SSブログ

モグラたたきの政教分離論──憲法理論は法廷闘争の方便か 1 [女性宮家創設論]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンからの転載です


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
モグラたたきの政教分離論
──憲法理論は法廷闘争の方便か 1
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの抜粋を続けます。一部に加筆修正があります。


第4章 百地章日大教授の拙文批判に答える

第7節 憲法理論は法廷闘争の方便か

koukyo01.gif
 月刊「正論」平成25年3月号に掲載された百地章日大教授(当時)の拙文批判を読み続けています。前節に引き続き、先生が専門とする政教分離について考えます。

 突然ですが、私は学生のころ、しょっちゅう風邪をひきました。きまって扁桃腺炎を併発し、高熱に悩まされ、ぜんそく症状を引き起こしました。これでは就職もままならない、と心底、思い悩みました。

 そのころ出会い、その後、20年以上にもわたって、お付き合いすることになった、元海軍軍医の主治医は、名医中の名医でした。外科医としての腕もさることながら、ふつうの医者なら、解熱剤や気管支拡張剤などを処方してすませるところを、主治医はまったく違っていました。

 主治医が投薬のほかに、私に与えたのは、自分も長年愛用しているというタワシでした。

「皮膚を摩擦して鍛え、風邪にかからない体質を作りなさい」

 というのです。

 皮膚を鍛えたおかげで、いつの間にか滅多に風邪をひかなくなりました。実の息子以上に可愛がっていただき、海外旅行もご一緒した、いまは亡き主治医に、感謝の言葉もありません。

 熱が出たから解熱剤、風邪には抗生物質という対症療法は、患者には即効性が期待できるし、処方箋で点数を稼ぐ医療ビジネスにとっても好ましいかも知れません。タワシではふつうの患者は喜ばないだろうし、医者は一文の得にもなりません。

 けれども安易なモグラたたきは、患者になんら根本的解決を与えず、結果的に国民医療費を増大させ、抗生物質の効かない耐性菌の恐怖を招きかねません。

「闘い」の人である百地先生の憲法論にも、そのような側面がないでしょうか?


▽1 モグラたたきの政教分離論


 先生の著書の1つに、一般読書向けに書かれた『憲法の常識 常識の憲法』があります。

「第1章 国家と憲法」
「第2章 占領下に作られた日本国憲法」
「第3章 象徴天皇制と国民主権」

 と続き、第7章で「政教分離について」が取り上げられています。

 書き出しは「政教分離とは何か?」で、「『政教分離』をめぐる混乱」という小見出しのあとに、以下のような文章がつづられています。

「政教分離とは、一般に、国家と宗教の結合を禁止し、信教の自由を保障するための制度であるといわれる。しかしながら、具体的に何が政教分離であり、いかなる場合に政教分離違反が生ずるかという問題になると、なかなか意見は一致しない」

 政教分離の定義をめぐるこの文章は、いかにも百地先生らしさが強くにじみ出ているように思います。

 まず憲法に定められた政教分離規定がある。制度の目的は、信教の自由を保障することにある。しかし現実には、定義が一致していないために、混乱が生じている、という論理の展開です。

 つまり、議論の出発点として憲法があり、社会的混乱はそのあとに存在します。その逆ではありません。最初に社会的混乱があって、そのために政教分離という憲法上の制度が生まれた、という説明ではないのです。「1.5代」天皇論と論理構造が似ています。

 この一節の最後を、百地先生は

「このような混乱を解決するためにも、政教分離とはいったい何なのか、改めて考えてみる必要があると思われる(詳しくは拙著『政教分離とは何か─争点の解明─』)。」

 と締めくくっていますが、私がメルマガでしばしば取り上げてきた、この『政教分離とは何か』についても同様です。

 先生のこの著書は、いみじくもサブタイトルが「争点の解明」とされているように、政教分離制度の成り立ちの背景ではなくて、政教分離をめぐる対立・論争・訴訟問題をテーマにしています。著書の大部分は靖国訴訟、大嘗祭訴訟に割かれています。

 なぜ「国家と宗教の結合を禁止し、信教の自由を保障するための制度」が必要なのか、必要とされるようになったのか、という意味での「政教分離とは何か」の説明は、先生の著書には見当たりません。

 そのため、先生の政教分離論は「争点」の「解明」となり、憲法解釈をめぐる法律論争が主たるテーマとなります。「闘い」の人を自任する先生ならでは、です。激しい調子で拙文を批判するのとも通じるものがあります。

 目の前に現れたモグラを叩きのめす対症療法が、先生の政教分離論のように見えるのです。


以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります


☆ひきつづき「御代替わり諸儀礼を『国の行事』に」キャンペーンへのご協力をお願いいたします。
 このままでは悪しき先例がそのまま踏襲されるでしょう。改善への一歩を踏み出すために、同憂の士を求めます。
 おかげさまで賛同者が300人を超えました。
https://www.change.org/p/%E6%94%BF%E5%BA%9C-%E5%AE%AE%E5%86%85%E5%BA%81-%E5%BE%A1%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E3%82%8F%E3%82%8A%E8%AB%B8%E5%84%80%E7%A4%BC%E3%82%92-%E5%9B%BD%E3%81%AE%E8%A1%8C%E4%BA%8B-%E3%81%AB

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。