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天皇の祭祀を完全無視する河西秀哉准教授の「愛子さま天皇」容認論 [女系継承容認]

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天皇の祭祀を完全無視する河西秀哉准教授の「愛子さま天皇」容認論
《斎藤吉久のブログ 令和2年3月21日》
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愛子内親王殿下が18歳になられたのは昨年12月1日。翌日、文春オンラインに『【”愛子天皇”は是か非か】「強行すれば、愛子さまと悠仁さまの”人気投票”になりかねない」』と題する河西秀哉・名古屋大学大学院准教授(歴史学)のインタビュー記事が載った。〈https://bunshun.jp/articles/-/15522

河西さんといえば、『近代天皇制から象徴天皇制へ』などの著書で知られる新進気鋭の皇室研究者である。どんな皇位継承論を展開しているのか興味を持って読んでみたら、案の定、古来、皇室第一の務めとされてきた祭祀論が欠落していた。これではしょうがない。

以前から何度も指摘してきたように、小泉総理の私的諮問機関・皇室典範有識者会議の報告書(平成17年11月。https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousitu/houkoku/houkoku.html)は、「はじめに」で、さまざま天皇観があるからさまざまな観点で検討した、世論の動向に配慮した、と謳い、他方で、肝心な、天皇=祭り主とする皇室古来の天皇観はまったく考慮しなかった。

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これが混乱した議論の原因であり、その結果が「皇位継承資格を女子や女系の皇族に拡大することが必要」(結び)とする結論であった。皇室伝統の祭り主天皇観は考慮せず、移ろぎやすい国民意識を優先すれば、何が起きるか、容易に分かりそうなものだが、同じ論理構造が皇室の歴史に詳しいはずの河西さんにもうかがえる。残念である。


▽1 明治時代こそ女帝論議が沸騰した

編集部の問題関心はずばり『最大の焦点は「女性天皇」「女系天皇」を認めるか否か』だが、これに対して河西さんは、過去の歴史にない女系継承容認のみならず、長子優先主義への転換を主張している。

『女性天皇に国民の8割が賛成している』というわけだが、ご主張の『最大の理由』は『現実』主義である。

『少子化の流れの中で、女性が何人も子供を産むことが難しい時代に、男子だけで家系を紡いでいくのは非現実的だからです』

しかし、はたしてそうなのか、一般社会の少子化の現実を皇室に当てはめるのは決して論理的ではない。しかも、女帝否認の根拠が『家父長制が社会に色濃く残り、天皇が軍隊の長であった明治時代の名残』と分析し、『戦後までなんとなく続いてきてしまった制度が破綻したのが現在の状況』と解釈するのは正しいとは思えないし、したがって、『現代の社会にあった、より「民主的」な形にすべき』との主張には賛成できない。

明治の時代を家父長制の時代と見るのは個人の自由だが、ほかならぬ明治の時代にこそ女帝論議が沸騰したのではないか。近代を否定して、『民主的』な現代の皇室のあり方を求めるのではなく、126代続いてきた皇室の歴史と伝統を検討しようとしないのはなぜだろうか。

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つぎに河西さんは、『平成』以後の皇室の変化を見定めようとする。キーワードは『近しさ』と『道徳性』である。しかしこれも違う。


▽2 「近しい」「道徳性」への疑問

『昭和天皇まで「権威」というべき存在だったのが、平成の天皇からは国民に寄り添い、触れ合うことが期待されるようになった。先日の即位のパレードでも、観衆が躊躇することなく写真を撮ろうと両陛下にスマホを向けていましたが、いまや皇室と国民は、そんな「近しい」関係になった』

『天皇に「道徳性」が特に求められるようになった。平成の天皇と皇后は、ご高齢にもかかわらず被災地を訪問されるなど、一生懸命に活動しているお姿に高い支持があった。国民の象徴としての内実を変化させて、いまの皇室があるのです。こうした活動がなければ、いまの空前とも言えるような、人々からの尊敬や共感を集める皇室はなかった』

『天皇という存在は「近しく」「道徳性」のあるということが重要なのであって、天皇が必ずしも男性である、男性から血を継いでいなくてはならないという必要はないのではないか』

以前は、明治になって天皇は可視化されたという説がまことしやかに唱えられていたが、否定されている。平安時代、京の人々は御代替わりの御禊を見物していたし、江戸時代には即位礼拝観のチケットが配られていたことが分かっている。むしろ明治になって天皇は遠い存在となり、いまは元に戻ったともいえる。

また、天皇はご公務をなさる社会活動家ではないし、そうあってはならない。先帝は宮内庁が流行らせようとした「平成流」を否定している。

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▽3 なぜ祭り主天皇論を検討しないのか

被災者に寄り添い、犠牲者を悼む『道徳性』は平成以後の特徴ではない。古代から一貫して続く皇室の伝統である。そしてその背後にあるのが天皇の祭祀である。

河西さんの女帝論には、少なくともこのインタビューでは、祭祀論が抜けている。だから安易に男系主義を否定することになるのではないか。

順徳天皇「禁秘抄」の冒頭に「およそ禁中の作法は神事を先にし、他事を後にす」とあるように、歴代天皇は公正かつ無私なる祭祀を行うことを第一の務めとされた。だからこそ、王朝の変更をもたらす女系継承の容認はあり得ないのである。

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河西さんはこのあと、長子継承の方がスムーズだとか、旧宮家の復帰は道徳性に疑問があるとか、過去の女性天皇は「中継ぎ」ではなく「人物本位」で選ばれたという議論を展開している。

皇室には皇位継承に関する皇室のルールがある。皇位はあくまで血統原理に基づくのであり、有徳者や有能者が継承するわけではない。なぜ河西さんは皇室に固有の天皇論について検討しないのだろう。宮中祭祀廃止論を唱えたのは原武史さんだが、河西さんの天皇論には最初から祭祀の存在がない。

河西さんがお勧めの「ざっくばらんな議論」はまだしも、非歴史的、非学問的議論はいかがなものか。

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