庁批判はよくない」と語ったほどです。私はまったく耳を疑いました。もっとも批判すべき君側の奸(かん)に対して、媚(こび)を売っているのです。これでは問題の解決など望むべくもありません。

 このメルマガが追及してきた空知太神社訴訟判決の問題もしかりです。

 【関連記事】市有地内神社訴訟で最高裁が憲法判断か?https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/2009-09-17-1

 上杉さんが提案されたイエロー・ペーパーは劇薬です。劇薬を用いなければならないほど、病は深い、と上杉さんは考えていたのかどうか?

 これからこのメルマガで、少し考えてみたいと思います。


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