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平安期以来の践祚と即位の区別 ──関根正直『即位礼大嘗祭大典講話』を読む 2 [御代替わり]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンからの転載です


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平安期以来の践祚と即位の区別
──関根正直『即位礼大嘗祭大典講話』を読む 2
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 関根は「第1章 総論」の冒頭で、即位礼・大嘗祭の国家的、公的性格について明言し、「皇室の御私事」ではないと断言しています。

「謹んでおもんみるに、御即位礼・大嘗祭の御大典は、天皇御一代にただ一度執り行はせらるる御儀式にして、じつにこれわが邦家の大典、国民の盛儀なり。単に皇室の御私事・宮中の御嘉例なるがごとく思ひ奉るべきにあらず」(漢字を開くなど、読みやすいように、原文を適宜編修しています)

 とすれば、平成の御代替わりで政府が行ったように、諸儀礼を「国の行事」と「皇室行事」に二分するとか、大嘗祭を「国の行事」としては行えないとか、まったくあり得ないことです。

 さらにあり得ないのが、皇室の歴史と伝統の喪失です。


▽1 用語と概念の喪失

 明治42年に定められた登極令の附式は、最初に「践祚の式」をあげ、「賢所の儀」「皇霊殿神殿に奉告の儀」「剣璽渡御の儀」「践祚後朝見の儀」の4儀式について、細かい祭式を規定していました。けれども、日本国憲法下で最初の事例となった平成の御代替わりでは、歴史的な一大変革が行われました。

 宮中三殿の聖域で行われる「賢所の儀」「皇霊殿神殿に奉告の儀」については、憲法の政教分離原則に照らして、「国の儀式」として挙行することが困難とされ、内廷の皇室行事となりました。

 一方、宮中三殿を舞台としない「剣璽渡御の儀」「践祚後朝見の儀」については、前者は「剣璽等承継の儀」と非宗教的に改称され、後者は「践祚」という平安期以来の用語が消え、「即位後朝見の儀」と改められたほか、新帝の出御に際して伴われるべき剣璽御動座がありませんでした。

 なぜそんなことが起きたのか、それは、戦後40年あまり、政府は御代替わりに関して、具体的な準備を怠ってきたからです。日本国憲法施行に伴って全廃された、登極令など関連する皇室令に代わる法体系を整備できずに来たからです。

 戦後の新しい皇室典範は

「第4条 天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」

 などと定めていますが、具体的な法規定はありません。

 そして、政府は、神代にまで連なるとされる皇室の、したがって宗教性を否定できるはずもない伝統儀礼を、「国はいかなる宗教的活動もしてはならない」とする憲法の政教分離原則を基準に、「国の行事」と「皇室行事」とに二分し、あまつさえ、皇室典範に「践祚」の用語がないことから、「践祚」を「即位」に改め、平安期以来の「践祚」と「即位」の概念の区別を失わせたのです。


▽2 正確でない宮内庁の説明

 関根が解説するように、皇位の継承とは皇位の徴表(しるし)である三種の神器の継承にほかなりません。上代においては践祚すなわち即位であり、両者の区別はありませんでしたが、時代がくだり、制度が整うと、先帝の受禅による場合と崩御による場合とにかかわらず、神器が新帝に渡御することをもって践祚と称することとなりました。

 神器のうち神鏡は神殿に安置されて、移動のことはなく、剣璽のみが先帝から新帝に渡御になる践祚の例が定まりました。政治の空白は許されませんから、諒闇中であっても、まずは剣璽の渡御が行われ、その後、皇位の継承を皇祖皇宗に告げ、百官万民に宣布する即位の大礼が定められました。

 桓武天皇の時代に践祚から日を隔てて即位式が挙行され、貞観儀式の制定で践祚と即位の区別が定まったといわれます。

 明治の皇室典範は

「第10条 天皇崩ずるときは皇嗣すなはち践祚し、祖宗の神器を承く」

「第11条 即位の礼および大嘗祭は京都においてこれを行ふ」

 と定め、この歴史的な両者の区別を踏襲していました。

 ところが、戦後の混乱期に行われた皇室典範の改正はこれを反映できず、その後、政府は正常化の努力を怠ったのみならず、平成の御代替わりで「践祚」の用語と概念を完全に喪失させたのです。

 宮内庁の記録は

「もともと践祚は即位と同義語であり、また、皇室典範制定の際、践祚を即位に改めた経緯があるので」(『平成大礼記録』平成6年)

 と説明していますが、まったく正しくありません。それどころではありません、平成の御代替わりでは、践祚の式の一部はあろうことか、皇室典範第24条に定められる「即位の礼」の一環として執り行われたのです。

 政府は憲法を第一に優先するあまり、皇室の歴史と伝統を踏みにじり続けているのです。

 私たち国民が抗議の声を上げなければ、悪しき先例は次の御代替わりでも、その次の御代替わりでも踏襲されることでしょう。



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